やがて雨がやみ、路面はドライへ。それでも一貴への後方からのプレッシャーがやむことはなく、4強僅差接戦の状態が続いていく。次第に4番手オリベイラが離れるも、トップ一貴が2番手ロッテラー、3番手デュバルを大きくは引き離せないままレースは後半に突入。

 だが、ピットストップ攻防を経ても一貴は首位の座を決して手放しはしなかった。僚友にして最高の好敵手でもあるロッテラーからの追撃を最後まで封じ続け、一貴は見事、ポール・トゥ・フィニッシュを成し遂げる(2位ロッテラーとの最終タイム差は1.812秒)。

 1~4位のオーダーは、ピットストップでの変動を除けば1周終了時のまま不動だった。一貴に関しては右フロントタイヤがすぐには外れず一瞬ヒヤリとしたピットタイミングでも首位を譲っていないため、全周回首位、ポール・トゥ・フィニッシュの完勝だ。

強敵外人軍団相手に僅差で快勝した中嶋一貴
強敵外人軍団相手に僅差で快勝した中嶋一貴

 決勝ファステストラップ(FL)をロッテラーが記録したため、ハットトリック(ポール+優勝+FL)やグランドスラム(ハットトリック+全周回首位)ということにはならなかったが、決してセッティング万全ではないなか、ちょい濡れでもドライでも強敵3人を完封して勝った内容は極めて秀逸といえるだろう。

 もちろん一貴はこれ以降も多くの好レースを演じているし、今現在以降も演じていくドライバーだ。だが、このレースこそは中嶋一貴というドライバーの凄みを凝縮して語れる名レースだった。速いだけではなく、安定したラップタイムを刻めることももちろんとして、コンディション変化にも適切に対応でき、後方からの強大なプレッシャーにも屈することなく、目立ったミスをせずに走りきれるドライバー、それが中嶋一貴なのだ。

 F1レギュラー参戦を経て、2011年からSF(当時FN)を主戦場とした一貴は、これがもてぎでの初優勝。「僕が帰ってきてから、もてぎは外国人が速いんですよね。何かっていうのは特にないと思うんですけど、なんでしょうね」と語りつつ、「簡単なコースじゃないので、そこで勝てたのは自分にとって大きな自信になりました。特に今回はレースに向けての不安要素もありましたし、路面コンディションも不安定だったので、そのなかで勝てたことは大きいです」と、この1勝の価値をかみしめていた。

 この頃からである。“中嶋一貴”という日本屈指の現役トップドライバーの説明に“偉大なる日本人初代F1フルタイムドライバー中嶋悟さんの長男”というフレーズを使わなくてもよくなったのは。

 一貴は既に前年にトップフォーミュラ王座を獲得してもいたが、最初から最後まで緊迫感あふれる好内容の戦いの末に強敵たちを退けて難コースもてぎを初めて制した2013年SF第4戦、このレースこそは本当の意味で一貴の評価が確立したレースであった。

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