復活したマクラーレン・ホンダの活躍を甘口&辛口のふたつの視点からそれぞれ評価する連載コラム。レースごとに、週末のマクラーレン・ホンダのコース内外の活躍を批評します。今回はパワーユニットに多くのトラブルが発生した第17戦メキシコGPを、ふたつの視点でジャッジ。
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甘口編
レッドブルからの打診の意味
23年ぶりに復活したメキシコGPが開催されていたアウトドローモ・エルマノス・ロドリゲスのパドックで、ホットな話題となっていたのが、ホンダの2チーム目供給についてだった。金曜日のFIA公式記者会見で質問を受けた新井康久総責任者は、「話し合いは継続中」と、マクラーレン以外のチームから接触があったことを認めた。その相手がレッドブルであることは、公然の秘密である。
レッドブルが現在使用しているパワーユニットは、ルノーである。レッドブルとルノーの関係は2007年に始まり、2010年から4年間、ドライバーズタイトルとコンストラクターズタイトルを独占し続けた。しかし、レギュレーションが大きく変更され、エンジンがパワーユニットと呼ばれるようになった2014年にその関係に亀裂が入り始め、今シーズンはついに修復不能な状態まで悪化した。
その後、レッドブルはメルセデスやフェラーリにパワーユニットの供給を打診するもまとまらず、2016年に向けてパワーユニットを確保できない状況が続いている。一時、オーナーのディートリッヒ・マテシッツは「コンペティティブなパワーユニットが手に入らなければ、F1からの撤退も辞さない」という構えを見せていた。
そのレッドブルがここに来て、ホンダに供給を打診してきたのである。もちろん、そこには止むに止まれない事情があったことは想像に難しくない。しかし、このような状況となってもルノーとの復縁を頑なに拒み続けているレッドブルが、撤退を決断する前にホンダのドアをノックしたのである。もちろん、レッドブルとしてはできるなら、メルセデスかフェラーリを搭載したい。しかし、ホンダでもなんとか上位争いすることは可能だという自信があるのだろう。
というのも、ルノーのパワーユニットを搭載したレッドブルの予選時の最高速は、ホンダとほとんど同じだったからだ。つまり、パワーユニットの性能差はルノーもホンダもそれほど変わりない。にもかかわらず、レッドブルはメキシコGPの予選でダニール・クビアトが4位、ダニエル・リカルドは5位を獲得。レースでも2台は4位と5位でフィニッシュしている。レッドブル・ルノーとマクラーレン・ホンダのマシンが異なるのはセクターごとのタイム。3つのセクターでコンマ4~5秒、レッドブルのほうが速い。この差はそれぞれのセクターにある低速セクションでのダウンフォースだと考えられる。
それが、レッドブルの「自分たちの車体性能があれば、ホンダでも上位争いが可能だ」と考えている根拠ではないだろうか。そして、マクラーレンがレッドブルへの供給に対して、ホンダに拒否権を叩きつけている理由なのではないだろうか。
確かにメキシコGPでホンダは度重なるシステムエラーを起こし、まともな戦いができなかった。それでも、あのレッドブルから供給の申し出があったことは事実であり、その事実には深くて重い意味があることを認識しなければならない。
おそらく、政治的な理由によって、ホンダがレッドブルにパワーユニットを供給することはないだろう。それでも、この事実をしっかりと受け止め、残り2戦を前向きに戦ってほしい。
ホンダコラム 辛口編:「辛い一日だった!」
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