9月19日から21日にかけて、スペインのリカルド・トルモ・サーキットでGTワールドチャレンジ・ヨーロッパ(GTWCヨーロッパ)の2025年シーズン第9戦が開催された。スプリント・カップにおける第5大会/今季最終戦となったバレンシアでのレースは、激しいタイトル争いと前例のない裁定により劇的な週末となった。
■快挙のはずが……歴史的勝利は幻に
土曜日のレース1はオープニングラップから波乱が起きる。ポイントリーダーの32号車BMW M4 GT3エボ(チームWRT)が、ターン2でコントロールを失った66号車アウディR8 LMS GT3エボII(トレゾア・アテンプト・レーシング)に衝突され、無念のリタイアを喫したのだ。
また、これに連鎖して複数のマシンが接触しダメージを受けるなか、エミル・フレイ・レーシングの69号車フェラーリ296 GT3(ティエリー・フェルミューレン/クリス・ラルハム組)はトップ5圏外から表彰台圏内へと浮上。さらに中盤のピットストップを経て後半戦で首位に立つと、2番手の63号車ランボルギーニ・ウラカンGT3エボ2(GRTグラッサー・レーシング・チーム)に14秒以上の差をつけてトップチェッカーを受けた。
この結果69号車フェラーリは、ゴールドカップ参戦車両として史上初めてスプリント・カップレースで総合優勝を果たすという歴史的な快挙を達成したかに見えた。しかし、この勝利は一夜にして剥奪されることとなる。
レース後の審査により、ラルハムが黄旗区間であったターン9を含むセクター2で自己ベストタイムを更新したことがGTWCヨーロッパ規定第27.1条に違反するとと見なされ、69号車フェラーリはドライブスルーペナルティに相当する26秒のタイム加算を受け取ることに。これにより総合優勝はルカ・エングストラー/ジョーダン・ペッパー組の63号車ランボルギーニに移り、ゴールドカップのクラス優勝も総合2位に入った58号車マクラーレン720S GT3エボ(ガレージ59)のトーマス・フレミング/ルイ・プレッテ組に渡ることとなった。
なお、このイエローフラッグ違反による同様のペナルティは、トップ10フィニッシュ車両の半数以上を含む多数の車両に適用された。優勝を剥奪された69号車フェラーリは、最終的に48号車メルセデスAMG GT3エボ(ウインワード・レーシング)に次ぐ総合4位/クラス2位となっている。
シルバーカップでは、コービー・パウエルズ/ジェイミー・デイ組21号車アストンマーティン・バンテージAMR GT3エボ(コムトゥーユ・レーシング)がペナルティでクラス優勝を失ったものの、後続のライバルたちがリタイアしたためレース2を残してタイトルを確定させた。

■WRTとウィーツがタイトルを奪還
波乱の土曜日を経て、日曜日のレース2はタイトル争いを締めくくる最終決戦の場となったが、ここでは前日にリタイアしたケルビン・ファン・デル・リンデとシャルル・ウィーツのペアが優勝を飾り、ドライバーズチャンピオンの栄冠を手にした。
ファン・デル・リンデ駆る32号車BMWは4番グリッドからレースをスタート。序盤から積極的にオーバーテイクを仕掛けていき、ターン1で次々とライバルをオーバーテイクしていく。スタートから15分後には2番手に浮上すると、首位を走る63号車ランボルギーニも同じくターン1で抜き去りトップに浮上した。
ピットストップ後は32号車BMWのステアリングを引き継いだウィーツが、GRTランボルギーニからプレッシャーを受けながらもレースリーダーの座を守り抜き最後は0.885秒差で逃げ切りに成功した。この結果、ウィーツは2020年からの3連覇に続き自信4度目となるスプリント・カップ王者の栄冠を、ファン・デル・リンデはGTWCヨーロッパで初のドライバーズタイトルを獲得している。
プロカップ以外のクラスでもシリーズチャンピオンが決定した。ゴールドカップでは、エミル・フレイ・レーシングのフェルミューレン/ラルハム組がレース2でシーズン4勝目を挙げ、前日に総合優勝剥奪の憂き目に遭いながらもチャンピオンシップを制した。
ブロンズカップクラスはダスティン・ブラットナー/デニス・マーシャル組(ケッセル・レーシング/74号車フェラーリ296 GT3)が、土曜日のクラス優勝による12ポイントのリードを活かし、レース2でクラス優勝を果たしたライオンスピードGPのライバルを抑えて王座に輝いている。
2025年のGTWCヨーロッパも残すところあと一戦のみ。第10戦はエンデュランス・カップの最終戦として10月10~12日の週末にスペイン、バルセロナのカタロニア・サーキットで開催予定だ。



