スーパーGT第1戦岡山の決勝レースで、ファイナルラップまでZENT CERUMO SC430と激しいバトルを展開、2位となったRAYBRIG HSV-010の山本尚貴は、レース後悔しさのあまり涙に暮れることになったが、「今回の経験も今後のレースに活かしていかなければいけない」と優勝に向けて語ってくれた。
今季開幕戦となるスーパーGT第1戦で、RAYBRIG HSV-010は早めのアタックが功を奏し予選2番手グリッドを獲得。今季、伊沢拓也と山本という若手コンビも3年目を迎え、ホンダHSV-010の開発も担当。昨年のJAF Grand Prix FUJI SPRINT CUPでは伊沢が優勝も飾ったが、シリーズ戦ではいまだ未勝利。優勝に向け前半スティントでは伊沢が追い上げをみせ、絶妙のピット作業で逆転。冷えたタイヤで山本が素晴らしいアウトラップを披露し、トップに浮上していた。
後半スティントを担当した山本に、先にピットに入りタイヤも温まった状態のZENT CERUMO SC430の立川祐路が接近するも、山本はラップダウンのマシンをうまく活用し、立川の接近を許さない。しかし、60周めあたりから少しずつZENT立川が山本とのギャップを削りはじめ、山本は69周目に立川の先行を許してしまった。
まだ山本がスーパーGTに参戦して1年目だった2010年、セパン戦でトップを争っていたRAYBRIG HSV-010。今回同様、山本は一度トップを譲った後、前を走るマシンを追い抜こうとしてクラッシュ。ペナルティを課され、悔し涙を流した経験がある。しかし、それを糧にレースを重ねてきた山本は、この岡山では冷静にZENT立川とのギャップを再び切り崩し、残り2周というところで絶妙のマシンコントロールで立川をパス。チェッカー間際の逆転劇に、サーキットは沸き立った。
迎えたファイナルラップ。「最終ラップではこのまま終わるわけにはいかないと思い、どちらも一杯一杯という状況の中、最後は意地と意地とのぶつかり合いだった」という立川がヘアピンで再び前へ! 一瞬のスキを突かれた山本は、最終コーナーまで抵抗を試みるも、再逆転はならず2位でチェッカーを受けた。
「最終ラップで最後まで抑え切れていれば勝てたということを考えると、悔しい思いの一言に尽きます。伊沢さんも含め、みんながミスなくレースをしてくれた中で、あそこまでいっていたのに優勝できなかったということについては申し訳ない気持ちで一杯ですし、最終ラップの件よりも、そこまでのレースペースやGT300のかわし方など、自分としては課題が残りました」と表彰台でも悔しい表情で、涙を流した山本は語る。
「GT300をかわす時にタイヤかすがついてしまって、本来のパフォーマンスが出せない状況になってしまい、抜かれてしまったということが自分にとっては課題だと思っています。一度抜かれてしまってから諦めることなく走り、一度は抜き返せたということは良かったのですが、あと1周抑え切れていたら勝てていたと思うと、本当に悔しいです」
「申し訳ない気持ちで一杯」と山本は思いを吐露したが、チームメイトの伊沢は「僕たちにとっては、すべてを尽くしての戦いができたということで、結果的にはいいレースだったのだと思います」と山本を励ました。
「今回走っていて、ああいう状況になっても冷静に走れていたとは思うし、そういうことは過去の自分にはなかったことだったので、少なからず成長できたのかなと思います。今回の経験も今後のレースに活かしていかなければいけないと思いますし、今回完璧な仕事をしてくれたチーム、そして監督に早く恩返ししたいです」と山本は前を見据えた。
今回のような経験は、実績が大きなファクターとなる今のスーパーGTでは、トップドライバーの誰もが通った道でもある。実直な性格で成長を続ける山本と、エースとして風格を増す伊沢のコンビが悲願の優勝を遂げる日を期待して待ちたい。
