11日、スクーデリア・フェラーリと小林可夢偉が契約し、今季可夢偉はWEC世界耐久選手権を戦うことになったが、可夢偉とともに戦うことになるAFコルセとはいったいどんなチームなのだろうか? 「今までF1しか見たことがない」「WECのことはよく分からない」というファンの方に簡単にご紹介しよう。
イタリアのレーシングチームで、スポーツカーレース界ではいまや確固たる地位を築いているAFコルセは、元レーシングドライバーであるアマト・フェラーリ(エンツォ・フェラーリとの血縁関係はない)が1995年にチームマネージャーに転身し立ち上げたチーム。『AF』は自身のイニシャルからとられている。
チームはマセラティのカップカーを走らせた後、04年からマセラティMC12でFIA-GTに参戦。06年からフェラーリF430にスイッチしGT2クラスを戦い、マセラティ/フェラーリと強固な関係を築く一方、ミカ・サロやジョニー・ハーバート、現在もチームに所属するジャンマリア・ブルーニなど元F1ドライバーを積極的に起用。2010年にはジャン・アレジとF1を退いたばかりのジャンカルロ・フィジケラがコンビを組んだこともある。
その2010年からはル・マン規定で争われるレースに参戦しており、2012年はフィジケラ/ブルーニのコンビがドライブした51号車フェラーリ458が初年度のWECで2勝をマークし初代チャンピオンを獲得するとともに、ル・マン24時間ではトニ・バイランダーを加え優勝を飾った。
AFコルセはWECの他にもFIA-GT1世界選手権やインターナショナルGTオープンにも参戦。『Racing with FERRARI』をスローガンに多くのシリーズに参戦するほか、WECではLMP2クラスのペコム・レーシングの実質的な運営も担っている。
今季に向けてAFコルセでは、WEC参戦に向け2台のフェラーリ458 GTEをエントリーさせているが、今季はライバル勢が強力な陣容を整えており、連覇は一筋縄ではいかない状況となっている。ポルシェがワークス参戦を開始し、ニュルブルクリンクの名門チーム・マンタイと新型の911 RSRでエントリーしたほか、アストンマーチン・レーシングも2台体制に拡大。ル・マン24時間ではこれに加えアメリカの強豪コルベット・レーシング、新型のバイパーGTS-Rを送り込むクライスラーSRTなど、5ワークスが揃う。
ドライバーの陣容も豪華で、ポルシェは世界中のレースで勝利を重ねてきた自慢のワークスドライバーを揃えるほか、アストンマーチンは昨年までウイリアムズに在籍したブルーノ・セナを起用。そんな中、AFコルセが可夢偉加入を決めた状況はライバルの陣容を考えれば、決して不思議ではない。
可夢偉がドライブするフェラーリ458 GTEはもちろん総合優勝を争うマシンではないが、これまでの経験にないであろうナイトランや、上位クラスの車両を“抜かさせる”走り方の修得は、可夢偉にとって新しいチャレンジとなりそうだ。