スペイン・バルセロナで行われたF1スペインGPを取材した。いくつか気付くことがあったので書き留めておきたい。スペインのカタルニア・サーキットはコース脇に行ってクルマの走りを見るには最適のサーキットだ。いくつもの個所でコースにとても近くまで寄って、走りを間近に見ることが出来る。その結果は……。
今年のF1はなんだかこれまでと違って気が抜けているように感じた。F1の走りを見ながらなぜか考えたが、面白くないと言われている理由が分かった気がしたのだ。
一番大きな理由は、エンジン音が小さいことだろう。実を言うと、私はエンジン音などどうでもいいと思っていた。抜きつ抜かれつの接戦があれば、レースはエンジン音なんて無くても興奮すると思っていたのだ。ところが、実際にコース脇に行ってF1マシンが走る姿を目の当たりにすると、音がないと感動を覚えないということを知らされた。そもそも抜きつ抜かれつの接戦が少ないという事もある。だが、エンジン音が小さいことで、F1そのもののエネルギーが小さいように感じたのだ。
ふたつめは、パワーユニットの性能があまりにも低いこと。それは、今年のエンジンが小排気量になったことと無関係ではないだろう。1.6リッター+ターボチャージャーにERS(エネルギー回生システム)の組み合わせ。それでもエンジン本体の出力は500馬力もあればいいのではないか。ERSを加えても全体で700馬力程度? 上り坂を息せき切って登る姿が苦しそうに見えるのはそのために違いない。出力を上げるには低い数値で規制されている燃料流量をもっと上げるようにすべきだろう。そうすれば、F1の遅いグループがラップタイムで速いGP2に負けるという屈辱的な状況からは抜け出せるのではないか。
新技術を多用し、将来を見据えたパワーユニットを採用したという点は評価すべきだ。しかし、それによってF1の音やパワーといった魅力が削がれてしまうのでは、本末転倒だと思う。
三つ目はタイヤ。こいつが今年のF1の最大のネックかも知れない。ピレリは今年、ターボの巨大なトルクに負けないタイヤとして硬めのゴムを投入した。ところがこのタイヤがとにかく評判が悪い。グリップがない、とドライバーが口を揃える。
フェラーリのタイヤ担当・浜島裕英氏も「滑りまくりですよね」と指摘する。ドライバーで最もはっきりと不平を表したのはフォースインディアのセルジオ・ペレス。「去年の失敗(注・柔らかすぎるタイヤ)から学んだと言うが、あまりにコンサバ過ぎるタイヤになった。もう少ししっかりと走ることのできるタイヤを作って欲しい」と言う。ピレリは、「我々は最適なタイヤを作ってきた。去年の事象に対して過剰反応をしたわけではない」と答えた。
ピレリ・タイヤはF1だけで評判を落としたわけではない。GP2でもドライバーは口々に不平を言う。「走行ペースを変えなければ問題ないが、少しでも前を行くクルマを抜こうとしてアタックすると、すぐにグリップを失ってしまう。このタイヤではまともなレースは出来ない」と。う〜ん。
今年のF1は過渡期と呼んでいいのかもしれない。ただ、過渡期とは正常に戻る途中のことを言うのだが、F1がこのまま行っても正常に戻るかどうかは分からない。エンジン音を大きくするというアイデアは出ていると聞く。しかし、出力の増加を画策する案はまだ聞かない。私は、燃料の流量を今より多くして出力を上げる方向を探した方がいいと思う。タイヤに関しては何とも言えない。解決しなければならない問題だが、安全に関わる事でもある。ここは慎重に、ということだ。
今のF1、解決しなければならない問題は山積してるぞ。
赤井邦彦(あかいくにひこ):世界中を縦横無尽に飛び回り、F1やWECを中心に取材するジャーナリスト。F1関連を中心に、自動車業界や航空業界などに関する著書多数。Twitter(@akaikunihiko)やFacebookを活用した、歯に衣着せぬ(本人曰く「歯に衣着せる」)物言いにも注目。2013年3月より本連載『エフワン見聞録』を開始。月2回の更新予定である。
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