またブリーラムにおけるスポーツ振興は、単に経済効果だけには留まらない。知名度の向上、そして街の人たちの一体感、地元意識の高揚といったさまざまな波及効果がある。まず非常にユニークで、筆者も初めて行ったときから驚いたのが、ブリーラム市民の多くの人々が、チームのユニフォームを“普段着”として使っていることだ。
その理由は、ユニフォーム自体の値段の安さにある。通常、Jリーグチームであればレプリカユニフォームは1〜2万円ほどする。選手名等をフルマーキングしようとしたら2万円は覚悟しなければいけないだろう。しかしブリーラムでは、そのまま購入すれば2000円以下、フルマーキングしても3000円でお釣りが来るのだ。その安さとスタイリッシュさゆえに、スーパーGTでブリーラムを訪れる関係者やファンもよく購入している。
現在ブリーラム・ユナイテッドFCのユニフォームは、タイ代表のユニフォームも手がけるワリックス社というタイのメーカーのものを使っているが、ファッション性も非常に高く(ここは非常に重要なポイント)、吸湿・速乾性もきちんとある。ほとんどの時季を半袖で過ごすブリーラムの人々にとって、これほど便利な服はない。
「ユニフォームは、ブリーラムの人々にとって誇りの象徴になると思っている。もちろんタイ・リーグ1のチャンピオンとしての誇りもだ」とチドチョブ氏はその理由を教えてくれた。ちなみに、この話を聞いた東京都内でのイベントの際も、チドチョブ氏はチームのユニフォームを着ていた。
「そしてユニフォームは、ブリーラム市民の平等性、希望の象徴でもあるんだ。だからお金がなくても買えるように、500バーツ程度(約1500円強)の値段にした。だからブリーラムでは、指導者でも労働者も同じユニフォームを着ることで、すべての市民が平等なのだ」
その街の誇りを胸にでき、かつ市民のチームへの熱も高まる。タイ・リーグ1のチームのユニフォームは総じて値段は安めではあるが、多くの人々にユニフォームを着てもらうという戦略は、非常に巧妙なものと言えるだろう。



