いよいよ8月、スーパーGT500クラスの2014年型の車両が姿を現すことになる。DTMドイツツーリングカー選手権との規則統一によって、これまでとはまったく異なる車両規定が導入されることになるが、いったいどのようなマシンになっていくのだろうか。すでに2012年から導入されているDTM車両を見ながら正式発表前におさらいしておこう。

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●2014年のGT500は、今までとはまったく違う車両に
 2009年から交渉がスタートし、2012年に合意したスーパーGTとDTMの車両規則統一化。来季に向けて、すでにオートスポーツ本誌では2回に渡って14年規定のGT500車両がどんなものになるかを掲載しているが、まだスーパーGTにおける車両規定の細部が明らかにされていないため、具体像は断定はできない。

 まず、数値で言うと、2014年規定のGT500マシンは、20mm程度短くなり(現在のGT500は4,675mm±30mm)、全高は50mmアップ。全幅は50mm狭くなる。これらの外寸の数値は、12年に導入されたDTMとまったく同じだ。また、タイヤサイズもDTMと統一化。ただ先述のとおり、スーパーGTではタイヤのマルチメイクを維持するため、ここからはタイヤメーカーの腕の見せ所となる。

 モノコックは、これまでスーパーGTでは各メーカーがそれぞれ開発していたが、14年からは現在DTMで使用されているものと同様のモノコックを使用する。ただし、スーパーGTでは国産モノコックが使用され、重量や剛性、重心高などの性能がDTMと合わせられる。モノコックに組み合わされるロールケージも共通だ。

 また、ダンパーやブレーキキャリパー、パッド、ディスク、リヤウイング等多くの部分が共通パーツとされる。さらにフロントスポイラ−、アンダーフロア、リヤディフューザー、リヤウイングはすべて共通のパーツとなる。スキッドブロックはプラスチック製だ。

 2014年に関して言えば、スーパーGTとDTMで異なるのはエンジン、タイヤがマルチメイクであること、セミ耐久でドライバー交代があるスーパーGTのために、給油口があるのとエキゾーストの位置が異なること、高温多湿なレースが多い日本でのレースのために、エアコン等ドライバークーリングシステムが備えられることだ。

●キモは“デザインライン”から下
 ファンにとって気になるのは、やはり車両外観だろう。このDTM規定は多くのパーツ共通化が図られコスト削減を実現。ホイールベースや車両外寸などが厳しく定められ、公平性を実現する一方、参加メーカーが開発できる部分も残されている。

 それは前後フェンダー、サイドダクト部分、リヤフェンダーロワなど、“デザインライン”と呼ばれるラインから下の部分。今のスーパーGT500マシンでは前後フェンダー等多くの部分で空力処理を施せたが、新規定ではデザインラインから上は市販車の形状が求められる。

 デザインラインから下の部分はDTMでも多くの空力開発がされており、スーパーGTでもお披露目時から2014年の開幕戦まで、多くの開発がされていくはず。すでにオートスポーツ誌でその姿をお届けしたNSX-GTコンセプトも、今後改良が加えられていきそうだ。

 また、これは規定になっている訳ではないが、興味深いことにボンネットからルーフ、トランクに至るまでのラインはDTMでは全車ほぼ同じ。ロールバーの形状や規定が起因しているのか、同じ角度で撮影された写真を重ね合わせてみれば良く分かる。

 現在DTMに参戦している各メーカーは、サイドウインドウの形状やヘッドライト、グリル形状などで個性化を図っている。DTMのベース車は近いセグメントの市販車が使われているが、新GT500車両はどういうシルエットになってくるか注目したいところ。

●NSXは、勝てるマシンとなるのか
 今回の車両規則統一により、アジア圏を中心にするスーパーGTと、ヨーロッパを中心とするDTM、また2015年からスタートすると言われているDTMアメリカと3地域で、理論上は同規定のレーシングカーが競うことができる。

 また、現在のGT500車両は1台1億円と言われているが、コストダウンにより車両の価格が下げられるほか、開発も制限されるため、GTアソシエイションとしては、その分をファンに向けたプロモーションに充てて欲しいと願っている。

 そんな中で注目なのは、やはりホンダNSXだ。14年規定のGT500車両に向けて、ホンダの伊東孝紳社長が、市販に向けて開発中の「NSXコンセプトでGT500に出たい」と明言。新GT500/DTM車両はFRレイアウトが基本となっているが、GTアソシエイションでは「生産車からエンジン搭載位置を変えないことが販促につながる。コスト削減をしながら日本の3メーカーがものづくりをしていってもらいたい」とホンダの意向を尊重し、ミッドシップレイアウトをスーパーGTに限って採用することを認めた。

 しかし、ミッドシップだから単純に有利かと言えば、そうではない。もともとFR用に開発されたモノコックや車両規定を満たす形で、ホンダはミッドシップのマシンを作らなければならないのだ。これについては、ホンダの松本雅彦GTプロジェクトリーダーも、「正直、勝つためのマシンを作っているとは言えません」とオートスポーツNo.1356で語っている。しかし、フラッグシップカーで参戦する以上、勝たなければならないのがホンダGTプロジェクトの使命だ。

 もちろんNSXも、ベース車両はまだ明らかにされていないがニッサン、レクサスが採用してくるベース車両も、これまで説明してきた車両規定に合わせ込む形でマシンを製作しなければならない。コストダウンと国際化、そしてブランドイメージの構築をすべて両立する形となる新GT500マシン。多くの“不安”も抱えているのは事実だが(こちらはオートスポーツNo.1362を参照)、お披露目まではもうすぐだ。

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