中国GPの予選でポールポジションを獲得したのは、今回もメルセデスのルイス・ハミルトンでした。2番手のダニエル・リカルド(レッドブル)に0.5秒の差を付ける、圧倒的なパフォーマンスです。
前戦までの性能差、そして今回の予選でのパフォーマンスを見る限り、メルセデスの優位は中国でも揺るぎそうにありません。とはいえ、後続との差が縮まってきていることも事実。実際ニコ・ロズベルグは、レッドブル2台の先行を許すこととなりました。
では、中国GPの決勝レースがどんな展開になるのか? ドライコンディションであり、各マシンのパフォーマンス差がバーレーン同様だったと仮定して、妄想してみることにしましょう。
スタートダッシュを決めさえすれば、ハミルトンがレッドブルの2台を引き離して逃げるでしょう。そして7周目あたりでリカルドに対し、7秒程度の差が開く可能性があります。しかし、このあたりが最大値。フリー走行の結果を見る限り、リカルドのデグラデーション値は非常に小さく、徐々に差を詰め始めるはずです(逆にセバスチャン・ベッテルのデグラデーション値は非常に大きい)。結果、18周目付近で計算上は2秒程度の差になり、20周目頃に追いつくはず。ただし、この計算はロズベルグのデグラデーション値を基に行ったもの。ハミルトンのそれはロズベルグよりもかなり大きく、もっと早い段階でリカルドに追いつかれる可能性もあります。
ピレリの発表によりますと、今回のタイヤ交換は2回もしくは3回。ソフトタイヤは20周、ミディアムタイヤは25周程度走れるようです。つまり、ハミルトンがリカルドに追いつかれると算出したあたりが、最初のタイヤ交換のタイミング。ここが勝負の別れどころです。
レッドブルがメルセデスに勝つためには、ピット戦略が重要だと考えます。今のレッドブルがコース上でメルセデスをオーバーテイクするのは、至難の業。なぜなら、メルセデスとレッドブルには、絶対的な“速度差”があるからです。
予選でのメルセデスとレッドブルの最高速度を見ると、その差はなんと20km/h(ハミルトン317.7km/h、ロズベルグ317.1km/h、ベッテル297.7km/h、リカルド297.1km/h)もありました。これは、コーナリングで差を詰め、直線入り口でスリップストリームに入ったとしても、そしてDRSを作動させたとしても、抜くのは非常に厳しいという差です。
ちなみにメルセデス勢に背後に迫られた場合も、対抗するのは難しいはず。スタート直後、レッドブルのふたりはロズベルグの攻撃にさらされるでしょうが、ここは応戦してペースを乱すよりも、先行させて自らのペースを守った方が賢明かもしれません。
コース上で抜くことができない分、レッドブルが狙うのはピット戦略での逆転劇。メルセデスよりも1周でも早くピットに入って先頭を奪うか、あるいはタイヤ交換の回数をメルセデスよりも減らしてバーレーンでのフォース・インディアのような作戦を採るか……簡単な戦いではないでしょうが、いずれにしてもレッドブルが、これまでの3戦よりもメルセデスに対抗できる“可能性”はあります。
ただ、分からない要素がふたつあります。
ひとつは、メルセデスの“本当の実力”です。バーレーンGPのラスト11ラップ、メルセデスの2台は異次元の速さで疾走し、この11周だけで3位セルジオ・ペレスに対して23秒もの差をつけました。計算上のバーレーンでのパフォーマンスは、メルセデスの100に対してレッドブルは101.51(100が最速。数値が大きいほど遅い)。1周あたり約1.5秒、メルセデスの方が速いという計算です。しかし、バーレーン11周は、1周あたり2秒以上の差。つまり、計算以上にメルセデスとレッドブルの性能差が開いている可能性も十分にあるのです。そのため、今回もあっさりと勝ってしまう可能性は、十分にあるでしょう。
次に天候です。予選が雨だったため、レッドブルがメルセデスに迫り、1台を凌駕することができたという可能性があります。最高速の差にも出ている通り、レッドブルは大きなダウンフォースを付けていたはず。そのため、高いグリップを発揮して、メルセデスに迫ったのです。ドライでも、高速コーナーが続くセクター2では効果を発揮するでしょうが、トラクション+最高速を必要とする区間では、出力に勝り低ドラッグ傾向にあるメルセデス製パワーユニットユーザーが、その威力をさらに発揮するはす。レッドブルにとしては、雨乞いしたいくらいかもしれません。
また、現時点での決勝当日の天気予報は晴れ時々雨。突然の降雨が戦線をかき回す可能性も十分にありますので、天候には注意しておいた方がよさそうです。なお、F1速報/AUTOSPORTwebでは、決勝スタート約1時間前に、天候も含めた現地の最新情報をお届けする予定です。こちらも併せてチェックしてみてください。