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投稿日: 2010.10.04 00:00
更新日: 2018.02.23 11:50

フランキッティが逆転で3度目の王座に輝く/ホンダ


ダリオ・フランキッティが逆転で3度目のシリーズチャンピオンに輝く
スコット・ディクソンが優勝、佐藤琢磨は18位、武藤英紀は20位でフィニッシュ

IZODインディカー・シリーズは、2010年もチャンピオン争いが最終戦までもつれ込んだ。今年のタイトル候補は2人。ポイントリーダーのウィル・パワー(Team Penske)と、ポイント2位のダリオ・フランキッティ(Chip Ganassi Racing)だった。

金曜日の予選でフランキッティがポールポジションを獲得したことから、2人のポイント差は11点へと縮まった。決勝レースでフランキッティが最多リードラップを獲得し、ボーナスポイントをさらに2点加えて優勝した場合、パワーは2位でゴールしてもフランキッティに逆転され、1点差でポイントランキング2位に落ちることになるのだ。
パワーには2人、フランキッティには1人のチームメートがいる。最終戦までもつれ込んだタイトル争いは、彼らのフィニッシュポジションも大きく関わってくる可能性が高まり、2チームによる総力戦の様相となった。

快晴の下、過ごしやすいコンディションでスタートが切られたレースは、フランキッティのリードで始まった。レース序盤は彼のチームメートのスコット・ディクソンが2番グリッドスタートから背後を守っていた。ところが、予選8位だったトニー・カナーン(Andretti Autosport)、予選4位だったライアン・ブリスコー(Team Penske)がディクソンをパスし、フランキッティからトップの座を奪い取ろうと迫った。
2人のライバルが激しくアタックを仕掛けたが、フランキッティのマシンは絶好調で、チームメートの援護を失ってもトップを守り続けた。彼らによる休みない攻撃を完全に封じ込めたフランキッティは、118周目にこのレースでの最多リードラップ獲得を決定し、ボーナス2点を追加した。

これでパワーは一気に不利へと陥った。タイトルを獲得するためには、フランキッティをパスして自らが彼より上位でフィニッシュするか、チームメートたちがフランキッティより上位へと進出しなければならなくなったのだ。

そのプレッシャーからか、パワーは135周目のターン4で壁にマシン右側をヒットさせてしまった。彼はアウトへと膨らむマシンをギリギリのところでコントロールし、ダメージを最小限に食い止めたかに見えた。しかし、ピットに戻るとリアサスペンションのアームが曲がっていることが判明し、その修理で5周以上をロス。順位も大きく下がった。
それでもTeam Penskeのクルーたちが驚くべき速さで作業を完成させ、パワーはフルコースコーション中にレースに復帰することに成功した。この時点で、まだフランキッティの逆転タイトルは決まっていなかった。

レースのリスタートが切られる前、パワーはマシンに異常を感じて再びピットイン。ここでフロントサスペンションにもダメージが発見されたことから、彼の最終戦は25位でのリタイアという残念な結果となった。

パワーのリタイアでフランキッティは逆転タイトルへと大きく近づいた。しかし、この後にフルコースコーションが連続して出され、チームごとにピットインするタイミングにズレが生じ、どのチームの採った作戦がベストとなるかはわからない展開となった。フランキッティ陣営は、燃料不足によるリタイアは確実に避ける慎重な作戦を採用。その結果、激しく順位を争っている中団グループを走らざるを得なくなった。
一方でChip Ganassi Racingはディクソンにギャンブル的な作戦を採らせた。そして、これが見事に的中した。ディクソンは174周目にトップに立つと、燃費をセーブしながらスピードを保ち、今シーズン3勝目へと逃げきった。

すさまじい2位争いを制し、ディクソンの後ろでゴールしたのはダニカ・パトリック(Andretti Autosport)で、3位はカナーン。Team Penskeはブリスコーが4位、エリオ・カストロネベスが5位と、最終戦は完敗に終わった。

