IZODインディカー・シリーズに参戦する佐藤琢磨(ロータス/KVレーシング)は、昨年観戦してその挑戦を決めたインディ500決勝の舞台に臨んだ。琢磨はペナルティなどさまざまなアクシデントに見舞われつつもチェッカーまで走りきり、初めての舞台を楽しんだようだった。
インディアナポリス500マイルレース 決勝
決勝:20位 198周 完走
「ものすごい数のファンの中を走る、インディの景色は
今までとは全然違いました。
最終結果は思っていたものとはなりませんでしたが
インディ500初挑戦はすごく良かったと思っています」
Q:インディ500の決勝を戦い終えての感想をお願いします。
琢磨:すごく難しいレースだったと思いますが、まずは最初のインディ500への挑戦を完走で終えられた。そのことはすごく良かったと思っています。ここに来るまで、プラクティスから予選に向けていろいろなことがありました。アクシデントもあったんですが、決勝に進出することがひとつの大きな目標で、それを達成しました。そしてもうひとつ、レースの中では完走というものを自分の中では最大の目標としていたんです。
僕にとって初めてのオーバルレースは第5戦のカンザスだったんですが、インディ500はカンザスとはまったく違う雰囲気のレースで、最初は慣れるのに少し時間がかかったんです。でも徐々にポジションを上げて行って、レースの途中までは、「最終リザルトもポジティブなものになるのかなあ」という感じだったんですけど、ピットストップでいくつか複雑に問題が絡んで、3回くらい連続でピットインしなくちゃいけなくなってしまった。そのうちのひとつにペナルティストップもあって周回遅れになってしまって、結果的にそこから挽回することはほとんどできなかった。
最終結果は思い描いていたものにできませんでしたが、レースの中ではポジティブなこともありましたし、自分自身良い経験ができたと思うので、インディ500初挑戦は総合的に見れば、すごく良かったと思ってます。
Q:ペナルティを受けたピットストップでは、何が起きたんですか?
琢磨:事情が複雑ですべては言えないんです。ピットストップではタイヤ交換と給油を行うんですが、別の問題があって、もう一度ピットに帰って調べなきゃいけない点があったんです。そうなった時にピットはクローズドになっていたんですが、どうしても戻らなきゃならなかった。結果的にペナルティを受けたのはその直後なんですが、ピットでのストップ&ゴーだけじゃなくて15秒のストップをさせられるペナルティでした。ふたつ、みっつのことが重なって起きたストップでしたね。僕自身オーバーシュート(ピットを止まり切れないこと)もあったんですけど、まったく別のところにも問題があって。結果的には、あそこで周回遅れになってしまった。それが非常に残念でしたね。チームとしてももう1回検証をして、今後どういう対策が取れるかが大事だと思うので、次のレースに繋がると思います。
Q:ゴール前にペースが落ちていましたが?
琢磨:燃費がきつかったんです。何人かのドライバーが最後の数ラップでピットに入ったと思います。最後のピットストップは、みんながほとんど同じタイミングで入りましたから、そこからゴールまで燃料を持たせることができるよう、僕らは燃費をセーブして走っていました。全力で走って1回ピットストップの回数を増やすより、ピットストップをせずにストレッチした方が速いという計算でゴールを目指していました。ただ、僕自身があの時点で周回遅れになってしまっていて、前後を走るライバルたちと直接的にレースをしてないことになっていたんですが、それでも、走り続けることによって得られるものはたくさんありました。今年からインディカーは燃料のミクスチャーを変更して、コンピュータによって燃料をセーブすることができなくなっていますから、使用するギヤだったり、スロットルワークで対応しなくちゃいけない。集団の中で、追い風の中に入って行く感じで燃費をセーブしてました。自分たちがターゲットとする燃費の数字はコクピットに表示されるので、それに合わせて、少しでもスピードを落とさないように走っていました。そういう走りとかも今日は勉強できましたね。オーバーテイクも含めて。
Q:レースのコンディションはどうでしたか?
琢磨:今日のコンディションは、プラクティスまでのものとは全然違っていましたね。僕は先週、予選の日の朝にアクシデントを起こしたので、予選初日のポールデイに出場することができてなくて、次の日の日曜日(=バンプデイ)に走ったんですけど、あの日が今日に似てすごく暑いコンディションだったんです。他のチームは結構暑いコンディションの中でもいろんなレース用のセットアップをやっていて、予選用セッティングから大きく変更をしなくちゃいけないっていうフィーリングを得ていたんですけど、僕自身は残念ながら予選だけに集中しなくちゃいけない状況で、集団の中を走れなかったし、決勝のクルマがどんなものになるのかはわからなかったんですね。
今日走ってみて、コンディションは涼しかったプラクティスの頃とはあまりにも違っていて最初はすごく苦労したんですけど、みんなも滑っていたし、その中でちょっとずつ楽しみながら、順位を上げることはできたんですごく良かったんですけど、それが残念ながら最終結果に繋がらなかったっていうのは、インディ500の難しさであると思うし、逆にこればっかりは1レースを走ってみないと分からないだろうなって改めて感じました。
Q:インディ500の大きさ、伝統などを感じましたか?
琢磨:インディ500がどれだけ大きなイベントかっていうのは、僕としてもだいたい想像はついていました。走行のスケジュールからPRのスケジュールも含め、チームからそれを受け取った時には『えぇっ!』と思いましたね。こんなにやることがあるの? って(笑)。でも、去年までなら4週間近くのレースだったイベントが、今年は2週間半と、これでも大分縮まっているということで、改めてインディ500って本当にすごいイベントなんだなって走る前から感じてました。
結構走行時間は多いなぁ……って思ってたんですね。12時から6時までですから。少なくなったとはいえ、ルーキーテストも含めるとほぼ1週間も走行日があったので、まぁ何とかなるだろうと考えてたんですが、実際に走り出してみると全然足りないことがわかって、僕はオーバル経験がほとんどないですけど、本当にここはカンザスとはまったく違う感じで、インディならではの難しさってものはあって、それは感じましたね。
実際に第1週のプラクティスが終わってからは、第2週目はプロモーション活動ばっかりだったんですけど、いろんなところに行ったり、いろんなイベントに出席する度に、このインディ500をみんなが楽しんでいるなっていうのを肌で感じました。今まで僕が出ていたカテゴリーではない感じの雰囲気ですよね。昨日の市内のパレードもすごく楽しかったし、みんながインディ500を楽しみにしているってことも肌で感じましたね。今日、グリッドに出る時に、ものすごい数のファンが来ていると分かりました。本当に30万人なのかは分からないですけど、それに近い数のお客さんが入っていて、その景色は今までとは全然違った。走ってても1周がずーっと応援席でカラフルなんですよね。その中でレースをしていて、『今、自分はこうしてインディ500でレースをしてるんだなぁ』って改めて感じました。そう思った瞬間があって、その時はすごく楽しかったです。
それだけに、徐々にポジションを上げていた時に周回遅れになっちゃって、ガックリ落胆しました。いつも最後まで諦めないでレースをしてるつもりなんですけど、さすがにあの瞬間はモチベーションが下がりましたよね。ただ、最後にまた集団の中で走って、燃費もセーブして何とかゴールまで辿り着くっていう大きなチャレンジも成功させることができたので、総合的にはすごくたくさん得ることもあったし、これで僕もインディ500ってものが分かって、次のレース、そしてできれば来年に繋げて行きたいなって思っています。
