東京オートサロン2016の会場でお披露目されたZVW50型プリウスをベースとした新型プリウスGT。開発を担ったaprの嵯峨宏紀とチーム監督である金曽裕人氏に話を聞いた。

 aprが今季のスーパーGTに2台投入する新型プリウスGTは、昨年12月に発売された第4世代プリウス(ZVW50型)がベースとなっている純国産のGTマシン。昨年までのZVW30型プリウスGTに搭載されてきたハイブリッドシステムやRV8Kエンジンをミッドシップに搭載する駆動方式は継承しつつも、シャシーが一新されているほか、空力面についてもTRDが第4世代プリウス向けカスタムパーツ製作に使用したCFDデータを基に作りこまれている。

 31号車をドライブする嵯峨によれば、開発が本格的に動き出したのは昨年夏ごろ。しかし、第4世代プリウスをベースとする新型マシンを投入することは「15年シーズン開幕前に決まっていた」という。第4世代プリウスは2015年9月のラスベガスでお披露目されており、その5ヵ月以上前から計画が進んでいたことになる。aprの金曽監督は「新型の市販車モデルの発売に合わせる形で、マシンを設計していくのは初めての経験だった」と開発を振り返った。

「今までは、なにか形のあるものを使っていたので、ある程度予測することができました。しかし、今回に限っては架空のものと戦う必要があり、ある程度“空想”というか、ZXV30型プリウスはこうだったからと先行して設計を始めた部分が多かったですね。そのため、ボディは想像より絞られている部分やまったく異なる形状になっている部分もありました」

 これまでaprのマシン開発はチームに所属していた新田守男が主導する形だったが、新田がチームを離れているため、今回は嵯峨が開発を主導。新型プリウスGTの大きな改良点であるシャシーについては「ドライバーの要望に合わせて溶接位置を変えてもらう」ほど、ドライバーの意見が反映された特注品になっているという。

「ハイブリッドシステムに関して細かなモディファイは加えていますが、去年の成績を見てもらえばわかる通り、(システムは)安定してきています。そのため、今回はシャシー側を大きく改修しました」

「もともと空気抵抗が少ないクルマですから、ストレートでもさらにドラッグが減ると思いますし、ステアリングひとつとっても、僕たちドライバーの意見をかなり取り入れてもらっています。かなり乗りやすくなっているはずですし、今まで以上に思い入れのあるマシンですね」

 また、チームは嵯峨と中山雄一が駆る31号車に加え、佐々木孝太と今年がスーパーGT初参戦となる永井宏明のコンビが乗り込む30号車の、合わせて2台の新型プリウスGTを投入する。使用するタイヤメーカーは異なる(31号車がブリヂストンタイヤ、30号車はヨコハマタイヤ)ものの、2台体制になることでデータの共有はもちろん、「ハイブリッドシステムに関しては、なにか新しいことを試みるときに別々のことができる」と金曽監督。ハイブリッドシステムには、まだまだ向上の余地があるといい、情報量が倍増することの恩恵はレースだけでなく、将来の市販車開発にも好影響を及ぼすはずだと語った。

 最後に今シーズンの目標について聞くと、嵯峨、金曽監督とも言葉は違えど、同じ内容を口にした。

「2回勝ってダメなら3回勝てばいい、3回でもダメなら4回勝てばいいといった気持ちで、ぶっちぎりで勝ってやりたいと思っています」(嵯峨)

「今年の目標は2台で勝てるだけ勝つこと。FIA-GT3マシンに新型がたくさんでてきますから、欧州の名だたるカーメーカーに対し、我々の純国産車両がどこまで戦えるか真っ向勝負したいですね」(金曽監督)

 昨年、aprは開幕戦と最終戦で優勝しシーズン2勝を挙げるも、同じくシーズン2勝を挙げたGAINER TANAX GT-Rにチャンピオンを奪われてしまった。熟成が進むハイブリッドシステムとシャシーや空力で攻めの姿勢をみせ、さらなる進化を果たした新型プリウスGTは、早くもチャンピオン候補筆頭とライバルから警戒されている。続々と登場する新型FIA-GT3マシンに対し、どんなバトルを展開するか。今季の見どころとなることは間違いない。なお、嵯峨によればお披露目の時点で走行テストは行っておらず、2月中にシェイクダウンを実施する予定だという。

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