初夏のもてぎ苦難の週末
全日本スーパーフォーミュラ選手権の本年度2大会目となる第3戦および第4戦が、4月18日(土)~20日(日)にかけ、栃木県のモビリティリゾートもてぎで開催された。
前回の鈴鹿大会では、第1戦で勢い余ってコースアウトしてしまい、翌日の第2戦も車両を壊してしまった余波を受け、結果が残せなかったが、一定の知見を得ることができた。今回は鈴鹿大会で得たデータをもとにして、もてぎのコースレイアウトに合わせた調整を行い、車両を持ち込んだ。
もてぎ大会は昨年まで真夏の8月に開催されていたが、本年は晩春での開催となり、気温や路面温度の違いをいかに受け止めるかが課題になると思われた。だが、週末のもてぎは快晴となり、気温23度、路温40度にも達する初夏さながらの状況でのレースとなった。
金曜日フリープラクティス
金曜日に1時間ずつ計2回行われたフリープラクティス(FP)を走り始めた三宅選手のラップタイムは、想定よりも上がらず、チームは急逮セッティングを見直しながら周回を重ねた。しかし経験の多い一瀬トラックエンジニアにとっても、車両は不可解な反応しか示さず、出走した22台中FP1回目は14番手、FP2回目では20番手と、ポジションが伸び悩んだまま公式予選を迎えることになった。
Round.3公式予選
翌19日(土)もモビリティリゾートもてぎは快晴。三宅選手は9時35分から始まった公式予選Q1B組に出走した。
公式予選に向け、チームは大幅にセッティングを変更し三宅選手をコースに送り込んだが、車両の操縦性は好転せず、三宅選手のラップタイムはQ1B組トップから1秒344遅れとなる1分32秒875に留まり、Q1B組での出走11台中11番手に終わり、Q2進出は叶わなかった。Q2の結果を受けて、最終的に三宅選手のスターティンググリッドは、出走22台中21番グリッドからに決まった。
Round.3決勝
14時50分、快晴のもとで第3戦の決勝レースがスタートした。三宅選手はクラッチミートで一瞬加速が鈍り、後方10号車Juju選手の先行を許した。しかしその後加速し1コーナーアウト側から 20号車高星選手をオーバーテイク。スタートに失敗した19号車小林選手、コースオフした64号車佐藤選手、2コーナー先で車両を止めた39号車大湯選手の前へ出た。ここで停止車両を回収するためセーフティーカー(SC)がコースインした。この時点で三宅選手は18番手となっていた。
レースは4周目で再開されたが三宅選手のペースは上がらず、レース中200秒間にわたりパワーアップができるオーバーテイクシステム(OTS)が作動しないというトラブルが発生。前の車両をオーバーテイクすることも、後の車両からのオーバーテイクを防ぐことも困難な状況に陥ってしまった。
4周目でレースが再開された際、OTSを使った後方車両2台にオーバーテイクを許しポジションは20番手となり、7周目にOTSを使わず10号車Juju選手を抜いて19番手に順位を上げるも、OTSが使えないため、前を走る20号車高星選手のオーバーテイクには至らない。タイヤ交換が可能となる10周目に上位陣がピットインしたが、三宅選手はOTSが使用できないため、同じタイミングでのピットインでは順位を上げられないと判断し、チームはピットインを遅らせる作戦を指示する。
しかし、三宅選手はトップ争いを邪魔したくないとして、11周目でのピットインを決意。ピットでタイヤ交換を行い、18番手でコースに復帰した。その後、18周目にタイヤ交換のためピットインした19号車小林選手を抜いて17番手に上がった。
28周目には前方を走っていた15号車岩佐選手がコース上で停止したため三宅選手のポジションは16番手に繰り上がったが、29周目に19号車小林選手が追いつき、オーバーテイクを許して17番手となり、そのまま33周を走り切りレースを終えた。
Round.4公式予選
翌20日(日)のモビリティリゾートもてぎは、薄く雲がかかり、蒸し暑い気候となった。前日の結果を踏まえて、チームは今まで手を出していなかった領域にまで踏み込み、セッティングを変更。第4戦に備えた。
公式予選Q1B組を走り出した三宅選手は、車の操縦性改善を感じ取るもタイムは伸びず、Q1B組のトップから1秒007遅れの1分33秒202となり、出走11台中10番手でQ2進出はならなかった。
Q2の結果を踏まえ、最終的に三宅選手の第4戦決勝レースのスターティンググリッドは、20番グリッドからと決まった。
Round.4決勝
