前後のサスペンションを繋ぎ、車高を制御するFRIC。このシステムを全チームが使用するのを止めて最初に迎えるグランプリが、今回のドイツGPです。今季これまで圧倒的な強さを誇ってきたメルセデスAMGのアドバンテージのひとつが、このFRICであると言われていたため、「もしかして勢力図が変わるのでは?」という見方もありました。
金曜日に行われたドイツGPのフリー走行1回目と2回目では、共にメルセデスAMGが1-2。とはいえ、FP1ではニコ・ロズベルグが3番手フェルナンド・アロンソ(フェラーリ)に対して0.3秒差、FP2ではルイス・ハミルトンが3番手ダニエル・リカルド(レッドブル)に対して0.1秒差……前戦イギリスでは、FP1が0.8秒差、FP2が0.7秒の差(いずれもトップタイムだったハミルトンが3番手アロンソに付けた差)でしたから、その差はグッと縮まったように見えます。ハミルトンもロズベルグも、「FRICが無くなったことで苦労している」旨の発言をしており、メルセデスAMGの牙城が崩れたかのようにも感じます。
FP2でのロングランを見てみると、ソフトタイヤ(S)でもスーパーソフトタイヤ(SS)でも、メルセデスの2台はほとんどペースを落とすことなく、連続走行をこなしました。他チームの多くがデグラデーション(タイヤの性能劣化)に苦しんでいたにも関わらずこの傾向が見られるということは、しっかりとタイヤを労わっての走行だったとも考えられます。
次に速そうなのがウイリアムズです。SSを履いたフェリペ・マッサは、メルセデスAMGと同等かそれ以上のペースで約10周走行しました。これを長く維持できれば、勝ちを狙えるかもしれません。しかし、S装着時のデグラデーションはメルセデスAMGより大きいものでした。チームメイトのバルテリ・ボッタスも、SSで14周走ったところで「タイヤはもう死んでしまった」と無線で訴えるほど苦労しており、ウイリアムズにとってはタイヤが最大のネックとなるでしょう。
3番手はレッドブル。セバスチャン・ベッテルとリカルドのピークのペースはやや劣るものの、デグラデーションはウイリアムズよりも小さいようです。特にリカルドは、Sでほとんどラップタイムを落とすことなく12周の連続走行。この時のペースは、メルセデスAMGにも匹敵するものでした。
いずれにしてもウイリアムズとレッドブルは、メルセデスAMGとの差を縮めてきた印象があります。もしかしたら、今回のドイツGP、メルセデスAMG、ウイリアムズ、レッドブルの三つ巴の戦いになるかもしれません。
フェラーリのアロンソは、全出走車中最も長い17周の連続走行を実施。この時はSを履いていましたが、最後の1周でラップタイムを落としたものの、終始安定したペースで走行。ペース自体はメルセデスAMGより1周あたり0.7秒程度遅いものの、タイヤの寿命をしっかりと確認していたという印象があり、不気味です。一方、ライコネンはSとSSで10周程度ずつの連続走行を実施。デグラデーションの傾向は見られますが、レッドブルより若干劣るだけというペースで、上位争いに加わって来そうです。ライコネンに復活の兆しが見えます。
ベストタイムでは目立たなかったフォースインディアですが、セルジオ・ペレス、ニコ・ヒュルケンベルグ共に、ロングランでは上位に匹敵するペースを発揮。またいつものように、他とは作戦を変える形で、上位をかきまわしてくる可能性は十分にあるでしょう。
マクラーレンは今回苦労しそうです。ベストタイムでは上位に顔を出していますが、ロングランでは大苦戦。Sを履いた際のペースはメルセデスよりも1周あたり2秒ばかり遅く、SS装着時のデグラデーションも非常に大きくなっています。これは、チームの公式コメントで、ジェンソン・バトンも認めていること。上位にリタイアが出ない限り、入賞は難しいでしょう。
週末を通してホッケンハイムは、気温が非常に高くなるとの予報です。当然路面温度も上がり、タイヤには非常に厳しい状況。ピレリは、今回のレースは2~3回のピットストップになると予想していますが、初日のロングランを見る限り、3ストップを選択するマシンが多くなりそうです。ただこれは、レースがドライになった場合のこと。日曜日は雲が多く、場合によっては降雨があるかもしれません。
メルセデスAMGがFRIC無しでも今まで通りの強さを見せるのか? それとも、ウイリアムズやレッドブル、もしくはそれ以外のチームがメルセデスAMGに真っ向勝負を挑むことになるのか? 今回のドイツGP、土曜日以降も要注目です。
