話が脇道（とも言えないけど）に逸れてばかりですが、ステランティス各車の実走燃費の傾向に話を戻すと……。これだけの機構を用意したHEVとしては、もう少し伸びてもいいかな…が実感。細かく観察してみたところでは、エンジンの燃料消費が増えるところで、モーターが駆動を引き受け、あるいはアシストする瞬間がまだ控えめ。

　これは搭載している電池容量にもよるのだけれど。でもフォルクスワーゲンやBMWのモーターの使い方を観察すると、エンジンに負荷がかかって燃費がガクッと落ちそうな瞬間に、細かくモーターが『仕事』をしている。この『エンジンの燃費率マップ』とモーターの使いどころの“詰め”が、ステランティス各車はまだ甘い印象（日本各車のHEVも）。

　もう一点、アクセルペダルを戻したり、道路の勾配が平坦からわずかに下りになる、など速度を維持するのに駆動力を抜いても大丈夫、という瞬間、きめ細かくエンジンを止めてしまうか、にもかなり差がある。エンジン始動（モーターで回転させるので燃料消費は最小限）〜駆動合流の瞬間の回転合わせはショックレスにできるので、もっとエンジンを止めてしまっていい。

　こうした、現実のクルマの走り方・走らせ方を踏まえた細かなチューニングをもう一歩進めるだけで、旧来思想にしがみつく今の日本のHEVでは追いつかないような実走燃費を安定して出すパワーパッケージになる。そこにきっと踏み出してくると思う。

●大ストロークでプジョーのしなやかさを実感

　個々のモデルについて軽く触れておくと…。まずプジョー3008。お洒落です。とくにインテリア。私は上下を縮めた六角形のステアリングホイールと、その上から見るメーターは早く“ふつう”にしてほしいけれど、気になるのはそこだけ。住み心地、良好。

　フットワークは、かつて我々が使った表現、『プジョーの猫足』（今でも使う人士はクルマ体感ができない類）は、プジョー内製のダンパー、縮み側オイル流路に球面バルブを4個組み込んだものによるところが大きく、それを止めてからは、普通の締まり感触になってしまっている。

　この3008は車体位置が高く、タイヤサイズも大きめの、いわゆるSUV形態なので、通常の走りの中ではその車体をユラユラ動かさないような仕込みをしてきている。でも峠道などをちょっと速いペースで駆け、旋回内外のサスペンションがそれなりのストロークまで伸縮する状態に持ち込むと、「あ、やっぱりプジョーだ」というしなやかさを体感できました。

●600の秀逸な空間設計。ジュニアは成長過程!?

　次にフィアット600。500と共通の顔つきを与えられているので、キャラクター商品に見えてしまいがち、タイヤ大きめでライトSUV風の装いだが、キャビンに収まってみると『4人の大人が無理なく収まる』コンパクトカーの定石をきちんと押さえた空間設計。四半世紀以上前、それを実現した名品、ウノ（Uno）を思い出しました。走りのリズムも、脚の動き出しが良く、そこでしんなりと押さえが効いて、おっとりとテキパキが両立した、いかにもイタリアの実用車。

　3番目はアルファロメオ・ジュニア。600と基本骨格・機構要素を共有したチビ・アルファ、ですが、今のところフットワークに細かな揺らぎ、路面凹凸を踏んだ瞬間の足元のよれ、パワーパッケージが駆動反力を受けた瞬間の揺動……など、私が知る愛すべき『アルファたち』にはまだ育っていない印象。そうなるとフィアットでも味わったステアリングの電動アシストの仕込みの粗さも、さらにクローズアップされてしまう。個人的にステアリングについては（も）、ちょっとばかりうるさいので（笑）。