10日、鈴鹿サーキットで行われた全日本選手権スーパーフォーミュラ第7戦で、公式戦としてのラストレースを迎えたFN09/SF13シャシー。これまで多くの勝利を重ねているPETRONAS TOM'Sの東條力エンジニア、DOCOMO DANDELIONの田中耕太郎エンジニアが、SF13の思い出とSF14シャシーについて語っている。

 これは、9日の予選日に開催されたサタデーミーティングで、ホンダの坂井典次/佐伯昌浩の新旧SFプロジェクトリーダー、トヨタの永井洋治SFプロジェクトリーダー、そして東條、田中両エンジニアが出席して、SF14の開発状況、SF13について語ったもの。

 今季がラストシーズンになるSF13は、アメリカのスウィフト・エンジニアリングが製作したシャシーで、2009年にFN09としてデビュー。当初2011年までの使用予定だったが、リーマンショックに端を発する不況の影響もあり、スーパーフォーミュラと名称が変わった2013年シーズンまで、“SF13”シャシーとして使用された。

●SF13は「今となっては結構好きです」
 そんなFN09/SF13シャシーで、これまで多くの勝ち星を重ねてきたのが東條、田中両エンジニア。PETRONAS TOM'Sの東條エンジニアは、「08年の終わり、スウィフトの初号車をトムスで1台組み立てさせていただきました。長いことこの業界に携わっていて、レイナードやローラ、トムスですとF3でダラーラと長く付き合っているので、最初に受け取った時には衝撃的というか……大丈夫かなという状況でした(笑)」と、アメリカ製ならではのスウィフトシャシーの最初の導入時を思い出し笑う。

「なんとか組み上げたんですが、意外に壊れないし、丈夫だし、割と走るんですよね(笑)。最初の09年と10年はセットアップに時間がかかりましたけど、今に至るまでタイヤが変わったくらいなので、それに合わせるだけのセットアップで割と走る感じになったと思います。僕は今となっては結構好きです(笑)」

 一方、同様に多くの勝ち星を重ねた田中エンジニアは、「東條さんはずいぶんと愛着が出ている感じですが(笑)、僕としてはスウィフトさんのクルマはちょっと重い。ダウンフォースが非常に強くて速かったんですけど、重い部分で僕としてはずいぶん苦労した思い出があります」とSF13を評した。

●良い意味で“強い個性”のないSF14
 そんなふたりは、来季から導入される、ダラーラ製のSF14シャシーもシェイクダウンから関わり、開発を進めている。トップエンジニアから見たSF14シャシーとはどんなものなのだろうか。

「ダラーラさんのシャシーは、世界中のシングルシーターを席巻しているだけのことはありまして、非常に扱いやすい、良くできているシャシーだと思います」と言う田中エンジニア。

「テストはプログラムに従って順次進めています。車体側もダラーラからいただいたキネマティクスですとか、エアロマニュアルというのを検証するような形で、ひとつひとつ実走状況と風洞実験の結果と見比べています。そういう面でもかなりしっかりしていて、マニュアルの数値をかなり信用してセットアップを進めて間違いないです。特別クセというか、強いキャラというのを持っていない気がします」

 一方、東條エンジニアもSF14シャシーの扱いやすさ、走らせやすさというのを強調する。

「また初号車を組み立てさせていただきましたけど、非常にソツのない作りというか、簡単に組み上げることができました。そのままの状態で富士でシェイクダウンをして、初日いろいろエレクトロニクスとかトラブルはありましたけど、2日目からは全然止まることなく走らせることができました」と東條エンジニア。

「マニュアルの検証ですとか、富士なのでローダウンフォースがいいのか、ハイダウンフォースがいいのかとか、ダラーラさんから指名されたエアロダイナミクスとか、シャシーセットアップ以外の部分も検証させてもらったところ、どんな状況でもけっこう走ります。誰が走らせてもそこそこのレベルにはあっという間に到達できるんじゃないかな、と思いましたね」

●すべてはリセット。誰にでもチャンスがある14年
 では、そんなSF14シャシーが導入される2014年シーズンはいったいどんなレースが展開されるのだろうか。田中エンジニアはこう語った。

「非常にベーシックの部分でハイレベルなところがあると思います。たぶん。ダラーラのF3もそうだと思うんですけど、世界中で売ってきて、速いドライバーが乗ればすぐにタイムが出ちゃう。マニュアルどおりに組み上げてきて、「明日走るから」となってもうまいドライバーが乗ればタイムが出るイメージだと思います」

「ここでまったくリセットになりますが、これまで東條さんがホントいい思いをしてきたんですけど(笑)、来年はそうはいかないかもしれない。私も痛い目にあうかもしれないです(笑)。新しいチームでも、十分チャンスがあると思うんですよね。道具が均一化されますし、マニュアルをしっかり読んで、自分の考えがしっかりしていて、ドライバーが速くてちゃんとフィードバックできるようなチームですと、大いにチャンスがあると思っています」

 ちなみに、田中エンジニアによれば、SF14のフロント足回りは作業性が悪く、今後は今まで以上に事前のシミュレーション等によって“持ち込み”を決めておく必要があるという。

「SF14のフロントまわりのサスペンションはインボードに随分、アンチロールバー、ダンパー、トーションバーがこみ入って入っていて、ほぼアクセスするのが不可能な状況ですので、シミュレーション、あるいはセットアップマニュアルに従ってある程度決めておかないと、思いつきで作業をするような状況ではないですね」

「それはおそらく、世界中が同じ状況で、ドライバーがこう言ったからこういう風にクルマを変える……という時代ではだんだんなくなっていて、メニューを決めておいて、コレとコレをやる、それは次のテストで……という段取りを組んでいかないと、この先時間もありませんし、作業性もあまり良くないので、できないと思います」と田中エンジニア。

 この後、SF14シャシーは早いチームで12月第1週近辺にデリバリーがあり、年内には約半数のチームのファクトリーに到着。残りのチームにも年明け早々にデリバリーされるという。その後、SF14は3回のテストを経て、新シーズンの開幕を迎えることになる。

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