そして国本は第3戦富士からモノコックを変えたニューマシンとともに、安定して上位フィニッシュを重ね、タイトルが掛かったこの最終戦までたどり着いた。12人という前代未聞のタイトル候補者の中で、国本が抜け出すことになった理由をひとつ挙げるとするならば、この最終戦でも見せた、国本の強い意思だ。
「レース1のスタートがなかったら、チャンピオンはなかったと思うし、それだけ、あのスタートに懸けていた。本当にプレッシャーのかかるあの場面で最高のスタートができて、『もってるな』と(笑)。それは冗談ですけど、そのスタートのために不安があった部分を、トヨタとチームが解決しれくれたのも、あの好スタートができた要因だと思います」

レース1のスタートが、国本にとってのターニングポイントだった。立川も「オープニングラップを終えて戻ってきたときに、国本は雄叫びを挙げていた」とその時の状況を振り返った。
そのレース1では、チームメイトの石浦にも男気を感じる場面があった。実は石浦はレース中に右リヤのアンチ・ロールバーが折れるという、まさかのトラブルが発生していたのだ。石浦はトップの2台からコンマ2秒遅れるペースで、序々に離されての3位。タイトル獲得が一気に遠のいてしまったが、レース後の会見でも、石浦はそのトラブルを言い訳にすることはなかった。
国本と石浦の男気、そして、そのドライバーに応えるチーム。2年連続ドライバーズ・チャンピオンを生み出した背景には、お互いの厚い信頼関係があった。
