なぜフェラーリは、赤旗中断からの再開後にメルセデスと同じミディアムタイヤではなく、スーパーソフトを選択したのか。開幕戦オーストラリアGP、最大の疑問である。
フェラーリ戦略担当のイニャキ・ルエダは昨年ロータスからフェラーリに移籍してきた、優秀なチーフストラテジストだ。しかしフェラーリのガードは固く、レース後ルエダに話を聞くことはできなかった。
フェラーリで戦略について口にしたのは、セバスチャン・ベッテルとチーム代表のマウリツィオ・アリバベーネ。どちらも「アグレッシブな選択をした」という回答だった。
「赤旗後のタイヤの選択については、あの段階で我々はアグレッシブに行かなければならなかった。うまくいくかもしれないし、ダメかもしれない。セバスチャンも話していたとおりだ。結局、我々は必死にプッシュしたが、3位に終わった。それがレースというものだ」とアリバベーネは語っている。
フェラーリ陣営は残り39周をミディアムで走りきれないと判断したのだろうか。たしかに金曜日はウエットコンディションとなったため、ミディアムタイヤのロングランができずに判断が難しかった可能性はある。またはスーパーソフトで再スタートしたあと、ミディアムのメルセデス勢に対して、ピットストップでロスタイムとなる21秒以上のギャップを築くことができると判断したのかもしれない。
しかし、あるチーム関係者は「金曜日にロングランのデータを得られなかったが、コンパウンドは昨年と同じなので、過去のデータから容易に判断できた」と語っている。それは赤旗後ミディアムを選択して最後まで走りきったのがメルセデスだけでなく、ウイリアムズ、フォース・インディア、ルノー勢とロマン・グロージャン(ハース)、フェリペ・ナッサ(ザウバー)と10台もいたことが証明している。
なぜフェラーリはスーパーソフトを選択したのか。メルセデスのチームマネージャーを務めるロン・メドウは興味深い見解を示した。フェラーリは根本的にミディアムの使用に関して問題を抱えていたというのだ。
「フェラーリはロングランのペースはいいが、初期のウォームアップに常に問題を抱えているチームだ。特に温まりにくいミディアムとハードは顕著だ。だから赤旗後、彼らがスーパーソフトをつけていたのを見たとき、我々は驚かなかった」
それでもメドウは「まさか2台ともスーパーソフトを履いてくるとは思っていなかった」と言う。
「我々が一番恐れていたのは、トップのセバスチャン(ベッテル)をスーパーソフトで逃げさせ、後ろにいるキミ(ライコネン)にミディアムかソフトを履かせて、メルセデスをブロックする作戦を採られることだった。そうなっていたら、ちょっと厄介なことになっていたかもしれない」
果たしてフェラーリは2台ともスーパーソフトを選び、真っ向勝負する道を選んだ。そして再スタート後、ライコネンはトラブルによって戦線離脱してしまい、結果的にはベッテルもメルセデスの一角を崩すことはできなかった。