ロシア・モスクワ市街地の中心部で行われたフォーミュラE第9戦モスクワePrix。昨年の9月に始まったフォーミュラE最初のシーズンも、モスクワを入れて残り3戦。チャンピオン争いはネルソン・ピケJr.(ネクストEV TCR)、セバスチャン・ブエミ(e.ダムス・ルノー)、ルーカス・ディ・グラッシ(アウディ・アプト)の3人に絞られた感がある。

 現地時間12時から行われた予選では、アンドレッティのジャン-エリック・ベルニュがポールポジションを獲得。シーズン途中からの参戦だったにも関わらず、これで3度目のポールポジションと、速さを見せている。その後方にはピケJr.、ディ・グラッシ、ブエミと、ランキング上位のドライバーが並ぶ。ファンブースともこの3人のドライバーに与えられた。

 2.29kmのコースを35周して争われるモスクワePrix決勝レース。絶好のスタートを見せたのは、2番手スタートのピケJr.。1コーナーまでにポールポジションスタートのベルニュを交わし、一気に先頭に立つ。以下、ディ・グラッシ、ブエミが等間隔で続く。2周目以降、5番手に上がっていたダニエル・アプト(アウディ・アプト)のペースが上がらず、トップ4台からは徐々に引き離されていってしまう。その後ろにはジェローム・ダンブロジオ(ドラゴン)、ニコラス・プロスト(e.ダムス・ルノー)らが、数珠つなぎで続いていく。

 5周目からはピケJr.がスパートを開始。後続よりも約1秒速いペースで飛ばしていく。しかし、バッテリー残量はベルニュ以下とほぼ同じで、決してオーバーペースなわけではない。8周目にはピケJr.とベルニュの差が4.1秒まで広がってしまう。チャンピオンをピケJr.と争うディ・グラッシとブエミからすれば、早い段階でベルニュの前に立ちたいところだ。

 10周目終了時点で、バッテリー残量に差が出てきた。先頭を逃げるピケJr.は39%の残量となっていたものの、ベルニュ、ディ・グラッシは40%以上。ブエミに至っては47%と大幅に残している。ブエミはベルニュとディ・グラッシを抜けないと見るや、バッテリーをセーブしてピットインのタイミングを変える作戦に出たようだ。

 後方ではアムリン・アグリのアントニオ・フェリックス・ダ・コスタが、シケインでヤルノ・トゥルーリ(トゥルーリ)のインに飛び込みオーバーテイクを狙う。しかし、ここではデュランがトゥルーリをコース外に押し出す形となってしまう。

 バッテリー残量が少なくなってきたピケJr.はペースを落とし、後続のベルニュ以下が接近。当初4秒以上あった差は14周終了時点で2.8秒にまで縮まっている。ピケJr.のバッテリー残量は16%だ。ブエミは27%を残している。

 ディ・グラッシとブエミは17周目にファンブーストを使い、ペースを上げる。ピケJr.もファンブーストを使い、2%を残してピットへ。後方ではブルーノ・セナ(マヒンドラ)が1コーナーでスピンし、リヤのアッセンブリーを完全に脱落させている。

 18周目にはベルニュとディ・グラッシがピットインしてマシンを交換。このタイミングでディ・グラッシがベルニュの前に出る。ただ、ピケJr.からは7秒も遅れてしまった。ブエミはコース上で飛ばして順位の逆転を狙い、19周目終了時点でピットインする。

 しかしブエミは、ピットでの最低滞在時間(59秒)よりも10秒近く長い1分8秒もピットに留まってしまうミス! 順位こそ4番手をキープしたものの、先頭のピケJr.から15秒以上も遅れた位置でのコース復帰だ。チーム代表のアラン・プロストの説明によれば、完全にチームのミス。ピットレーンの最低滞在時間を68秒と勘違いしていたという。チャンピオンシップを争う上でも、これは痛すぎるミスと言えよう。コースに復帰したブエミは、失った時間を取り戻そうと、ファステストラップを連発して前を追う。

 なお、14番手を走行するベンチュリのステファン・サラザンには、ピットの最低滞在時間違反で、ドライブスルーのペナルティが課せられてしまう。また、ヴァージンのサム・バードはレース序盤にマシントラブルが発生。早々にマシンを交換したために、24周を走り切った時点でエネルギーを使い切ってしまい、リタイアとなっている。

 レース残り6周というところで、2番手のディ・グラッシが先頭のピケJr.に急接近。差は2.6秒まで縮まってきている。この時点でトップ3台のエネルギー残量はほとんど変わらず。ブエミは5%以上多く残して前を追うが、まだトップからは10秒以上の差がある。

 32周目に入ったところで、ディ・グラッシはピケJr.の1.7秒後方まで迫る。残りは4周。ベルニュはここから6秒遅れ、ブエミはベルニュまで2秒差まで詰め寄っている。この頃、ヘアピンではトゥルーリにロイック・デュバル(ドラゴン)が追突。トゥルーリのリヤアッセンブリーが脱落してしまう。

 残り1周というところで、ピケJr.とディ・グラッシの差は2秒まで広がり、ここで勝負あり! ブエミは3番手のベルニュに0.5秒まで迫っている。

 そのままピケJr.は先頭でチェッカー! フォーミュラEでの自身2勝目を挙げ、ランキングトップの座を堅持した。2位でフィニッシュしたのはディ・グラッシ。ブエミは最終ラップでベルニュを交わし、3位表彰台を確保している。ベルニュは最終ラップでバッテリー残量が足りなくなり、結果的にはニック・ハイドフェルド(ベンチュリ)にも抜かれて5位フィニッシュ。予選での速さを、またしても決勝に繋げることができなかった。

 このレースの結果、ピケJr.が128ポイントでランキングトップ。ディ・グラッシが116ポイントで2番手、ブエミが111ポイントで3番手となっている。残すは2週間後、ロンドンで行われる2レースのみ。さて、最後の最後の笑うのは誰なのか?

本日のレースクイーン

葵くみあおいくみ
2025年 / スーパーGT
チームマッハ 2025 エアバスター アンバサダー
  • auto sport ch by autosport web

    RA272とMP4/5の生音はマニア垂涎。ホンダF1オートサロン特別イベントの舞台裏に完全密着

    RA272とMP4/5の生音はマニア垂涎。ホンダF1オートサロン特別イベントの舞台裏に完全密着

  • auto sport

    auto sport 2025年7月号 No.1609

    【特集】LE MANS 2025
    “史上最混戦”の俊足耐久プロト頂上決定戦

  • asweb shop

    STANLEY TEAM KUNIMITSUグッズに御朱印帳が登場!
    細かい繊細な織りで表現された豪華な仕上げ

    3,000円