フランキッティは慎重にゴールを目差し、8位でチェッカーフラッグを受けた。これでインディカー・タイトルを獲得するのは3度目。さらに、最終戦での逆転タイトル獲得は2009年に続いて2年連続となる。同時に、Chip Ganassi Racingはインディカー・シリーズタイトルの3連覇を達成した。
佐藤琢磨(KV Racing Technology)は、9番グリッドからナイトレースをスタートしたが、マシンセッティングが完ぺきではなく、レース序盤に20番手まで大きく後退。ピットストップでマシンセッティングを改善しながらバトルを続け、最後のピットストップを終えた後には13位までばん回した。しかし、激しいバトルを繰り広げた他車のラフなドライビングによる接触などのトラブルが重なり、18位でのゴールとなった。

武藤英紀(Newman/Haas Racing)は26番手からスタート。トップグループとピットタイミングを変えてポジションを上げたシーンもあったが、その作戦は成功せず。それでも、レースが進む中でハンドリングを向上させ、20位でフィニッシュした。

コメント
ダリオ・フランキッティ(8位、2010年シリーズ・チャンピオン)
「すばらしい一日になった。パワーがアクシデントを起こしたが、自分自身がやるべきことに集中して走り続けた。フィニッシュしなければタイトルを獲得できないからだ。目の前で1台がスピンし、壁にヒットする音を真横に聞いた。パワーは全開で私を追いかけていたからアクシデントを避けきれなかった。私は全速力で走らずにレースが安定するのを待っていたタイミングだったから、あのアクシデントに巻き込まれずに済んだのだと思う。もちろん、私にもプレッシャーはかかっていた。『チャンピオンになりたい』『チームのみんなのために勝ちたい』、そうした考えは自分自身にプレッシャーをかけるものなのだ。しかし、我々はプレッシャーに打ち勝ってゴールまで走り続けることができた。3度目のタイトル獲得は本当にうれしい。今年はインディ500での2勝目を挙げることもできた。このような成功を手にできるのは、Chip Ganassi Racingというすばらしいチームの一員として走っているからである」

スコット・ディクソン(優勝、ランキング3位)
「今晩のレースではフランキッティが本当に速かった。最初のスティントで自分はハンドリングがオーバーステア気味で、カナーンがとても攻撃的に走っていたので、アクシデントに巻き込まれないよう少し距離を置いて走るようにした。ピットストップでセッティングを調整し、ハンドリングのオーバーステアを消すことに成功。その先のレースはフルコースコーションが連続して出され、燃費がカギを握ることとなった。レース終盤のリスタートはかなり荒っぽいものになっていたが、我々は優勝へ逃げきることができた。そして何よりうれしいのは、チームメートのフランキッティが3度目のタイトルを獲得できたことだ。我々はチームとしてシーズンの最後を飾った。今シーズンは苦しい戦いが続いていたが、最終的に最高の結果を手に入れることができた」

ダニカ・パトリック(2位、ランキング10位)
「ゴールラインを横切った時、優勝はできなかったけれど、勝ったのと同じくらい充実した気分だった。シーズンの終え方としてはベストだったと思う。今年はいい時も悪い時もあったけれど、最終戦で私たちのチームは持てる力を出しきってすばらしい結果につなげてくれた。来年はマシンをさらに向上させて、今年以上の戦いができることを楽しみにしている。今日のレース終盤は本当に激しい戦いで、カナーンとのバトルはファンを喜ばせるものになったと思う」

トニー・カナーン(3位、ランキング6位)
「最後にダニカにパスされた。私はあの時、彼女がインサイドへと飛び込んでくるのが見えていなかった。見事なパスだった。サーキットに集まってくれたファンにエキサイティングなレースを見せることが、今晩、我々に課せられた使命だった。それを成し遂げられたのは、チームのクルーたちのおかげだと思う。我々のマシンは本当にすばらしく、レースで激しく競い合うことも難しくはなかった。最終戦の週末はすばらしいものになった。来シーズンが今から楽しみだ」

