シルバーストンのGP2第5戦レース1で、ついに“神話”が崩れ去った。開幕からここまで全ラウンドでレース1を制してきたストフェル・バンドーンが勝利を逃したのだ。
スタートでトップに立ったのは、ポールポジションのセルゲイ・シロトキンでもなく2番グリッドのバンドーンでもなく、3番グリッドから好加速で2台の間を抜けていったリッチー・スタンアウェイだった。さらにアウト側からは7番グリッドから好発進を見せた松下信治が並びかけ、バンドーンを抜いて一気に3位まで浮上する。
松下は「加速も良かったし、その後のラインどりも良かったし、何もしないで3位まで上がれてラッキーでした」と語るが、バンドーンは「スタート加速もあまり良くなかったし、その後のポジションどりが良くなかった。(今日勝てなかったのは)僕のせいだよ」と振り返る。
1周目のターン6ではスピンしたナタナエル・ベルトンのマシンにアルテム・マルケロフが接触して宙を舞う事故が起き、ベルトンのマシンが破片をまき散らして止まったためセーフティカーが出動。マルケロフはなんとかレースを続けたものの、黄旗無視で10秒ストップ&ゴー、さらに接触に対して10秒加算ペナルティを科せられた。
レースは4周目に再開となり、2番手のシロトキンがターン16でアウト側から首位スタンアウェイに並びかけ、サイド・バイ・サイドでパス。松下もアウト側にはらんだスタンアウェイをパスして、2位に浮上した。
「前の2台がやりあいそうな雰囲気があったんで見ておこうと思っていたんですけど、2台が(ターン17の)アウト側にはらんでくれたんで、普通にインを突いて危なげなく抜けました」と、松下。
これで上位勢では唯一ミディアムタイヤでスタートした松下にとって、きわめて有利な展開となった。ハードタイヤのシロトキンを攻略するのは時間の問題と思われたが、7周目に突然ストップ。センサーの誤作動によって電源が落ちてしまったためだという。
「ターン3のブレーキング手前で突然エンジンが止まりました。トラブルがなければ表彰台は確実だったと思うし、ピットインまでにシロトキンを抜いてトップに立って、ピットストップ後の展開によっては優勝争いもできたと思います。本当にもったいない」
これで首位シロトキン、2位スタンアウェイ、3位バンドーン、4位ロッシ、5位ピエール・ガスリー、6位アーサー・ピック、7位ラファエル・マルチェッロという上位勢の顔ぶれになった。6周目からはミディアムタイヤでスタートした中団勢が続々とピットイン、上位勢と中団以下の差が開く。しかしハードタイヤへの交換を済ませた後続勢はファステスト連発の走りを見せ、ペースは決して悪くない。
上位集団は2番手スタンアウェイのペースが上がらず、バンドーンとロッシが抑えられるかたちとなり、首位シロトキンは後続との差を8秒まで広げていく。16周目にはロッシがターン4で一瞬の隙を突いてバンドーンのインに飛び込み、3位を奪い取った。バンドーンは「少し居眠りでもしていた隙に捕まってしまった」と苦笑いするが、スタンアウェイとのバトルで隙が生じたことも事実だ。ロッシは続いて17周目にスタンアウェイもパスして2位へ浮上し、バンドーンもタイヤのタレたスタンアウェイを、すかさず抜いてロッシについていく。
18周目にはハードタイヤスタート勢のピットストップが始まり、3位バンドーンと4位スタンアウェイがピットイン。19周目にはロッシがピットに飛び込むが、ロッシはミディアムスタート集団の前に出られたのに対し、バンドーンとスタンアウェイはトラフィックに引っかかってしまった。
首位シロトキンは20周目にピットインしてロッシの前でコースに戻り、実質的な首位をキープ。全車がタイヤ交換を済ませた時点で首位に返り咲いた。その後ろにロッシ、ミディアムスタートのジョーダン・キング、バンドーン、やはりミディアムスタートのニック・イエロリー、ガスリー、アレックス・リンと続く。
しかしキングはタイヤが厳しく、25周目にはターン7の出口でワイドになってバンドーンが楽々と3位を取り戻す。だが、すでにレースは残り数周で。首位シロトキンと2位ロッシはタイヤのライフに心配がなくなったためプッシュを開始し、バンドーンを寄せつけない。シロトキンは29周目にファステストラップを記録し、ポールポジションにファステストラップと完全勝利でGP2自身初優勝を飾った。
「最高の気分だよ。シーズン序盤は苦労したけど、ここまで努力してきたことがこの結果につながった。今後も上位を争えるペースが僕らにはあるはずだ。プッシュし続けるよ」
これでバンドーンのレース1神話に終止符が打たれたが、それでも3位表彰台を確保してチャンピオンシップは現在170ポイントと大きくリード。選手権2位はロッシで97ポイント、シロトキンが77ポイントで3位と、表彰台に並んだふたりが浮上してきた。シーズン後半戦に向けてタイトル争いの顔ぶれは、ほぼ絞られてきたようだ。
