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ル・マン/WEC ニュース

投稿日: 2021.08.17 18:20

ハイパーカー規定で“戦略”要素が復活。ル・マンの直線でキーとなる“マニュアル・コースト”【中嶋一貴&小林可夢偉インタビュー】

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ル・マン/WEC | ハイパーカー規定で“戦略”要素が復活。ル・マンの直線でキーとなる“マニュアル・コースト”【中嶋一貴&小林可夢偉インタビュー】

 8月16日、トヨタGAZOO Racingから2021年のWEC世界耐久選手権第4戦/第89回ル・マン24時間レース(8月21〜22日決勝)に参戦する中嶋一貴と小林可夢偉が、ル・マン現地からリモート形式の記者会見で日本メディアの質問に答えた。

 今季、ル・マンを含むWECのハイパーカークラスにトヨタが投入したル・マン・ハイパーカー(LMH)規定の新型マシン、GR010ハイブリッドでのサルト・サーキット初走行となった15日のテストデーを振り返るコメントの中からは、昨年までの規定=LMP1時代とは少し異なりそうな“戦略”の存在が見えてきた。

■グリッケンハウスは「立ち上がりからエンドまで、総じて速い」

「TS(030/040/050ハイブリッド)もそうでしたけど、やっぱりル・マンで走るときが一番クルマのパフォーマンスを発揮できるというか、運転していて『やっぱりル・マンを走るために作られたクルマなんだな』と思うくらい、他のサーキットと比べて良いフィーリングで走れました」

 GR010ハイブリッドでの初走行となったル・マンについて、8号車をドライブする一貴はそう口にした。LMHでは単一仕様となる空力についても、“最大のターゲット”となるコースで想定どおりのパフォーマンスを発揮できている、ということでもある。

 昨年、レースウイーク最初のフリープラクティス1でTS050ハイブリッドがマークしたベストタイムは3分21秒台。今年のテストデーにおけるGR010ハイブリッドのベストタイムは3分29秒台と、走り出しのセッションで比較すると8秒程度タイムは遅い。

 もちろんこれはLMHの規定により、LMP1比でパワーの削減や重量の増加があったためだが、7号車をドライブする可夢偉は現状のタイムを「このカテゴリーの基準」と表現、事前のイメージどおりだという。

「去年と大きく違うのが、ガソリンを積んでいる量。去年が(1スティントの最大規定量が)35kgくらいだったのが、今年は(満タンで)65kgとかになるんです。予選でこれ(燃料)を減らしたらどうなるのか。バッテリーを使える容量は去年より減っているので“クオリファイ・モード”は基本的にはないのですが、その代わり今年は重量を軽くできる(幅が大きい)。そこが、とても興味深いところです」(可夢偉)

 可夢偉のこのコメントは、彼らがまだ本格的な予選シミュレーションを行なっていないことも示唆している。

 また、一貴によれば、パワーと車重の規定変更から、昨年に比べてもっとも違いを感じるのはやはり加速区間だという。

「去年は、ポテンシャルをフルに使っている瞬間は1000馬力以上あったのが、今年はコンスタントに600何馬力で走っている状態なので、やはり加速区間のラップタイムが一番大きな違いです。でも、タイム的にはこれくらいの違いがあるのがハイパーカーのルールだと思っています」と、こちらもパフォーマンスダウンとラップタイムの低下は、イメージどおりにリンクしているようだ。

 ちなみに一貴はグリッケンハウス・レーシングのノンハイブリッドLMH、グリッケンハウス007 LMHと、テストデーのコース上で何度か遭遇したという。テストデーのトップタイムを奪ったグリッケンハウスとGR010ハイブリッドの違いが気になるところだが、「基本的に、コーナーの出口からストレートエンドまでは、総じて向こうの方が速い」と一貴。

「最初のうちはコーナーで苦労していたようですが、コンディションが良くなってくると向こうも仕上がってきて……基本的にはコーナーとブレーキングはこちらの方が少しいいのですが、コーナーの脱出からストレートエンドまでは総じて向こうが速いので、もしバトルになって(彼らが前にいて)相手がこっちをフタしようと思ったら、いくらでもできてしまう」

「実際、ラップタイムも近いですし、できれば僕が乗る時は近くにいて欲しくない、というのが正直な感想です(笑)」

テストデーでグリッケンハウス007 LMHと接近した状態で走行する8号車GR010ハイブリッド
テストデーでグリッケンハウス007 LMHと接近した状態で走行する8号車GR010ハイブリッド

 テストデー時点のBoP(性能調整)は前戦モンツァから実質的には変わっていない。今季はグリッケンハウス、そしてLMP1マシンのアルピーヌA480・ギブソンと接戦となる場面もあるが、テストデーを終えた段階では「どのチームもまだ手の内を見せていないと思う。本戦になってみないと分からない」(一貴)という状況だ。

「正直、いまの段階で周りはあまり気にしていません。それよりも自分たちがちょっとでも(クルマを)良くできるかという部分に個人的には集中してやっています。この先、路面コンディションもすごく変わっていくし、そこをしっかり見ながらレースに向けて合わせ込んでいく作業をやっていければと思います」と可夢偉も冷静に語っている。

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