ラスト2戦となった2011年IZODインディカー・シリーズは、ケンタッキー・スピードウェイで第16戦を迎えた。決勝レースでは、オーバル戦のみ参戦しているサラ・フィッシャー・レーシングのエド・ケーペンターが、最終ラップでダリオ・フランキッティ(チップ・ガナッシ)を逆転しインディカー初優勝を飾った。佐藤琢磨は、マシンのスピードが伸びず15位で決勝を終えた。
快晴の下、予選日よりも明らかに暖かなコンディションでシリーズ第16戦は開催された。
ポイントリーダーのウィル・パワー(チーム・ペンスキー)は、ポールポジションから悠々とリードを続け、オーバル2勝目も十分に可能と映っていた。しかし、またしても彼はピットでレースを失う。アナ・ベアトリス(ドレイヤー&レインボールド・レーシング)と接触したのだ。悪いのはベアトリスの方だ。あるいは、彼女をピットから送り出してしまったチームにその責任はある。
しかし、起こってしまったことは取り消すことはできない。パワーはサイドポッドに大きな穴が開いたためにスピードが上がらなくなり、優勝はおろか上位フィニッシュも不可能となった。最終的に彼は19位となり、12点しか今日のレースで稼ぐことはできなかった。
パワーが不運に遭ったレースで、チャンピオンを争うライバルのフランキッティは、素晴らしい戦いぶりを見せた。燃費セーブを心がけながらも11番手スタートから8番手まで浮上。ライバル勢より1~2ラップ遅いタイミングでピットに入った彼は、作業を終えてコースに戻ると一躍トップに立っていた。インラップ、ピットストップ、アウトラップのすべてが良かったことで成し遂げられた快挙だ。
そこからのフランキッティは優勝に向かって一直線に進む。マルコ・アンドレッティ(アンドレッティ・オートスポーツ)はピットで2台を巻き込むアクシデントを引き起こし、グラハム・レイホール(チップ・ガナッシ)は燃費が厳しくなって一度多くピットストップを行い、優勝戦線から脱落した。
チームメイトのスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ)はスピード不足に悩まされており、フランキッティにはもう敵はいないかに見えた。ところが、レースが終盤に入った178周目、ベアトリスのアクシデント処理が終わった後のリスタートが切られると、エド・カーペンター(サラ・フィッシャー・レーシング)が3位のポジションからディクソンを楽々ブチ抜いて2位へと上がり、フランキッティからトップを奪おうとアタックを始めた。
彼がケンタッキーで速いのは誰もが知っていること。2年連続して、ほんの小さな差で2位フィニッシュを重ねて来ている彼は三度目のチャンスを自らつかんだのだ。
フランキッティとカーペンターのバトルはサイド・バイ・サイドのまま延々と続いた。そして決着は最終ラップの最終コーナーを回った後についた。アウト側のカーペンターがオーバーテイクボタンを押し、ゴールライン目前でフランキッティをパス。通算113レース目にして悲願の初優勝を挙げた。サラ・フィッシャー・レーシングにとっても初めての優勝だ。
カーペンターは鼻の差でフランキッティを押さえての優勝。ふたりのゴールで差は、IZODインディカー・シリーズ史上で6番目に小さい0.0098秒だった。「ようやく勝つことができた。本当にうれしい。こんなにうれしいと感じるなんて……想像していた以上だ。ダリオ・フランキッティとのバトルは激しかったが、彼はクリーンに戦ってくれていた。僕の方はというと、今日は本当にいろんなことがあった。一番のトラブルはヘルメットのバイザーが緩んだこと。そんなことで優勝を逃すなんて絶対にイヤだと思った。15~20周ぐらい片手でバイザーを押さえながら走ってピットイン。テープで固定してもらってからは思う存分に戦うことができた。勝てたのは2009年のレースで2位フィニッシュした経験があったから。あの時に学んだことが今日の戦いで活きた。今日はアウト側にマシンをずっと保ち続け、最後の最後にゴールラインでトップに立つことを狙っていた。そして、その通りの戦いができた」と通算113戦目にしてついに勝利を飾ったカーペンターは語った。
トップを争う2台がサイド・バイ・サイドの戦いを続けたことで、3位以下のバトルも熾烈となった。こちらは経験を活かしたディクソンがルーキーのジェイムス・ヒンチクリフ(ニューマン・ハース)、ライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポーツ)、オリオール・セルビア(ニューマン・ハース)らを封じ込めて3位の座を手に入れた。このところのヒンチクリフの活躍は目覚しく、今日も見事な走りで4位フィニッシュを果たし、ルーキーポイントのトップに躍り出ている。
フランキッティはつかみかけていた優勝を逃したものの、2位フィニッシュに最多リードラップのボーナスを加えてポイントリーダーに復帰した。逆にパワーは19位に沈んだため、スタート前の12点リードから、最終戦で18点を追いかける立場に変わった。
佐藤琢磨(KVレーシング/ロータス)は、22番グリッドから苦戦しつつも15位でフィニッシュ。プラクティスを走った限りでは決勝用のマシンセッティングは良いものと考えられていたが、いざレースで走り出して見るとパフォーマンスは低かった。スピードが伸びないという深刻なトラブルを抱えていたのだ。
それでもKVレーシング・テクノロジーはピットストップが速く、琢磨もリスタートで奮闘してポジションをゲイン。一時的には7番手を走ったほどだった。しかし、走り続けているとスピードの無さが露呈し、稼いだ順位を手放すという展開が続いた。22番手スタートでの15位フィニッシュは、今日のマシンの実力からすれば悪くないものだった。
オーバルレース部門の王者には、今日のレースをポイントリーダーとして迎え、3位フィニッシュしたディクソンが初めて輝いた。彼はレース後にAJ.フォイト・オーバル・トロフィーを授与された。
