14車種29チームが熾烈なバトルを繰り広げている今シーズンのスーパーGT300クラス。数多く車両のなかから1台ピックアップし、ドライバーや関係者にマシンの魅力を聞いていく。

 今回は先日、今シーズン限りでスーパーGT300クラスでの参戦を終了すると発表したZVW30型 PRIUS GTのTOYOTA PRIUS apr GTにフォーカスする(本取材はスーパーGT第8戦もてぎにて実施)。

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 2012年にスーパーGT初のハイブリッドシステム搭載車としてGT300クラスに登場したプリウスGT。デビューイヤーの第6戦富士でポールポジションを獲得すると、翌年の第2戦富士ではハイブリッド搭載車として初のGT300クラス初優勝を飾った。GT300クラスにはハイブリッドを搭載するマシンとしてホンダCR-Z GTがあるが、CR-Z GTがレース専用に開発されたハイブリッドシステムを積むのに対し、プリウスGTは市販車に搭載されているものを流用しているのが大きな違いだ。

 プリウスGTはJAF-GTに属するマシンで、特性としてはストレートよりもコーナリング性能が優れている。特に昨シーズンはフレームの軽量化とエアロパーツの改修を実施。加えて、今年は新たに装着することとなったブリヂストンタイヤに合わせる形でダンパーやジオメトリー関係も見直したという。その結果「(鈴鹿サーキットの)130Rをびっくりするような速度で回ることができる」ようになったと今季からレギュラードライバーを務める中山雄一は明かす。

「鈴鹿の1〜2コーナーも自分が思い描くクルマの限界を感じながら飛び込んでいけるようになりました。昔はいきなり裏切られることもありましたけどね(苦笑)」

 コーナリング性能が高まったプリウスGTは、最終戦もてぎの決勝レース終盤にストレート速度で勝るメルセデスSLS AMG GT3に対しコーナーの飛び込みで勝負をしかけオーバーテイクしている。このことからJAF-GT勢のなかでもストレートスピードが速い部類だと言えるのではないだろうか。これについて中山は「元々がエコカーだから」ではないかと語った。

「ハイブリッドパワーの恩恵でストレートが速いというのもありますが、プリウスは元々エコカーです。例えばGT-Rと比べても、クルマの小ささを明らかに感じると思います。その空気抵抗の少なさが、ストレートの速さに繋がっているのかなと思います」

 ベース車両がエコカーであり空気抵抗が少ないこともストレートスピードを押し上げている要因だろう。しかし、それ以上に速さを生んでいるのはエンジンであることは間違いない。プリウスGTのエンジンは、かつてフォーミュラ・ニッポンでも使用されていたRV8K型、3.4リッターのV型8気筒自然吸気エンジンだ。このハイパワーエンジンがマシンのミッドシップに配置されている。

 GT300クラス初のハイブリッドマシンとして登場したプリウスGT。当然開発は一筋縄ではなかったようだ。チームを率いる金曽裕人監督はハイブリッドに関してはaprではなく、トヨタ側が開発を担っているといい「ハイブリッドの開発には苦労があったと思う」とコメントした。

「ハイブリッドに関しては毎年進化していますが、我々もその詳細をすべて把握してはいないんです。ただ、システム的にエンジンとしっかり同調してハイブリッドが動いているのは苦労の賜物ですね。しかも、それをほとんど市販部品でまかなっています」

「どこかで売られているKERS(ブレーキ回生システム)やザイテック製のアイテムというわけではなく、すべてトヨタのなかで作られているもので実際に市販されているプリウスやプリウスα、レクサスISなどのハイブリッド車から部品を流用しています。それをレースで戦えるレベルのハイブリッドにするのは、僕らではなくトヨタさんの苦労がすごくあったと思いますよ」

 開発段階にはテストに参加しても1度もコースインすることなくテスト期間を終えることもあったという。それでも市販車用パーツを使いながら、レースで求められるハイブリッドシステムを構築することに拘ったのは、今後の市販車、ひいてはレース界の将来を見据えてのことだった。

「テーマとして市販車と同じものを使うというのがありました。それが今後の市販車のパフォーマンスに影響してきますし、(パーツの)限界性能を知ることにも繋がります。今後、化石燃料を燃やして走るだけがレーシングカーではいけないと思うし、レース界を含めてより市民権を得られるように、この活動はやめてはいけないと思っています」

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 この取材を行った第8戦もてぎでTOYOTA PRIUS apr GTは、公式練習〜フリー走行までの全セッションでトップタイムをマーク。決勝ではポール・トゥ・ウィンを達成したほか、ファステストラップも記録。マシンパッケージと今年から装着するブリヂストンタイヤ、そしてドライバーが高いレベルで力を発揮した結果、文字通りもてぎを完全制圧する形で有終の美を飾った。

 なお、気になる後継マシンについて金曽監督は「ハイブリッド車がある限り、トヨタがハイブリッドを作る限り、我々はそのハイブリッドのパフォーマンスを限界まで追求していく」と語っており、来シーズン、ハイブリッドを搭載した新たなレーシングカーが登場するかもしれない。

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