昨年までスクーデリア・フェラーリで、ビークル&タイヤインタラクション・デベロップメントとして活躍した浜島裕英。その浜島さんのコラムがF1速報サイトで連載中です。題して、「浜島裕英のグランプリ人事査定」。今回、F1速報サイトでしか読めない第6回コラムの一部をお届けします。
第六回査定:アップデート
スペインGP。ニコ・ロズベルグがルイス・ハミルトンを抑えて、ポール・トゥ・フィニッシュで今季初優勝。ハミルトンはというと、フロントロウ2番グリッドだったものの、スタートでホイールスピンを起こしてフェラーリのセバスチャン・ベッテルに抜かれ、前半3位での走行を強いられた。思い切って、3ストップに切り替えたり、第3スティントで猛烈な走りを披露したり、ベッテルをピット戦略でかわしたりして2位となったが、ロズベルグに追いつくには時すでに遅し、の状況だった。
気になったのはフェラーリの2台だ。ベッテルは、新パーツを装着して走行したものの、タイヤのデグラデーションはメルセデス対比で劣り、しかもハードタイヤ装着時にはメルセデスに全く歯が立たない状況。一方のキミ・ライコネンは、古いパーツを使用したものの予選で精彩を欠き、スタートで順位を上げたが、ウイリアムズのバルテリ・ボッタスを最後まで抜くことが出来ず、5位で終わった。
3週間のインターバルを置いての開催となったヨーロッパ・ラウンドの幕開けスペインGPには、各チームがいろいろなアップデートのパーツを投入してくる。アップデートと聞くと、なんだかクルマが改善されて、速くなるイメージを持つ方が多いだろうが、なかなかそうはいかないのが現実だ。
例えば、コンピュータ・シミュレーション上や風洞実験ではダウンフォースが増え、ラップタイムが向上する結果となっている新パーツを投入したとしよう。しかし、フリープラクティスで実車に装着してみると、期待された効果が得られなかったり、ドライバーのフィーリングが悪かったりすることが多いのだ。
今回のフェラーリ、ライコネンが古いパーツに戻したのは、フィーリングが悪かったことが原因で、タイム的なアドバンテージが得られないと判断した、と考えて、ほぼ間違いないだろう。
やはり、実車の走行条件というものは、数値で表すことが出来ない部分がまだまだ多いのだ。計算上は一定に設定されているが、温度や風向きなど微妙に変化するし、加速時、減速時、コーナリング時には、クルマの動きやタイヤの変形は非常に複雑なものとなっている。だからこそ、実車でテストをして、風洞などの結果と実車との相関性を地道に採り、蓄積する作業が非常に重要になるわけだ。
フェラーリ、ウイリアムズのアップデートに関する比較
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