ウィル・パワー(25位、ランキング2位)
「非常に残念だ。私は今年のタイトルをぜひとも獲得したかった。フランキッティが最多リードラップを記録する速さを見せ続けていたので、私は思いきりプッシュして走り続ける必要があった。ライアン・ハンターレイ(Andretti Autosport)をパスしようと走っていた時、ほんの少しだがラインが高くなり、壁にホイールを擦った。その結果、サスペンションが曲がってしまった。チームはすばらしいシーズンを送ってきた。そのことは大いに誇りと感じるべきだろう。レーシングドライバーとしてベストのシーズンだった。本当に多くのことを学ぶことができたと感じている。来年こそはタイトルを獲得したい」

佐藤琢磨(18位、ランキング21位)
「本当に厳しいレースでした。レース序盤はマシンバランスに苦労しましたが、最初のピットストップでセッティングを変更し、そこからマシンはよくなりました。ただ、今日はスピードが不十分でした。少しセッティングで慎重になり過ぎていたと思います。2台、3台が並んでの激しいバトルが続く、エキサイティングなレースになっていました。残念なのは、レースの終盤に何度かの接触があったことでした。最後はターン3で2台に挟み撃ちにされるようなカタチとなって、アクシデントを避けたためにいくつかポジションを落としてしまいました。今晩はピットストップもミスはありませんでした。シーズンを通してハードワークを続けてくれたクルーたちに感謝します。もっといい結果を残したかったシーズンでしたが、本当に多くのことを学び、吸収できた一年でした」

武藤英紀(20位、ランキング18位)
「昨日のプラクティスの後にマシンセッティングを大幅に変更しました。それはいい方向に出ていたと思います。今日の自分たちのマシンはリスタートなどでのハンドリングが悪く、集団の中でも安定していませんでしたが、レースが落ち着いてクリーンエアの当たる状態ではスピードを上げ、そこから何台かをパスしていくという戦いになっていました。全体的に見て、レースが進むにつれてマシンの状態はよくなっていったと思います。やっとマシンの調子が上がってきたところで最終戦を迎えたのは残念ですが、難しいマシンを走らせ続けたことでドライビングスキルも磨かれたし、マシンセッティングについては昨年まで以上に深く考え、多くを学べた一年でした」

決勝後インタビュー動画 >
ロジャー・グリフィス|HPD テクニカル・ディレクター
「パワーがアクシデントを起こしたのは残念だった。最後の最後までフランキッティとのチャンピオンの座をかけたバトルが繰り広げられることをみんなが期待していた。しかし、パワーがリタイアした後もチャンピオン争いは緊迫したままだった。フランキッティは度重なるフルコースコーションで中団グループに飲み込まれたためだ。フランキッティにトラブルが襲いかかる、あるいは彼がリタイアに追い込まれてパワーがタイトルを獲得する可能性もあった。レースの半ば過ぎからフルコースコーションが重なり、燃費が重要な要因となった。ディクソンはチームの的確な作戦と、見事な走りによって優勝を飾った。そして、フランキッティはゴールまで走りきり、3度目のタイトルを手に入れた。

Andretti Autosportのチームメート同士による2位争いもすさまじかった。最後はパトリックが見事なパスを見せ、カナーンは3位でのゴールとなった。今年もチャンピオン争いは最終戦まで激しく戦われた。すばらしいシーズンだった。Hondaはエンジントラブルを一切出すことなく全17レースを終えることができた。トラブルフリーのインディ500を5年連続で達成することもできた。これらは非常にうれしい結果であり、誇らしい成果でもある。しかし、我々は今シーズンの収穫で満足することなく、エンジンの信頼性、耐久性を更に向上させるべく全力を投入し、安全に関するシステムの開発も続けていく。燃料補給が完全に終わらないとピットから発進できないシステムは、来シーズンには導入することができるだろう」


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