復活したマクラーレン・ホンダの活躍を甘口&辛口のふたつの視点からそれぞれ評価する連載コラム。レースごとに、週末のマクラーレン・ホンダのコース内外の活躍を批評します。今回は最終戦のアブダビGPを、ふたつの視点でジャッジ。
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甘口編
来季への可能性を示した3番手タイム
「今シーズン、ベストのレースだったと思う。とにかく、走っていて楽しかった。レース終盤に、あんなに長い間、ウイリアムズの前でレースできるなんて思っていなかったからね。これは、いい意味で予想外の驚きだ」
レース後のジェンソン・バトンのコメントである。バトンの背後にウイリアムズのバルテリ・ボッタスが追いついたのは、45周目。55周で争われるアブダビGP決勝レースは、チェッカーフラッグまで残り10周もあった。しかし、バトンはボッタスの前でフィニッシュ。その差はわずか0.4秒だった。
このバトンの言葉にこそ、2016年に向けた最終戦のマクラーレン・ホンダの希望を感じた。それはマクラーレン・ホンダのマシンがパッケージとして、着実に進化していたということだ。最終戦にホンダは新しいパワーユニットを投入したわけではない。すでに5基以上投入しているホンダがここで新しいパワーユニットを使用すれば、ペナルティを受けるからだ。しかし、車体には多くの開発部品が搭載されていた。それはデータ収集のための金曜日のフリー走行でしか使用されなかったものもあるが、週末を通して使用されたものもある。
その進化したマクラーレンの車体性能を実現させたのが、非常にコンパクトなホンダのパワーユニットである。確かにその革新的すぎるアイデアに技術が追いつかずに、復帰初年度の今シーズン、ホンダは苦戦を強いられる結果となったが、その方向性に間違いはなかったことを証明したのが、この最終戦アブダビGPだった。
そのことは、新井総責任者のコメントからもうかがえる。
「(サイズゼロ)というコンセブトを変えるつもりはない。われわれのパッケージが完成したら、他チームがコピーすることはできないでしょう」
最終戦でマクラーレン・ホンダのサイズ・ゼロが持つコンセプトにポテンシャルを感じさせたのが、フェルナンド・アロンソのレース終盤の走りだった。
スタート直後にクラッシュして1周目に最後尾に脱落し、さらにドライブスルーペナルティを受けていたアロンソは、17番手で迎えた残り9周、タイヤを交換するためピットストップを行った。そこでスーパーソフトを履いたアロンソは、アウトラップの翌周となった49周目に1分44秒954の自己ベストを叩き出した。
ところが、その後2周に渡って、アロンソのラップタイムは2分台に落ちる。その理由は明らかになっていないが、3周後の52周目に自己ベストを更新する1分44秒796をマークしていることを考慮すると、マシンにトラブルがあったというよりも、回生エネルギーのチャージを行っていたと考えるのが自然だろう。そして、その1分44秒796というタイムは、レース中、3番目に速いファステストラップだった。
もちろん、ほとんどのドライバーの最後のピットストップは24周目から29周目で、そこから31周ないし26周のロングランを行っていたので、6周のショートスティントのアロンソのタイムと単純に比較はできない。ただし、アロンソよりも3周早い44周目にピットインして、アロンソと同じ新品のスーパーソフトに交換したフェリペ・ナッセの自己ベストが1分46秒424だったことを考えると、アロンソの3番目のファステストラップは、何も新品のタイヤだけの恩恵ではなかったのではないだろうか。
自己ベストを出した52周目のアロンソのタイムは、新品のスーパーソフトと2周かけてチャージしたMGU-Kの回生エネルギーとともに、おそらくパワーユニットの出力モードを最大にして走っていたのではないだろうか。シーズン中には信頼性の問題があったので、そのように使用することは許されなかったが、最終戦のレース終盤なら試せすことができた。
「課題はわかっている」(新井総責任者)という部分を、このウインターシーズンの間に克服できれば、上位を目指して戦うことはできる。そのことをアロンソは身をもって示し、ホンダの開発陣の士気を高めたかったのではないだろうか。このチームには、まだまだポテンシャルは、ある。
ホンダコラム 辛口編:少なくともシーズンは終わった
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