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MotoGP ニュース

投稿日: 2020.05.29 10:00
更新日: 2020.10.14 01:17

MotoGP番外編:ヤマハOBキタさんの『知らなくてもいい話』/高速道路の二輪車ふたり乗り解禁(中編)

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MotoGP | MotoGP番外編:ヤマハOBキタさんの『知らなくてもいい話』/高速道路の二輪車ふたり乗り解禁(中編)

 筆者が引き継ぐことになった『操縦安定性分科会』はそれらのなかにあって少し異質な存在であった。その活動は月1回各社委員が集まって内外の操縦安定性に関する文献の調査結果を報告するのを基本としていたが、具体的な成果物としてはいまだ世のなかに存在しない『定常円旋回試験法』と『過渡特性試験法』の作成を目指していた。試験法は実際に安全に実施可能な条件を設定する必要があり、また何を評価項目として測定するのか、測定したデータの処理はどうするかまで定めなくてはならず実証実験が必須であった。

 こういう実験の類は自工会からの委託研究という形で日本自動車研究所(JARI)にお願いするのが通例である。ゆえに自工会は毎年予算を計上し、多額の研究費をJARIに支払っていた。

 操縦安定性分科会もこの実証実験を委託研究テーマとして提出するのだが、どういうワケか毎年却下されていた。当時、技術・安全環境部会の部会長はH社の方が務められていたが、委託研究テーマの主旨説明の場面では我が分科会にのみ当たりがきつく陰湿に絡んでくるのだ。

 ほかの分科会のように法改正や基準調和といった切迫した背景があるワケではないし、技術屋でもない部会長にとっては筆者がいくら(にわか仕込みの)必要性と有用性を説いたところで馬の耳に念仏なのも無理はない。あげく、委託研究どころか分科会の必要性すら疑問視するようなことを言い出したので、「こんな辱めを受ける筋合いはない!」と啖呵切って帰ろうかと思ったが、そんな度胸もなくてワナワナ怒りに震えるばかりだった(笑)。

 そんな憂鬱な状況が一転したのは、『高速道路の二輪車ふたり乗り解禁』を規制緩和の一環として警察庁に陳情することになったときだった。(後編に続く)

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キタさん:北川成人(きたがわしげと)さん 1953年生まれ。1976年にヤマハ発動機に入社すると、その直後から車体設計のエンジニアとしてYZR500/750開発に携わる。以来、ヤマハのレース畑を歩く。途中1999年からは先進安全自動車開発の部門へ異動するも、2003年にはレース部門に復帰。2005年以降はレースを管掌する技術開発部のトップとして、役職定年を迎える2009年までMotoGPの最前線で指揮を執った。


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