FIAは、メルセデスが開発競争の火種になると指摘したレギュレーション上の抜け穴を塞ぐための決定を下した。

 今季ダブルタイトルを獲得したメルセデスは、2015年F1スポーティング・レギュレーションの別表6パーツリストと、別表8空力テストの制限について多数の不明瞭な点があると申し立てていた。メルセデスは将来を見据えた上で、レギュレーションの明確化を図る機会だと主張した。

 メルセデス・モータースポーツのトト・ウォルフは、このまま抜け穴が残されて利用された場合、規模の大きなチームがジュニアチームを使用して開発スピードを早めることがあると考えている。たとえば来季F1に参入予定となっているハース・チームは、フェラーリからバックアップを受ける契約があり、多数のパーツや風洞施設の使用権が提供される。

 現時点ではメルセデスとFIAの間でやりとりされた文書の中で、ハースやフェラーリといった名前は出ていない。しかしウォルフはアブダビGPの予選日に、もし何のチェック体制もない現在のルールが許されるのであれば「開発を全力で進めるために、いくつの企業やパートナーと契約をするかといった競争になる」と警告した。

 元F1ドライバーでBRDC代表のデレック・ワーウィックが先導し、アブダビGPで開かれたスチュワード・ミーティングにおいて、先々のレギュレーションを明瞭にするための措置が取られ、ルールの悪用は不可とすることになった。

 FIAは、各チームの空力開発に制限をかけ、研究費用の高騰を防ぐという意図をレギュレーションを通して明確化。スチュワードの決定には、リストに記された空力パーツの形状や表面に関する情報をチーム間で共有してはならないという項目も含まれている。

 最も重要なのは、レギュレーションの裏をかくと見なされる行為をリスト化し、この有効期間を発行当日からとしたことだ(下記一覧参照)。これには『空力テスト制限の目的は、各チームが実施できる空力開発量を制限することにある』と明文化。さらに『いかなるチームも、たとえば第三者に代理で空力開発を行わせるなどの方法で、この制限を回避してはならない』ともある。要するに、あるチームが他チームを利用して、自分たちのチームのために空力開発をすることは許可されない。

 FIAはメルセデス、レッドブル、フェラーリ、ウイリアムズ、フォース・インディアから口頭での提案が、またマノーからも文書での提案があったことを明らかにしている。事前にやりとりされた文書はFIAとフェラーリ、ハース、レッドブル、メルセデスとの間で精査され、さらにFIAの監査役と調査官がチームの設備を視察しに訪れた際の報告書も精査されている。

 今年の初頭に行われたFIAの調査では、フェラーリの風洞設備はレギュレーションの範囲内で稼働しているとあり、フェラーリがハースに割り当てられたテスト時間を、自らの利益のために利用していないことが確認されている。

「FIAの取り決めによる新たな制限」

以下の(非網羅的な)一覧は、F1スポーティング・レギュレーション別表8への違反行為と見なされる。これらの違反があった場合は、次回のレースでスチュワードに報告すること。

1. 空力開発に関与しているチームの従業員やコンサルタントは、空力テスト制限中(ATR)の割当時間内に取得した情報を競合チームの従業員やコンサルタントに渡してはならない。

2. 空力開発に関与していた従業員が離職する場合、適切な(または通常の)期間の“ガーデニング休暇”や“隔離”なしに、競合チームで同様の職に就いてはならない。

3. 空力開発に関与していた従業員が離職し、競合チームで同様の職に就き、さらに元のチームに戻り同様の職に就く場合は、適切な(または通常の)期間の“ガーデニング休暇”や“隔離”が必要となる。

4. 空力開発に関与していた従業員が離職し、競合チームで同様の職に就く場合、適切な(または通常の)期間の“ガーデニング休暇”や“隔離”が終了しないかぎり、前チームでATR割当時間内に取得した情報を競合チームの従業員やコンサルタントに渡すことができない。

5. F1の空力開発に関与している外部機関の従業員を、適切な(または通常の)期間の“ガーデニング休暇”や“隔離”なしで、永続的または一時的に、競合チームで採用してはならない。

6. 空力開発に関与していた従業員は、競合チームに出向または一時的に派遣されてはならない。ただし、この出向や雇用が偽りなく長期的な配置であり、競合チームに対して専門的技術を提供することが唯一の目的である場合を除く。いかなる出向者も適切な(または通常の)期間の“ガーデニング休暇”や“隔離”なしで、前チームに戻ることはできない。長期の出向期間とは、3カ月とする。

7. いかなるチームも空力面の情報を外部機関から取得してはならない(この機関が、その情報を自らの目的のために設計したと主張する場合でも不可)。ただし、この開発に使用された空力テストリソースを、関連するチームがATR割当時間内にカウントする場合を除く。

8. 風洞設備(または別表8で言及されている、CFD(数値流体力学)クラスタを含む、あらゆる空力テストリソース)を共有するチーム同士は、守秘義務違反や別表6、別表8全般の違反を防ぐため、適切な手続きを踏まなければならない。これには以下の項目が含まれる(以下に限定されない):

i)2チーム間で共有される人員や、一方のチームで雇用されている人員が、他方のチームの空力テスト操作に関与する場合(例えば風洞設備やCFDハードウエアの操作およびメンテナンス)は、2チーム間で情報のやりとりをしないよう契約条項を与えること。

ii)2チームが準備をする際(風洞モデルの準備など)には物理的な構造物を配置し、上記にあるテスト操作以外では別々の環境を用意する。

iii)2チームが別々のネットワーク上で操作し(少なくとも仮想的には)異なるストレージ・ハードウエアにデータを保管できるよう、ITインフラを整備する。

注:“適切または通常期間のガーデニング休暇や隔離”とは、不可抗力や業務停止(倒産など)を除いて6カ月間とする。通常“ガーデニング休暇”は従業員が離職する際に、従業員とチーム間にある契約上の事柄である。“隔離”は従業員が転職する際に、チームとの間で交わされる同様の取り決めや義務である。

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