14時55分、気温20度、路温24度と、前日よりは低い温度コンディションで37周の第4戦決勝レースがスタートした。
このレースでは今シーズンからの規則変更により、従来できなかったスタート直後のタイヤ交換義務消化が可能となっている。三宅選手はスターティンググリッドからフォーメーションラップを始めようとしたがエンジンがストールしてしまい、再始動後に改めてフォーメーションラップに入ったものの、規則により最後尾スタートとなってしまった。
スタート直後、三宅選手は鋭い加速を見せ、10号車Juju選手と29号車平良選手の間に飛び込んで順位を上げ、1コーナーに進入しながら、前を行く20号車高星選手の前へ出ようとした。ところがイン側後方から29号車が20号車に追突、そのまま三宅選手の車両のノーズに接触しながらコースオフした。三宅選手はコースアウトし、フロントウイングを壊しながらも、走行を続けた。
ここでコースアウトした車両の回収のためSCが導入されたがタイヤ交換義務の消化は1周目から可能となっているため、上位陣は一気にピットヘ向かった。車両破損が無ければ、上位陣とは異なる戦略を採る選択肢もあったが、車両の操縦性に異常を感じていた三宅選手は上位陣と同じタイミングでピットインせざるを得なかった。
ピットでチームはタイヤに加えてノーズコーンの交換を行い、三宅選手をコースヘ送り返した。三宅選手は19番手でコースに復帰したが6周目にSCが退去しレースが再開されると、ポールポジションからスタートし、ピットイン後のタイヤ脱落により遅れていた3号車山下選手が追いついてきて、オーバーテイクを許したので、ポジションは20番手となった。
その後、三宅選手はギアのトラブルで遅れた1号車坪井選手と19号車小林選手、28号車小高選手の前へ出て、16番手まで順位を上げた。しかし30周目にはフレッシュタイヤを装着した28号車小高選手、32周目には8号車福住選手に抜き返され、最終的には18位でレースをフィニッシュすることになった。
ドライバー:三宅淳詞コメント
「前戦の鈴鹿では成績は残せませんでしたが、ロングランでは良い感触が得られていました。今回のもてぎは鈴鹿とコースレイアウトも違いますし、例年開催される季節とも違うということを踏まえ、チームと打ち合わせを行いました。鈴鹿で良かったところをセッティングに反映させ持ち込んだのですが、走り出しからうまく走れず、ラップタイムが上がりませんでした」
「原因が分かれば何とか対処できますが、まったく原因が分からないというのが現状です。この週末、車のセッティングをさまざま変更し、良くも悪くも挙動は変わりましたが、どうしてもタイムが伸びず順位を上げられませんでした。昨年より明らかに車は良くなっているのに、ラップタイムにつながらない原因を、早く見つけないといけないと考えています。次の大会に向け、諦めずに頑張ります」
監督:塚越広大コメント
「前戦の鈴鹿で良かったところもあったので、その流れでもてぎ大会に向けた準備を行いました。実際にフリー走行では手応えがあったのですが、そこから本番に向けて車を良くすることができず、むしろ少し悪くなってしまいました。セッティングもいろいろと確認したり、変更したりしましたが、なかなか良い改善策が見つからないまま2レースが終わりました」
「全体的なパフォーマンスが足りず、正直なところ悩ましい週末でした。次戦オートポリスに向け、エンジニアとしっかりと話して、最初から各部位のチェックをやり直し、対策と準備をした上でレースウィークに臨みます」
トラックエンジニア:一瀬俊浩コメント
「鈴鹿大会でのクラッシュ後、車を仕立て直して良い状態に仕上げ、今回は上位争いができるように、去年のもてぎで悪かった部分を直して持ってきました。しかし、フリー走行を走り出したところ、まったくタイムが上がらず苦戦しました。第3戦ではOTSが使えず、追い抜きの防御もできずに順位が下がってしまいました。さらに先行車の乱気流を受ける位置でペースも上がらず、かなり辛いレースになってしまい、ドライバーには申し訳無く思っています」
「第4戦はスタート前からエンジンが止まってしまったり、スタート直後に後ろから接触されてしまったりと、流れがつかめませんでした。他にも接触の影響でブレーキのダクトが破損するなど様々な要因はありましたが、根本的な問題は解決できないままの週末でした。とにかく一度すべてを見直して、次戦のオートポリスはまずはQ1通過を目指し、準備していきたいと思っています」