IZODインディカー・シリーズ第14戦はボルチモア・ストリートコースで75周の決勝レースが行われ、ライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)が優勝。タイトル争いでウィル・パワー(ペンスキー)との差を ポイントに詰め、タイトル争いは最終戦に持ち越されることとなった。
ポールポジションからスタートしたパワーは、前戦ソノマでフルコースコーション発生のタイミングの悪さで勝利を失ったが、ボルチモアでは不安定な天候と、それに対応したチームの作戦が外れたことで勝機を失った。スタートからの18周を悠々とリードしたパワーだったが、ウエットタイヤ装着を決断したことで中団グループへと飲み込まれ、なかなかポジションを上げられない状況が続いた。そして最後は、頻発したフルコースコーションによってゴール前のピットストップが不要になるドライバーが出現、全力を振り絞ったハードドライビングを見せ続けても6位フィニッシュがやっとだった。
そんなパワーを尻目に、勝利を飾ったのはハンター-レイだった。ここ2戦続けて不運に苛まれて来たが、ボルチモアでも予選でアタックを行う前に赤旗が出され走行終了という不運に見舞われた。もう勝利の女神はハンター-レイを見放したか……とも考えられた不運ぶりだったが、タイトルを争うチャンスを奪われてはいなかった。ボルチモアではエンジン交換でのペナルティを受けるドライバーがハンター-レイより前の予選順位に3人もいたため、10番グリッドからスタートすることができた。そして、ポイントリーダーのパワーとは逆に天候を味方につけ、トップに躍り出たのだ。
今季4勝目、キャリア9勝目へとハンター-レイが逃げ切れたのは、ピットで陣頭指揮を執るチームオーナー、マイケル・アンドレッティの判断も大きく貢献した。「パワーと同じ作戦を選び続けていては、レースでの勝利、さらにはチャンピオンシップ獲得も成し遂げられない」。そう考えたマイケルは、敢えてリスクを冒す作戦を選んだのだ。ハンター-レイにウエットコンディションでもレッドタイヤで走り続けるよう命じ、その作戦が見事に当たった。不安定なコンディションでミス無くハイペースでマシンを走らせ続けたのは、もちろんハンター-レイだ。
これでハンター-レイは、今季の15戦終了時点までの最多勝利ドライバーに。ポイントリーダーのパワーは、開幕から4戦で挙げた3勝で勝利数はストップしたままだ。パワーが最終戦のフォンタナで優勝しない限り、今年の最多勝利はハンター-レイということにある。
「すごい! 今日のレースで勝てるなんて!!」とレース後のハンター-レイは興奮した様子で語った。
「今日勝たなければチャンピオンシップのチャンスはなくなると考えていた。そういうレースで勝てたのは大きい。チームの作戦が素晴らしかったことで、クルーやエンジニアたちのハードワークが実った。このままタイトル獲得へと突き進みたい」
ボルチモアのレースの大勢を決めたのは、レース序盤に降った雨だった。ウエットタイヤへとスイッチしたドライバーたちは、そのほとんどが上位フィニッシュのチャンスを失った。ただ、その中から何人かは作戦の巧みさで不利を跳ね返した。ライアン・ブリスコ(ペンスキー)はそのうちのひとり。41周目にピットストップを行ったブリスコは、終盤にイエローが多発したことに助けられ、ゴールまで30周以上を給油なしで走り切り、2位フィニッシュを果たした。
ただ、レース後のブリスコは「ハンター-レイはリスタートで一度も隊列を整えようとしていなかった」とライバルを非難。「隊列が整わないのにグリーンは振られた。あれは少々アンフェアだったのでは?」とオフィシャルも批判したが、これに対してハンター-レイは、「彼の言い分も分かるよ。レースリーダーとして、隣に2番手のドライバーが並ぶようタイミングを計っていたはずなんだ。でも、僕は隊列を無視して加速したわけじゃない。実際、彼の横に並ぶようアクセルを一度戻していたんだ。ただ、今日のスターターは、何度かのリスタートで常にグリーンを振り下ろすタイミングが早目だったので、ブリスコと並ぶよう注意しながらも、僕の目はスターターの持つ旗だけに集中していた。そして、グリーンを見るやいなやアクセルを踏んだんだ。グリーンが振り下ろされたら加速してOKなのがルールだからね」と語った。
ブリスコと同じレインタイヤへのスイッチ組から、ペジナウも3位で表彰台に到達。最後のピットストップをハンター-レイより2周早いタイミングで行なったが、ハンター-レイはその2周でポジションを逆転。そのままトップを保ち続けてゴールした。
5位に入ったのは、ルーベンス・バリチェロ(KVレーシング)で、パワーはその後方6位止まりに。今季10回目のトップ10フィニッシュだったが、ハンター-レイに対するポイントリードは17点へと減った。
「まだポイントリードは保っている。今日はこういうレースになる可能性が十分あるとわかっていた。勝てなかったのは本当に悔しいが、タイトルを獲得するというのは、絶対に簡単なことなんかじゃないということだ。自分たちのベストを尽くし、とにかく最後までガムシャラに戦い抜くだけだ」とパワー。
佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン)のレースはアップダウンの大きなものとなった。アタック前に赤旗が出された不運と、エンジン交換のペナルティにより24番手スタートを余儀なくされた琢磨だったが、レース序盤の雨を巧みに利用する作戦でトップ5へと一気に進出。そこからのリスタートでトップに躍り出ると、濡れた路面をソフトコンパウンドのレッドタイヤ装着で走り、2位以下に8秒の差を突きつける独走を見せたのだ。
そこからは燃費セーブをはじめ、一度引き離したグラハム・レイホール(チップ・ガナッシ)の接近を許したが、オーバーテイクはさせず、琢磨より前にレイホールが給油のためのピットストップを行った。
フルコースコーションが多発する中、琢磨は2回目のピットストップをリスタート直前に行って燃料を補充、3回のピットでゴールまで走り切れる状況を手に入れた。トップグループにポジションを維持したままレース終盤を迎えることができたのだ。しかし、今朝のウォームアップで出た燃圧トラブルがレース半ば過ぎに発生。51周目にパワーが完全に失われ、ピットでマシンを降りることとなった。
「天気を大きな味方につけました。とても不思議な天気で、メインストレートはかなりウェットでしたが、バックストレートはドライでした。多くのチームがウエットタイヤ装着のためにピットに向かい、僕らはスリックで走り続ける作戦でトップグループまで一気に順位を上げる事に成功したんです」と琢磨。
「リスタートでは何台ものマシンをパスし、レースをリードすることもできました。しかし、その後にトラブルが発生してしまったんです。今日、良いリザルトを獲得できなかったのは本当に残念です」と琢磨は悔しがっていた。
