今シーズンAFRCHAMPIONSHIP (フォーミュラ・ルノー2.0を使用したアジアのチャンピオンシップ)に参戦し、シリーズ途中参戦ながら、シリーズチャンピオン争いを繰り広げる白石勇樹がGP2のテストに参加した。
テスト1日目、白石は2日目に走行する為、この日は一日見学をする事が出来た。この日オーシャン・レーシング・テクノロジーでは、GP3ランキング2位のジェームス・カラドがテストをした。彼は英国の富裕層たちが集い、未来あるドライバーたちを支援するレーシング・ステップ・ファンデーションのサポートドライバーである。そんな将来有望な彼のGP2の初走行後のコメント。「とにかくパワーに驚く。この衝撃はフォーミュラルノー2.0からF3に上がった時の衝撃を遥かに超えている。アメージングだよ!」 経験あるドライバーからこんなコメントが出てしまう。改めてこのGP2というカテゴリーの凄まじさを感じた。
テスト2日目、いよいよ白石の初走行だ。もう一台のチームメイトは、ポルトガル人のアントニオ・フェリックス・ダコスタである。彼は昨年フォース・インディアからF1のテストにも参加している期待の若手ドライバーだ。フォーミュラは今年で三年目。果たして、このドライバーと白石がどのような違いがあるのか、何とも言えない緊張感が、パドックに渦巻いていた。
午前のセッションがいよいよ始まる。白石もピットアウトし、初の無線をつけた状態での走行。各コーナーでの無線チェックをし、ピットに戻ってくる。戻って来た白石から驚くべき話を聞いた。小柄な白石は、ヘルメットとヘッドレストのスペース隙間が出来てしまい、ストレートでアクセルを踏むと頭ごと後ろに押しつぶされそうになるという。ピットでパッドを埋めたことで解決出来たものの、GP2のパワーを肌で実感。午前の3時間は4周走行してピットに戻り、チームからのアドバイスを貰って、再度走行するという事を繰り返した。徐々にタイムは上がって来たが、まだまだ他のドライバーには及ばない。
いよいよタイムをあげて行く事を目標にした午後のセッション。そこで課題が浮き彫りになった。それは全体的なフィジカル。GP2のマシンのポテンシャルを最大限生かす為のマシンパワーに身体が絶えられないという課題に直面。そしてニュータイヤで限界を超えようとした時、スピンを喫してしまった。マシンは破損し、残り時間を考えるとこのままテストを終了してしまう事も考えられたが、チームが白石に何とか経験を積ませたいという想いからの懸命な修復作業で、何とか残りの15分を走行する事が出来た。
この間、経験あるドライバーたちは、もちろん白石同様GP2初走行ドライバーたちもどんどんタイムをあげていく。チームメイトのダコスタは6番手のタイムを出した後、レースシミュレーションを行い、早々にテストを切り上げた。彼の本日の目標は達成されたのだ。前日走行していたカラドは初のGP2テストを5番手で終えている。1日目のGP2パワーの驚きから、しっかりと目標を定め、着実に成長していることが伺える。白石はマシンを修復した後、走行する事が出来たが、タイムを上げる事は出来なかった。
同じGP2のマシン、同じサーキットを走る日本人と世界のドライバーたちとの間には大きな違いを感じた。世界レベルのドライバーたちは、共通して言えることがある。それは、今、この状況で何をすべきかをきちんと認識している事。そこに焦りは無く、淡々と行い、等身大の自分を見つめ、明日を信じて待つ覚悟がある事。彼らにも来期のカテゴリー、次のレースの保証などは何処にも無く、常に戦い続けている。そこには時に、どうにもならない事もあれば、想像もしていなかったチャンスもやってくる。
この戦いの中で、常に打ち勝って来たドライバーたちが、このGP2の舞台にいる。また、このGP2で壮絶な闘いのごくわずかな、一握りがF1への道を切り開く。そう考えると、日本のレース環境は、あまりにも守られていて、メーカーなどが大切にしてくれている事を感じる。逆に言えば、ドライバーたちが甘えすぎている。考える事、自分と向き合う事を忘れ、誰かに頼ってばかりいる結果、焦りばかりが先行し、自分自身の成長を止めているように思える。
今回、白石は事実上最下位であり、他のドライバーとのギャップも著しくある。この現実をしっかり受け止め、自分自身と向き合い、世界で戦えるドライバーになる為には何が必要なのかをしっかりと見つめ直し、取り組んで行く必要がある。また課題のフィジカルに関して感じたことがある。他のドライバーたちの肉体は、昨日今日で出来た身体ではない。日々の自分との戦いに勝ち、その積み重ねで出来た姿である事がわかる。この一番難しい戦いに世界レベルのドライバーたちは勝ち続けている。白石勇樹に果たしてそれが出来るのか、耐えられるのか。ここからが本当の意味でのスタートだ。
以下:白石勇樹のコメント「まずは今回チャンスをくれたオーシャンレーシングテクノロジー、並びに全ての関係者の方々に感謝の気持ちを伝えたいです。このテストを通じていろんな事を学べました。そして新たな課題も見つける事ができ、本当に良い経験でした。タイムを出せなかった事は本当に悔しいですし、自分にも苛立ちを感じます。でも今はこの現状をしっかり受け止め、今後の大きな課題としてこれからのレース人生に生かして行きたいと思います。日本から応援して下さった皆さん本当にありがとうございました。これからも応援よろしくお願いします。」
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