現地ならではの話題を各国の特派員がレポート。今回はイタリア在住の野口祐子氏による番外編をお送りする。フェラーリの革製品を手がけるブランド「スケドーニ」を訪ねて、貴重なF1シートの数々を見せていただこう。

 今回はF1速報webプレミアム会員限定で公開している記事の一部を紹介する。

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「schedoni」──この名前を聞いて、すぐにピンと来る人は、かなりのフェラーリ好き。1977年からフェラーリの特注トラベルバッグを作っているモデナのブランドだ。フェラーリとのコラボレーションは308GTBから始まり、スケドーニ製のトラベルバッグはフェラーリの新車購入オプションに欠かせないもの。高いクオリティでフェラーリ社からもオーナーたちからも絶大な信頼を得ている。

 そんな彼らが、F1のシートカバーを手がけているのは、さらに知る人ぞ知るところかもしれない。

 1982年5月8日、ゾルダーで開催されたベルギーGP予選でジル・ビルヌーブが事故を起こして帰らぬ人となってしまった。安全ベルトの不具合でシートから飛び出してしまったジル。フェラーリは安全性について世間からの非難を浴びることになった。

 あるときスケドーニは、エンツォ・フェラーリから相談を持ちかけられる。

「シートに皮を張ってくれないだろうか?」

 スエードの皮を使うと、摩擦が起き滑りにくくなり座りやすくなるのだ。1983年1月、スケドーニは試作品の皮張りシートをエンツォに見せるためマラネロへと出向いて行った。彼らの工場があるモデナから、クルマで30分も走ればフェラーリ本社がある。

 エンツォはシートの仕上がりに満足した。
「すばらしい! これは、いくらくらいするのかね?」

 スケドーニは試作品ということで、お金のことは考えてもいなかった。少し考えて「このくらいかと思います」と決して高くはない金額を伝えた。

 するとエンツォは「そんなに高いのか! 高すぎる、それでは到底発注はできないな」と言う。スケドーニは質問を返した「それでは、これから何台くらいのシートに皮張りすることになりますか?」。エンツォは「そうだなあ、1年に15~20台くらいだろうかねえ」と答える。

 しばし会話が続き、スケドーニは最後に、こう答えた。

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エンツォの値段交渉術
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