最終戦を前に、ブラジルGPを制したニコ・ロズベルグ。ルイス・ハミルトン334点に対してロズベルグ317点と17点差、ロズベルグがダブルポイントシステムが実施される最終戦アブダビGPで優勝しても、ハミルトンは2位に入ればチャンピオンとなり、数字上は依然としてハミルトン有利である。

 しかし、この1勝で流れが変わったことも事実だ。それを最も強く感じているのが、ハミルトンではないだろうか。

 レース後、メルセデスは恒例の記念撮影会を開いた。ワンツーフィニッシュを飾ったので、これまで同様、前列中央にロズベルグとハミルトンが並んで座った。

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 撮影が終わるやいなやハミルトンはダッシュして、その場を去った。

 その理由は、シャンパンボトルを用意したメカニックが後ろにいて、撮影会が終わると同時にシャンパンファイトすることを予測したからだった。ロズベルグはレーシングスーツだったから、再びシャンパンを浴びても問題なかったが、すでに私服に着替えていたハミルトンは、このシャツのまま空港へ向かうため汚したくなかったようだ。

 ところが、シャンパンファイトが数秒で終わってからもハミルトンは戻ってこなかった。ハミルトンがいなくなったガレージでは、メルセデスのスタッフが代わる代わるロズベルグの8戦ぶりの優勝を祝っていた。

 両者の明暗を分けていたのは、撮影会だけではない。その後、メルセデスのチームホスピタリティハウスで開かれた記者会見も同様だった。先に現れたのはハミルトン。しかし、最終戦で2位でもチャンピオンになれるという余裕は感じられなかった。

「次のレースに向けて安心なんて、まったくないよ。最終戦はダブルポイントだから、まだ50ポイントある。これまでのF1ではなかったことが今シーズン導入された。それが、いよいよアブダビで史上初めて採用される。どうなるか誰にもわからない」

 ハミルトンに笑顔がなかったのはダブルポイントシステムのせいだけではなく、地元イギリスのメディアからのプレッシャーも無関係ではない。現在F1の現場で最も多くの取材陣が来ているのはイギリスからだ。その数はテレビを除く新聞・雑誌媒体だけでも約20人名ほど。しかも英国メディアは他の国と違って、母国のドライバーだからといって無条件に応援するような報道はしないことで知られている。ナイジェル・マンセルやデイモン・ヒルも何度も叩かれた。

 その直後に行われたロズベルグの会見は、好対照だった。ホスピタリティハウスの外にあるテラスで行われた会見は、前列をドイツ人記者が独占し、終始にこやかなムード。

その会見中、ロズベルグのフィジオ(理学療法士)がレース後に用意されていた軽食をタッパーに入れて差し出した。しかし、ロズベルグはドイツ人記者とのトークに夢中で、軽食を口にしようとしない。そうこうしているうちに会見は終了。軽食を置き忘れて席を立つロズベルグに、ドイツ人記者が「ニコ、忘れ物よ」とタッパーを渡したものの、受け取った直後に「みんなで食べて」と言って記者に返した。

 ベルギーGPでのハミルトンとの接触事故以降、暗い表情が多かったロズベルグにしては珍しく、レース後も笑顔が絶えなかったインテルラゴス。時にモータースポーツは、1レースで流れが変わることがあるという典型的な一戦だった。

 ちなみに、ドイツ人記者がもらったロズベルグ用の軽食は誰も口にせず、同席していた筆者がもらうことになった。その中身は、ブルーベリーマフィン。ロズベルグにとって、最終戦は甘い結末となるのだろうか。

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