9月20日〜21日に富士スピードウェイで開催される、アジアン・ル・マン・シリーズ第2戦富士。このラウンドには、シリーズを運営するACOフランス西部自動車クラブと昨年コラボレーションを実現させたスーパーGTから、GT300クラスの車両が11台参加することになっている。ACOとスーパーGTとのコラボの先に、GTAが見据えるものとはなんなのか。
昨年のスーパーGT鈴鹿で、ル・マン24時間を運営するACOと、スーパーGTをプロモートするGTアソシエイションはアジアン・ル・マンの振興に向けて提携。今季からスタートしたアジアン・ル・マンには、GT300クラスの車両が参加できることになり、来週の第2戦富士では、GT300クラス車両向けにSGTクラスを設け、スーパーGTの選手権ポイントが獲得できることになった。
この選手権ポイントの付与については、エントラントからはさまざまな意見が出たというが、坂東代表は8日、富士スピードウェイで行われたGTA定例記者会見の場で「日本におけるル・マンというのはやはり認識が違う。アジアにおいても違うものがある。こことの対話を大事にしながら、きちんとしたものを作り上げたい。その第一歩がアジアン・ル・マンだと思う」と、ACOがもつ世界的な規模の注目があるル・マン24時間、そしてアジアとの連携という点で、このコラボレーションの意味を強調した。
近年、スーパーGTはアジア地域における展開を模索している。GT300車両のマーケットとしてや、アジア全体におけるステータスを高め、ひいては日本での価値観を高める狙いがあり、将来タイでスーパーGT300車両におけるレースを開催する計画など、さまざまな交渉を進めている。そんな中で坂東代表は、ACOとの提携はモータースポーツの日本、そしてアジアにおける認知度やステータスを高めるためにさまざまな模索をしていく中での「新たな部分の戦略」だという。
「我々のスーパーGTがドメスティックな大会で終わってしまわないようにしたい。観客数の推移というところでもここで満足する訳ではない。やっぱり7万、8万、そして10万と1戦あたりの入場者数を求めていくためには、新しい考え方をしていかなければならない」と坂東代表。
では、ACOとのコラボレーションの先にある「新しい考え方」とは何か。坂東代表は過去にも記者会見で、何度か「GT500クラスのチャンピオンをル・マン24時間に出場させることはできないか」とACOに提案してきたと明らかにしている。「これについては2年も言っていて、向こうにも足を運んでいる」と坂東代表。
そんな交渉の中で坂東代表は、「予備予選免除で、LMP1、LMP2、LM-GTE車両であればそれを認めるという返事をもらっている。これはまだ内諾ですけど、いただいているのは事実の話。紙の上には出ていませんけど」と坂東代表は、ACO規定車両を使って、GT500王者がル・マン24時間に出場できる可能性が高まっていると明らかにした。ル・マン24時間の出場権は、ガレージ#56車両をのぞくと55台という制約があり、プライベートチームはWEC世界耐久選手権のシーズンエントリーやヨーロッパ、アメリカ、アジアでのル・マンシリーズのタイトルを争い、狭き出場権獲得を目指している。これと同様に、GT500チャンピオンにも出場権を与えるというものだ。
ただ、この提案に対し、GT500に参戦している日本の各メーカーは、ACO規定の車両を作る予算の問題や、チャンピオンを獲得したドライバー、チームと翌年契約しているのか分からないという部分で難色を示したと坂東代表は言う。ファンにとっては夢のある話にも聞こえるが、現状ワークスとしてル・マンに参加しているのはトヨタのみ。また、ワークスとして参加するならば出場権を得ることはそこまで難しくはない。
「ただ、そこで止まってしまったら何もならない。日本のあり方やモータースポーツの交流という部分で、きちんと話合っていくのは大事なことだと思う。今までの日本のやり方だけでやっていくと、難しい部分もある」
DTMドイツツーリングカー選手権との車両規定によるコラボ、そしてACOとのコラボの先には、スーパーGTというシリーズの価値を世界的に高め、さまざまなシリーズと交流することで車両や人との交流を進める狙いがある。グローバルな注目度が上がればメーカーやスポンサーからの注目度も上がり、日本国内での価値も高まるはずだ。来週のアジアン・ル・マン富士、そして14年からの新GT500車両は、その第一歩となる。