11月25日〜26日に鈴鹿サーキットで行われたスーパーフォーミュラのエンジンメーカー/ルーキードライバーテスト。ヨコハマタイヤを装着しての初の大規模な走行となったこのテストだが、果たして、ヨコハマのスーパーフォーミュラ用タイヤは一体どのようなタイヤだったのか。そして、ヨコハマタイヤの導入によって来季の勢力図が変化する可能性はあるのだろうか。
スーパーフォーミュラでは、これまで40年以上にわたって国内トップフォーミュラにタイヤ供給を行ってきたブリヂストンが、今季限りでタイヤサプライヤーから退くことを今年9月に発表。そして10月末には、かねてからウワサされていた通り、来季からヨコハマがタイヤ供給を行うことが発表された。
これまで、2チームずつが参加する合計5回のテストを経て開発が進められてきたヨコハマタイヤ。今回の鈴鹿テストは、全チームが一堂に会してヨコハマを装着する初の機会となり、初日午前から1分37秒台を記録。最終的に2日目には3台が最終戦レース2のポールポジションタイムを突破し、トップタイムは1分37秒695となった。
そんなヨコハマタイヤについて、今季の新チャンピオンである石浦宏明は「ドライでは最初からグリップが高かった。僕は以前SUGOで(ヨコハマの)テストを行っているのですが、その時から印象は変わっていないですね」と話す。
また最終戦レース2で、ホンダに今季唯一の勝利をもたらした山本尚貴も「最初の(大規模な)テストとして、フィーリングはよかったです。しっかりとグリップも出ていたし、なによりもトラブルなく走れたことがよかった」と好意的な評価だ。
テスト前日には「オーディションを受けるドライバーの気分です(苦笑)」と話していたヨコハマの開発本部長を務める秋山一郎氏も、スリックタイヤでの走りに関しては「想定内の結果で、まずはホッとしました」と胸をなでおろした。
とは言え、キャラクター自体はブリヂストンタイヤとは当然異なるようで、ドライバーサイドからは、「グリップは高いが、そこを超えるとスライドしやすくシビア」、「気をつけないと、まさかというところでスピンしそうになる」との声も聞かれた。実際、必ずしもこの特性の違いが原因というわけではないだろうが、2日間の3回のセッションでは合計13回(ドライ10回/ウエット3回)もの赤旗が提示された。
一方、好意的な声が多かったスリックと比較して、ウエットタイヤに関しては課題の残る部分も。雨となった初日午後は、雨量も一定せずコンディションが常に変化していく状況ではあったものの、秋山氏はウエットタイヤについて次のようにコメントした。
「少しウインドウが狭いというか、走行後のダメージもあまりなく、ちょっとまだレンジを合わせ切れていないのかもしれない。少なからず課題があるという認識です」
ドライバーからは「雨量が多くてもタイムは大きく落ちなかったが、少ないときに大きく上がっていくわけでもなかった」、「もう少しグリップが欲しい。ザーザー降りになった時が心配だと感じた」といった声も。また「水量がすごく少なくてもブロックが壊れていかない」との意見も聞かれた。
ヨコハマは、供給初年度に向けた開発方針として、「まずは安全性、そして耐久性というところに重きを置く」としており、ウエットに関しては耐久性を保持するためにブロックが固めになっている様子も窺える。チーム側には、ひとまず今回のテストで投入されたタイヤが「開幕を迎えるタイヤ」(秋山氏)と説明されているということだが、今回の結果を踏まえて変更があるのかどうかも、ひとつの着眼点となる。
2日間の最終的な結果を見てみると、アンドレ・ロッテラーが首位、山本が2番手、そして小林可夢偉が3番手につけるなど、シーズン中も速さを見せたドライバーたちが上位に名を連ねることになった今回のテスト。ただし、前述の通りタイヤのキャラクターの違いは確かに存在しており、その挙動の機微をいち早くつかみ、セットアップに合わせこむことができたドライバーやチームが、来季に向けて躍進を果たす可能性が大いに考えられる。