さらにサッカーでは、街の中心部にあるチャン・アリーナの魅力、そしてブリーラム・ユナイテッドFCの強さが街の雰囲気をひとつにし、そしてタイ国内はもちろん、海外からもアウェイサポーターを呼び寄せている。そしてこうしたスポーツ振興を行いたい場合、そのスポーツのための施設──“ハコ”が重要になることを、チドチョブ氏は良く分かっている

 本拠地となるチャン・アリーナは、先述のとおりサンダー・キャッスル・スタジアムとして2011年に開業した。32600人を収容するヨーロッパスタイルの美しい専用スタジアムで、日本から訪れたJリーグサポーターからも賞賛の声を聞く。観戦のしやすさが人気の源なのは言うまでもない。日本では複合的な陸上競技場で済ませようという自治体も多いが、それではサッカーの魅力は十分伝わらない。

 また、チャン・インターナショナル・サーキットも、グランドスタンドからコースのほぼ全域が見渡せる、世界でも珍しいタイプのサーキットだ。平地にあり、アップダウンがないことを逆手にとったレイアウトとも言える。施設面でも、スーパーGT関係者からの評価は高い。さらにサーキットのゲート、そしてスタジアムの横にはチェーン店を含めた飲食店街、さらに地元市民に愛される屋台街も用意され、週末にはドラッグレース等に興じる若者たちが集い、活気ある夜が過ごされている。

 街に経済効果と活気、そして世界に向けた知名度の向上を果たせるのがスポーツ……というのがチドチョブ氏の意見だ。いま、ブリーラムは“スポーツシティ”としてタイ政府の後押しも受けながら、飛躍しようとしている。

「10年前、もしあなたが私に『どこから来たのか?』と聞いて、私が『ブリーラムから来た』と答えたとしよう。でも、多くの人たちはブリーラムがどこにあるのかも分からなかったはずだ。でも今はあなたも、ブリーラムがどこにあるか分かるだろう」とチドチョブ氏は誇らしげに言った。

 スーパーGTの関係者によれば、チドチョブ氏は日本からスタッフが訪れても、高級店に連れて行くわけではなく、街中の屋台のような場所で一緒に食事をとる人柄だとか。地元の発展を願い、政治で培った手腕をいま発揮している。

「スポーツは、経済も社会の問題も解決してくれると思っているし、ブリーラムの人々の暮らしぶりも大きく成長させてくれると確信している。そしてそれを証明したいんだ」

 こういったブリーラム、そしてタイの試みは、いまや着実に実を結びつつある。もちろん経済面での波及効果はチームにも及び、その国のスポーツのレベルも大幅に向上させる。日本ではハードルも多いだろうが、こういった試みの例はまだあまりない。ただ、日本でも大いに参考にしたい例と言える。

メインストレートもスタンドからパノラマ撮影したチャン・インターナショナル・サーキット
パーティにはレースクイーンも登場。MotoGP、スーパーGT開催をアピールした
パーティにはレースクイーンも登場。MotoGP、スーパーGT開催をアピールした
ブリーラムで開催されたTCRアジアシリーズの様子
スタジアム、サーキットからもアクセスできるモールでは、チェーン店のほか週末には屋台も出て賑わいをみせる。Jリーグスタジアムでも実現したい光景だろう

本日のレースクイーン

優羽ゆうは
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