テキサス州ヒューストンのリライアント・パークに特設されたコースを使用してダブルヘッダーで開催されているIZODインディカー・シリーズ。6日に行われた第18戦決勝は、ウィル・パワー(チーム・ペンスキー)がスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ)を抑え今季2勝目を飾った。2位に入ったディクソンはランキングトップに立っている。

 ダブルヘッダーの2日目を迎えたヒューストンの日曜日は朝から曇り空に覆われていた。そして、予選開始直前に強い雨が降り、今週末2レース目のスターティンググリッドを決定する予選はキャンセルされた。

 スターティンググリッド決定にはエントラントポイントが採用されたが、それは昨日の第17戦終了時点のものではなく、第16戦ボルティモア終了時点のものとなった。インディカーのルールが、ダブルヘッダーは公式戦2レースでありながら同一イベントと捉え、このような事態ではイベントに入る前の順位を採用すると定めているからだ。不可解なルールとも思えるが、インディカーではよくあることだ。

 かくしてポールポジションはエリオ・カストロネベス(チーム・ペンスキー)のものになった。第17戦終了時点でのエントラントポイントであったら、ポールはディクソンのものとなっていたが、どこまでもシリーズ主催者はディクソン及びチップ・ガナッシ・レーシングのタイトル獲得を応援したくないようだ。

 そもそもドライバーズポイントでトップのカストロネベスがエントラントポイントでは2番手に落ちていることが不自然なのだが、それは彼らがテキサスでの決勝で車両違反を犯し、15点のポイント剥奪を受けたためだ。インディカーによる「エントラントだけポイント剥奪。優勝という結果もそのまま」という当時の裁定は、いま改めて考えても不可解だ。

 ポールスタートを行うドライバーとして記者会見に時間を費やし、ベライゾンがスポンサーのポール賞の記念撮影まで行ったディクソンだったが、ルールブックに従って彼のグリッドは2番手とされたのだった。

 正午になってレース前のセレモニーが始まる頃、ヒューストンは一転、青空になっていた。気温は18℃という低さだったが、レースが進む中で徐々に気温は上昇して行った。昨日の33℃という最高気温と比べると、23℃までしか上がらなかった。

 ほぼ全面ドライコンディションで第18戦のレースはスタートが切られた。

 予選22番手、決勝はトラブルで18位という昨日の成績からは考えられない、極めて幸運なスタート位置からダッシュしたカストロネベスはトップを守り、ランキング2位のディクソンが彼をすぐ後ろから追った。

 悪天候とルールを味方につけたカストロネベスだったが、僅か10周でストップする憂き目に遭った。その数周前から激しいオイル漏れが後続によって指摘されていたが、それは3号車のギヤボックス・ハウジングが破損していたためだった。バンピーなヒューストンのコースでマシンを激しくボトミングさせ続けたことにより、強靭なギヤボックスにクラックが入ったのだ。

 カストロネベスは、この時点でのリタイアとなれば最下位で6点しか稼げないところだった。しかし、オフィシャルによってピットに戻されたマシンは、ガレージに移動されてエンジンの後方を全面的に交換する大作業を施された。そしてカストロネベスは22周遅れでレースに復帰。第16戦ボルティモアでストップしたディクソンのマシンは、オフィシャルによってピットに運んでもらえなかったが……。

 トップ争いはディクソンのリードが続いていたが、9番手スタートのパワーが僅か10周で2番手まで上がり、ディクソンへのアタックを開始した。ディクソンはトップを守り続けていたが、40周目に切られたリスタートの後、ターン3でついにパワーがトップにのし上がった。

 ディクソンはすぐさま反撃に出たが、最後まで決定的なチャンスを作り出すことはできなかった。ランキングトップに立った彼とすれば大きなリスクは避けねばならず、パワーにプレッシャーをかけ続け、容易にパスが可能なほどのミスを冒すことを期待する戦い方に切り替えたのだ。そして、パワーは最後まで大きなミスは冒さなかった。

 今シーズンのフラストレーションを爆発させる走りによって、パワーはシーズン2勝目へと逃げ切った。それはチームメイトのタイトル争いに対する大きなアシストにもなった。ディクソンが優勝していたらエリオは38点まで差を広げられるところだったが、パワーが勝ったことでディクソンは2位になり、エリオとの差は25点となったのだ。エリオはクルーたちがマシンを修理してレースに復帰したことで、24位フィニッシュではなく23位となって1点多く稼ぐことにも成功した。

 優勝争いから少し離れた3位でゴールしたのは、8番手スタートだったジェイムズ・ヒンチクリフ(アンドレッティ・オートスポート)。第10戦アイオワでの優勝以来となる久しぶりの表彰台フィニッシュだ。「僕より前のポジションから脱落したドライバーもいたけれど、今日の僕らは本当にいいレースを戦っていたと思う」とヒンチは話していた。

 4位はジャスティン・ウィルソン(デイル・コイン)。昨日の3位フィニッシュに続く好成績で彼のポイントスタンディングは6番手から4番手にジャンプアップした。5位はセバスチャン・ブルデー(ドラゴン・レーシング)、6位はサイモン・ペジナウ(シュミット・ハミルトン)。昨日2位フィニッシュしたシモーナ・デ・シルベストロ(KVレーシング)は10位でゴールした。
 
 佐藤琢磨(AJフォイト)は、15番手スタートのはずがエンジンストールで23番手スタートに。同じくエンジンストールしたダリオ・フランキッティ(チップ・ガナッシ)が最後尾の24番手スタートとなった。

 最後尾近くまで下がりながら、琢磨は1回目のピットストップを行うまでに11番手にまでポジションを上げていた。その後も着々と順位を上げ、2回目のピットストップを行うと7番手に。しかし、最終ラップにタイヤかすを拾い、オリオール・セルビア(パンサー・レーシング)、チャーリー・キンボール(チップ・ガナッシ)、さらにはマイク・コンウェイ(デイル・コイン)にパスを許した。

 そしてターン5でリヤが大きく滑ったところへ、すぐ後ろに迫っていたフランキッティが接触。琢磨をスピンに陥れ、自らは浮き上がってキャッチフェンスにクラッシュした。さらには、コース上にストップしていた琢磨のマシンにEJ.ビソ(アンドレッティ・オートスポート)が突っ込んで来た。

 フランキッティは脳しんとう、脊柱骨折、右足首骨折という負傷を負った。琢磨とビソには骨折などの怪我はなかった。

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