テスト最終日のセッションが終わって、1時間ほどしてからのことだ。小林可夢偉選手の担当エンジニアに話を聴こうと、ケータハムのガレージ裏に立っていた。撤収作業を始めたメカニックたちが、資材運搬のために僕のすぐ脇のシャッターを大きく開け放した。すると普段は部外者立ち入り厳禁のガレージの奥が、丸見えになったではないか。そしてそこには、カウルを外したケータハムのF1マシンが。これまで写真でしか知らないルノー製パワーユニットが、どうぞ見て下さいといわんばかりに上からのスポットライトを浴びていたのである。

 ライトの色のせいだったのかもしれないが、そのエンジンはほとんど金色に輝いていた。そして旧知のエンジニアが言っていたように、「以前のF1エンジンを見慣れた者からしたら、まったく別の物体」であった。何よりもユニット後部のターボが、ひときわ目立つ。続いて左側に置かれた巨大なMGU-K(運動エネルギー回生装置)と、バンク脇を堂々と横切るエキゾーストマニホールド。肝心のV6エンジンはとても小さく、前後にも短く、ほとんど埋没してしまっている印象だ。

 しかし文句なしに、美しい物体でもあった。エンジニアが精根傾けて作り上げた最先端の機械は、「精緻」という言葉がもっとも似合う。初日からトラブル続発で、レッドブルを始めとするチームを絶望のどん底に突き落としたエンジンには、どうしても見えなかった。

 しかし事実は現時点では問題が多く、この日の初走行でルノー勢最多の53周を走った可夢偉選手も、実はトラブルをだましだましの走行。「いつシステムが暴走するかわからず、とても全開で走れるような状態じゃなかった」のである。それでもケータハムのマシンは「コンセプトがかなりコンサバで、冷却にも十分すぎるくらい余裕を持たせた」ことで、何とか走り続けられた。

 それに対して空力効率を攻めまくったレッドブル、そしてその弟分のトロロッソは、最終日をそれぞれ7周、9周で終えている。3月中旬の開幕戦まで、冬のテストはあと8日しかない。「ルノーとレッドブルが、このままで終わるはずがない」という意見もある。しかし昨年、表彰台ゼロという最悪のシーズンを送ったマクラーレンも、夏前まではほとんど同じような評価だった。ひょっとしたら、ひょっとしてしまうのか……。F1復帰を果たした可夢偉選手が真価を発揮するためにも、それだけは避けてほしいと思っている。

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