2008年:ファイナルラップで決した王座
この年に、ルイス・ハミルトンの劇的な王座決定と並び立つドラマを見ることができただろうか?いや、それはありそうもない。だが、2008年シーズン序盤にBMWザウバーがキラリと光る活躍を見せ、ファンの間ではやや食傷気味だったマクラーレンとフェラーリの一騎打ちに一石を投じた。

実際に、BMWザウバーのロバート・クビサは勇敢な走りでマクラーレンとフェラーリの間に割って入り、カナダでの初優勝のあと、彼はポイントリーダーに踊り出た。もし、BMWザウバーがより多くのリソースを有し、シーズン後半まで競争力のあるマシンを用意できていたら……。F1界につきものの、“たられば”の話は、クビサに聞くべきではないだろう。


クビサ初勝利のカナダGPから2レース後、ハミルトンは雨のシルバーストーンでの素晴らしい勝利により、ランキング4位からトップに浮上した。僅差のチャンピオン争いを、ハミルトン、クビカ、マッサ、そしてライコネンと、4人のドライバーが演じていたのだ。
シーズンも大詰めになってくると、タイトル争いはハミルトンとマッサの2人に絞られた。マッサにとっては最も輝きを放ったシーズンであり、不運に見舞われ、感傷的になるような出来事の多い年でもあった。ハンガリーGPでは、レースをリードしながらもラスト3周でエンジントラブルが発生し、シンガポールGPではピットアウトの際、燃料ホースを引きずってしまう。そして最終戦の母国GPでは、レースに勝利しタイトルを確信した直後、チームから、ハミルトンがタイトルを奪ったとの悲痛な無線を聞くこととなってしまう。



一方のハミルトンも不運に苛まれることがあった。富士スピードウェイで行われた日本GPでマッサと接触し、ライコネンとのバトルが物議を醸したベルギーGPでは、レース後のペナルティによりマッサに勝利を明け渡している。


2008年は5チーム、7名のドライバーが勝利し、14名のドライバーが表彰台を獲得した。そのなかには、当時トロロッソに所属していたセバスチャン・ベッテルがモンツァで達成した素晴らしい初勝利も含まれている。2008年が劇的なシーズンであったことは疑いようもなく、後年まで記憶されるシーズンであった。



