復活したマクラーレン・ホンダの活躍を甘口&辛口のふたつの視点からそれぞれ評価する連載コラム。レースごとに、週末のマクラーレン・ホンダのコース内外の活躍を批評します。今回は厳しい評価にさらされた第12戦イタリアGPを、ふたつの視点でジャッジ。
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甘口編
弱点のデプロイメント改善に着手
ICEはパフォーマンスアップ&ノートラブル
イタリアGPでのホンダは苦しい戦いが強いられた。全開率が70%を超えるモンツァでは、エンジン本体での駆動力とともに、2つの回生エネルギーであるMGU-KやMGU-Hで作られたパワーをどれくらい使用できるかが重要となる。ホンダの現在のパワーユニットシステムは、その回生エネルギーを十分な時間、使用できない状態となっている。回生エネルギーは使用する場合の上限が120kW(160馬力)となっているから、このパワーが走行中に足りなくなると、大きなスピードロスになることは火を見るより明らかだ。
モンツァでフェルナンド・アロンソとジェンソン・バトンがともに、「コーナーでコンマ3秒しか遅くないのに、ストレートで3秒遅い」と語ったことからも、モンツァの4本のストレートで回生エネルギーが十分に使用できていないことがうかがえる。ブレーキを利用した運動回生エネルギーであるMGU-Kは問題なく機能させることができているというから、弱点がMGU-Hにあることはほぼ間違いない。
MGU-Kによる回生で蓄電できるエネルギー量は1周あたり2MJ(メガジュール/電力量の単位)で、エナジーストア(バッテリー)に蓄えられたエネルギーを放出できる量は、1周あたり4MJと定められている。その作動時間は最大出力だった場合、約33秒間となっている。
これに対してMGU-Hは、エネルギー回生と放出に関してその量は無制限。エナジーストアだけでなくMGU-Kへも直接、エネルギーを供給できるため、この作動時間の違いが大きな差となるケースが少なくない。しかし、現在のF1はシーズン中のパワーユニットの改良は決められた数のトークン分しか行うことができない。昨年この部分で苦しんだフェラーリがシーズン終了までパフォーマンスを上げられなかったのも、それが理由だった。
イタリアGPの会見で新井康久総責任者が「弱点がデプロイメント(回生エネルギーの供給)にあることはわかっている。来年に向けてそこを変えたいと思っている」と語っていることからもわかるように、今シーズンいっぱいはエネルギーのデプロイメントに関しては、苦戦が続くことは免れない。
だが、3戦前のハンガリーGPでは、この弱点がこれほどまでにクローズアップはされなかった。それはハンガロリンクが全開率が低く、デプロイメントに悩まされることがなかったからである。逆にベルギーGPが行われたスパ-フランコルシャンとイタリアGPの舞台だったモンツァは、全開率が19戦中もっとも高いグランプリだった。つまり、ホンダの弱点はどのサーキットでも起きる問題ではなく、サーキットによっては隠されることもある。そして、次の第13戦シンガポールGPはデプロイメントの問題が出にくいサーキットである。
ベルギーGPとイタリアGPで惨敗に終わったホンダにとって、この高速2連戦で収穫もあった。それはトークンを使用して改良したICEが、ベンチでテストしたとおりの数値のパフォーマンスアップを見せていることがサーキットで確認できていること。そして、トラブルが起きなかったことだ。ホンダはベルギーGPとイタリアGPでそれぞれ新しいICEを複数使用し、ほとんどマイレージを走っていない最新型ICEのストックが2基ずつある。このひとつがシンガポールGPで使用され、もう1基がホンダにとって7年ぶりの母国グランプリとなる日本GPへ投入されることは間違いない。
厳しい戦いが続いているホンダだが、シーズンをあきらめているものはいない。
ホンダ辛口評価編:マクラーレン、大変更を要求
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