モナコGP最終ラップ、メルセデスGPのミハエル・シューマッハーはチームの指示で前を行くフェルナンド・アロンソをオーバーテイクし、ペナルティを受けた。しかしフェラーリとマクラーレンは、事前にそれぞれのドライバーたちに、オーバーテイクはレギュレーション違反であり、絶対にしないように指示していた。
セーフティカーが最終ラップの最後にピットレーンに戻った後、フィニッシュラインまでの間にシューマッハーはアロンソを抜き、6位でチェッカーを受けた。しかしこの行為はレギュレーション違反であり、シューマッハーにはレースタイムに20秒加算のペナルティが科され、12位に降格される結果となった。
この裁定について、FIAは以下のような声明を発表している。
「スチュワードはレースディレクターから、最終ラップの最後にセーフティカーがピットレーンに入った際、カーナンバー3(ミハエル・シューマッハー)がカーナンバー8(フェルナンド・アロンソ)をオーバーテイクしたという報告を受けた」
「このオーバーテイクは2010年F1スポーティングレギュレーション第40.13条に違反しており、スチュワードはドライブスルーペナルティを科すことを決めた。しかしながらこの一件が発生したのは最後の5周の間だったため、カーナンバー3のレースタイムに20秒を加算することとする」
メルセデスGPのチームプリンシパル、ロス・ブラウンはこれを不服として上訴すると述べた。彼は自身の考えをこう説明している。
「ミハエルに科せられたペナルティについてだが、我々はコースは“グリーン”になり、第40.13条が適用され、レースはセーフティカーの下で終えられるのではないと確信した」
「セーフティカーの原因は取り除かれ、FIAは78周に入ってから“セーフティカーはこの周に(ピットレーンに)入る”と発表し、コースはクリアになったとレースコントロールが宣言した。さらにこのことは、セーフティカーライン1の後、マーシャルがグリーンフラッグを振り、ライトがついていたことからも裏付けられた。以前の例を見ると、セーフティカーの下でレースを終えなければならなくなったときには、フルコースイエローが出されたままにされていた。2009年メルボルンでもそうだった」
「そのため、最終ラップで我々はドライバーたちにラインまでレースをしなければならないとアドバイスし、ミハエルは6位のフェルナンドに仕掛けた」
しかしそのブラウンが挙げる第40.13条には以下のように記されている。
「セーフティカー配置の状態でレースが終了する場合、最終ラップの終盤にセーフティカーはピットレーンに入り、各マシンはオーバーテイクすることなく規定どおりにチェッカーフラッグを受けるものとする」
フラッグについては第40.11条に以下のような規定が記されている。
「セーフティカーがピットエントリーに近づいてきた際に、イエローフラッグとSCボードは下げ、代わりにグリーンフラッグを振り、ラインにおいてグリーンライトをつける。これらはラインを最後のマシンが通過するまで提示される」
英autosport.comによると、アロンソは、セーフティカーがピットに戻る前に、チームに対してオーバーテイクが可能かどうかを何度も確かめ、前を走るルイス・ハミルトンを抜きに行ってもいいのかどうか尋ねたが、チームからオーバーテイクはレギュレーション上禁止されていると説明を受けたと述べている。
そのハミルトンも、チームから前のフェリペ・マッサを抜かないように指示されていた。ハミルトンは、シューマッハーがアロンソを抜いたのを見て、驚いてチームに確認している。マクラーレンの無線記録には以下のように記されている。
「マクラーレン:ルイス、レースの最終ラップだが、セーフティカー配置の状態でフィニッシュすることになる。オーバーテイクはするな。
ハミルトン:セーフティカーが戻った後に抜いちゃだめだって言ったよね? ミハエルはフェルナンドを抜いちゃったよ」
シューマッハーに対する20秒加算のペナルティは厳しすぎるとの見方もあるが、第16.3条において、スチュワードがドライバーに科すことができるペナルティには、a) ドライブスルーペナルティ、b) 10秒ペナルティ(ピットで10秒停止)、c) 次戦のグリッド降格の3種類があり、レース終盤5周で起きた問題がa)あるいは b) に相当する場合、それぞれレースタイムに20秒加算あるいは30秒加算のペナルティを適用すると規定されている。そのためデイモン・ヒルを含む4人のスチュワードたちは、シューマッハーの行為がレギュレーション違反であることがはっきりした以上、20秒加算のペナルティを科すという決定を下すほかはなかった。