TRD側もトラックでの評価メニューなどを東條エンジニアに一任。必要な開発パーツも、現場の声を聞きながら進める好循環ができていたという。
「僕の方からも『こういうパーツを作ってくれないか』『こうしてくれないか』という要望を出して、そのすべてにTRDが開発で応えてくれた。まだまだやりたいことはあるけど、当初の予定よりもプラスアルファくらいのメニューはこなせました」と、東條エンジニアは順調だった開発の背景を話した。
テストの時間は決して多くはない。開幕までの日程、使用できるサーキットの走行時間を逆算して、限られた時間内でセットアップを進めるのは、まさにトラック・エンジニアの腕の見せどころだ。
WAKO’S山田健二エンジニアも、「TRDの開発陣が、まずはチーム側の意見を徹底的に聞きましょうと。ヒアリングをしましょうと。その中でTRDは何ができるのかと。役割分担をして、そのまとまりは非常に強かった。TRDのシャシー設計、エンジン設計、そしてチーム側の6人のエンジニア、そしてメカニックがとにかくたくさん話し合って、一体となって開発してきた。そこでベテランの立川(祐路)選手がサーキットで評価して、ウチの大嶋和也も含めて各チームのドライバーの意見も集約できた」と、開発の経緯を話す。
LC500はクルマやパーツの開発者であるTRD、そしてチームのエンジニア、開発車のステアリングを握った立川祐路、石浦宏明のドライバー側の意見と、三者の役割をきっちり分けて効率的に開発が進められてきたことが伺える。
スーパーGTはレクサス、ニッサン、ホンダと3メーカーのビッグネームがあり、どうしても新車開発はメーカー主導になりがちだ。現場のチームが求めていることと開発者の思惑にズレがあったり、メーカー側の一方的な指示があり、そして同じ陣営内のチーム間に壁があることは、これまでどの陣営からも聞こえてきていた。しかし、今年のレクサス陣営からは気持ちが悪いほど、そういった不満の声が聞こえてこない。
もちろん、これからシーズンが進み、チャンピオンシップへの意識が高まってくればまた、チーム間の関係、陣営内の空気も変わってくるが、とにかく今はレクサス陣営に隙が見つけられない。
「セットアップはだいたいやり倒しているからね」と、東條エンジニアが笑う。
桜満開の岡山で花開いた、トップ6独占というレクサスLC500のパフォーマンス。今年のレクサスの桜は、夏まで咲き続きそうな勢いだ。