フロントロウを独占。予選ではニッサン復活が印象づけられた。ニッサンの松村基宏総監督は「昨シーズンは、中回転域にトルクの山があったのは事実です。いま(のエンジン)はもう少しトルクがフラットで、低速も空気がよく入って、高速では残ガス率が低いんじゃないかと思います」と語った。エキゾーストの取り回しも変更されているようで、ピークパワー重視から中低速トルク重視に開発方針を変えたようだ。
空力についても「我々は去年、敏感さに苦労しました。フリックボックスの風の流れを鈍感にしたイメージです」。土曜朝の公開車検で初めて目にすることになったのは、ホイールハウス内のカナード状のパーツ。スプリッター側面の狭いエリアにカナード状のパーツが2段構えで並んでいる。
車高変化の影響をあまり受けずにダウンフォースを確保しつつ、背後に控えるラテラルダクトへの流れを促進するのが狙いか? エンジンも空力も性能向上を果たしつつ使いやすくするのがコンセプトのようだ。ウエットの決勝では、その特性がドライバーを助けたかもしれない。
一方、レクサス勢のドライバーからはパワーへの不満が漏れてくる。予選リザルトでも決勝リザルトでもNSX、GT-Rに対して劣勢に立たされている状況が明確だ。エンジンは昨年同様年間2基までの使用となっているので、開発で巻き返すのはシーズン折り返し前後まで待たなければならない。
しかし、だからといって今シーズンを通じてこの状況が固定されてしまうかといえば、そうではないことが次のコメントから想像される。ニッサンの松村総監督は「いまのGT500ではコンプレッサーサイズが規定されています。気圧の低い所にいくと送れる空気の量がそこで決まってしまう」と明かしてくれた。
燃料流量が決められたなかで、いかに燃焼効率を高めて大きなパワーを取り出すかが勝負のGT500にあって、開発が進み希薄燃焼を実現したことでコンプレッサー容量が不足する領域にまで達しているということだ。ちなみに、16年にコンプレッサー容量が不足したため、3社で検討してコンプレッサーサイズを上げたという背景がある。それでも不足してしまうぐらい熱効率競争が進んでいる証明でもある。
コンプレッサー容量の限界に達しているとなると、予選一発、短い時間エンジンに負荷をかけブーストを上げてパワーアップする、F1で言うところのパーティモードは、標高が高い場所にある気圧の低いサーキットでは使えないということになる。ブースト圧を上げたくても通常モードでコンプレッサーの限界まで使っているからだ。第2戦、第5戦の舞台である富士と第6戦のオートポリスは標高が高い。また、もうひとつ、この後は高温下のレースが続くため吸気温度が高くプレイグニッション等の懸念があるため、いたずらにブーストを上げられない。
つまりGT‐RとNSXが備えるパーティモードは、標高と気温の条件が整う最終戦もてぎまで封印される(あるいは使うにしても上げ幅が少ない)可能性が高い。レクサス劣勢もまた、開幕戦限定である可能性が高い。それだけにNSXが落としたポイントはその数字以上に大きいことがここから推測される。フロントに搭載されているハンデウエイトも高速コーナーでは運動性悪化につながることが予想され、その点でも岡山の条件はNSXに最適だった……。
