19日にポールデーを迎えた第96回インディアナポリス500マイルレース。上位9グリッドを決めるセグメント2には8台のシボレー勢が進み、ライアン・ブリスコ(チーム・ペンスキー)が0.0023秒差でジェームス・ヒンチクリフ(アンドレッティ・オートスポーツ)を上回りポールポジションを獲得した。佐藤琢磨は、19番手を獲得し7列目から3回目のインディ500に挑む。
5月12日にプラクティスが始まり、6日間の走行の後、昨日の金曜日からは予選用ターボ・ブーストでの走行に変わった。3メーカーが参戦、小排気量のターボ・エンジンで戦われることとなった今年のインディ500では新しいルールが採用され、決勝用より40~50馬力大きいパワーでより速いスピードで予選が戦われるよう舞台が整えられたのだ。
予選用ブースとではツインターボのシボレーが大きな優位を手に入れた。ホンダ勢を驚愕させるスピード差が金曜日のプラクティスでは存在していた。決勝日に向け、ホンダも考え得るすべての対策を施し、差は少し縮まっていたようだった。しかし、シボレーのポール獲得を阻むまでにはいかなかったばかりか、夕方の90分間でポールポジションを争うトップ9にはルーキーのジョセフ・ニューガーデンひとりしか食い込むことはできなかった。
ホンダ勢チップ・ガナッシ・レーシングの経験豊富なふたり、ダリオ・フランキッティとスコット・ディクソンをもってしても、予選順位は15番手(ディクソン)と16番手だったのだ。彼らのサテライトチームの若手は健闘し、先輩ふたりを上回る12番手にグラハム・レイホールがつけ、チャーリー・キンボールも14番手だった。
午前11時から午後4時までの5時間を使い、1台ずつが4周の連続走行によるアタックを行うインディ500ならではの予選が開催され、セグメント1ではヒンチクリフが225.746mphでトップに立った。2番手はウィル・パワー(チーム・ペンスキー)で225.399mph、3番手にはライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポーツ)が22225.289mphを記録した。
4番手はエリオ・カストロネベス(チーム・ペンスキー)、以下ブリスコ、トニー・カナーン(KVレーシング・テクノロジー)、マルコ・アンドレッティ(アンドレッティ・オートスポーツ)、ニューガーデンで、EJ・ビソ(KVレーシング・テクノロジー)がセグメント2へ進む。
4時半からポールからの9グリッドが決する90分間の予選セグメント2が行われる。ここでKVRTはコースインはするもののアタックは行わない作戦に出た。スピードアップの可能性が期待できなかったからだ。気温と湿度が高いコンディションを考えると、彼らのセッティングが持つポテンシャルでは、2列目より上のグリッドは狙えないとの判断に達したのだ。
このため、ポール争いは7台が繰り広げられたわけだが、実際にその可能性を持っていたのはペンスキーとアンドレッティの両トリオだった。その中からブリスコが安定した4周で226.484mphをマーク。彼に対抗して226mph台にスピードを載せることができたのはヒンチクリフとハンター-レイだけだった。パワーとカストロネベスも狙ったスピードアップを果たせず、ブリスコのインディ500での初ポール獲得が決定し、賞金10万ドルが贈られた。
惜しかったのはヒンチクリフだ。彼は計測前のウォームアップ・ラップで227mph台を記録した。しかし、その後の肝心な4ラップはそのスピードに届かなかったのだ。1000分の3マイル差=10マイルを走って0.0023秒の差しかなかった。
チーム・ペンスキーにとっては、インディでの17回目のポールポジションとなった。もちろん1チームとして史上最多の獲得数である。そして、今年の開幕戦から5戦連続、取りこぼし無しのポールともなった。
「信じられない! とても良い4周の予選アタックだった。非常に安定していた。あの4周目が僕のポール獲得を果たさせてくれた。僕らのセッティングの勝利だ。チームのみんながハードワークをこなしてくれていた。シボレーは大きなパワーを用意してくれた。インディでのポール獲得は大きな栄誉だ」とブリスコは感激していた。
3回目のインディー500に挑戦する佐藤琢磨は、今日の予選前のプラクティスで競争力のあるスピードを確保しようと頑張ったが、スピードアップは思うように進められなかった。しかも、クジ引きで引いた予選アタックの順番が遅かったため、暑くてスピードの出にくいコンディションで走行。4周平均223.392mphで予選順位は19番手となった。
琢磨は、「プラクティスでの単独走行では、コンスタントにトップ10に入るスピードを出せていました。しかし、予選用の高いブースト圧では自分たちのスピードは競争力が無く、今日も何とかしてスピードを上げようとトライをしたんですが、コンディションの悪さもあってトップ9に食い込むことができませんでした。19番手という結果もとても悔しいですね」と語った。
しかし、琢磨は決勝に向けては明るい展望を持っている。「木曜日まで行っていた決勝用のマシンセッティングはとても良かった。明日はまた決勝用のセッティングに戻って、それをさらに良くしていきたいですね」と語っている。