フェルナンド・アロンソがル・マンへの出場を希望していたが、ホンダが拒否したという記事が外誌に載っていた。

 レーシングドライバーにとってF1参戦は夢に違いない。F1という目標があるからレーシングドライバーを希望する者がいる。そこへ至る道は険しいことは知りながら、夢を追いかける。そして、アロンソのように夢を果たし、チャンピオンに輝き、更なる高みへと自らを駆り立てることのできる者は、本当に僅かな数でしかない。その頂に達した者が次の夢を追いかける。アロンソの場合、もちろんF1での更なる挑戦は続くが、F1という枠を越えた新領域への挑戦に興味を持ったのは当然といえば当然だろう。人間は飽くことを知らない。

 アロンソの場合、F1では今年は久しぶりに新鮮な挑戦になる。フェラーリ時代にやり残した仕事を新しい環境で始めるチャンスだ。そのことが彼のプライオリティであることは疑う余地がない。しかし、彼は同時に次元の違った新しい挑戦を求めていた。それがル・マンだった。

 実は昨年のル・マンで、アロンソはレースが始まる合図であるスターティングフラッグを振った。その時、ル・マンの魅力に魅せられ、耐久レースに興味を持ったのではないか。ここで走ってみたい、と思ったとしても不思議ではない。F1を引退してル・マンへ参戦するマーク・ウエーバーから聞かされたスポーツカーレースの魅力も心に突き刺さったのだろうか。

 アロンソのル・マンへの憧憬が現実味を帯びたのは、ポルシェがル・マン参戦を3台のクルマで行うことを決め、アロンソを含めた現役F1ドライバーに声をかけたことによる。アロンソ以外ではフォース・インディアのニコ・ヒュルケンベルクが候補に挙がり、彼はポルシェの誘いを受けてル・マン出場を決めている。アロンソの話が決まっていれば、ヒュルケンベルクと組むはずだった。

 ホンダにはアロンソにル・マンに出てもらいたくない理由があったのだろうか? そのことをホンダに問いただしたら、ホンダとしては「アロンソのル・マン挑戦を拒否したことなどない」という返事が返って来た。なぜ外誌にそのような記事が掲載されたのか理由も分からないという。

 しかし、F1復帰1年目の彼らが慎重になっていることは十分想像がつく。外誌にはアロンソのル・マン参戦を拒否したのがマクラーレンではなくホンダだと書かれていた。チーム単位で活動するF1で、チームの意向が書かれていなかった点には私も疑問を持った。いずれにせよ、今年のル・マンでアロンソの走りを見ることが出来ないのは残念至極だ。

 かつてはF1ドライバーはもっと自由に見えた。多くのF1ドライバーがスポーツカーレースやF1よりも格下のF2レースに参加していた。異業種交流ではないが、その効果は大きく、モータースポーツがより大衆に受けていた理由のひとつでもあるだろう。ポルシェはそのことをよく知っており、かつて彼らが満喫したスポーツカーレースの雰囲気をもう一度現代のモータースポーツの世界に甦らせたかったのかもしれない。叶っていればと思う。

赤井邦彦(あかいくにひこ):世界中を縦横無尽に飛び回り、F1やWECを中心に取材するジャーナリスト。F1関連を中心に、自動車業界や航空業界などに関する著書多数。Twitter(@akaikunihiko)やFacebookを活用した、歯に衣着せぬ(本人曰く「歯に衣着せる」)物言いにも注目。2013年3月より本連載『エフワン見聞録』を開始。月2回の更新予定である。

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