日本GP鈴鹿のFP1(練習走行1回目)でF1初ドライブを果たしたトロロッソ・ホンダの山本尚貴。1デイ開催となった日曜日には予選ではサインガードに座ってトロロッソのゆくえを見守り、決勝でもチームに帯同した。この週末を振り返り、山本尚貴はF1マシンの運転だけでなく、自身のレーシングドライバー人生において掛け替えのない貴重なものを得ることができたという。
台風の影響で土曜日開催がキャンセルとなった翌日の日曜日、改めてF1初ドライブの感想をメディアに語った山本尚貴。金曜日の走行直後にはうれしさと感謝の気持ちが第一印象だったが、日にちが経つにつれ、レーシングドライバーとしての本能も顔を出してきたという。
「1回乗ったから満足できたかというと、時間が時間が経てば経つほど悔しさが出てきて、もっと乗れば、もっとタイムを上げられるという手応えを感じましたし、やっぱり乗ったら負けたくないですよね」と、レーサーらしいライバル心を話す山本。チームメイトのダニール・クビアトと山本のベストタイムはわずかコンマ1秒差だったが、実は山本のベストタイムはソフトタイヤで記録したものだが、クビアトのタイムはミディアムタイヤでマークしたものだった。
「直接的に比較できるのはチームメイトなので、そのチームメイトはミディアムを履いていた。コンマ1秒しか違わなかったと言われても、彼がソフトタイヤを履いたらもっとタイムが出ていただろうし、やっぱり悔しい。もし次の機会があったら、彼にもっとライバル心を持ってもらえるような走りをしたいなと思います。そのためにも与えられた仕事をしっかりとこなして、チームの信頼を得られてから次のチャンスがあると思うので、そういう意味では今回はいい仕事ができたのかなと思います。当然、また次の機会を頂けるのであれば乗りたいです」と続ける山本。
山本がFP1でベストタイムを記録したのは、セッション終盤にミディアムタイヤからソフトタイヤにチェンジした直後。タラレバで、セッションの最後、路面にラバーが乗った時にソフトタイヤでもう一度アタックしていたら、どの程度のタイムアップができたのか。
「今回、走って改めて分かったのが、日本のレース以上にピレリタイヤの特性だと思うんですけど、サーキットのコンディションが改善していくと、それがラップタイムにかなり関与してくることがわかりました。ですので、最初に履いたミディアムと2セット目に履いたソフトタイヤで、コンパウンドの違いは当然あるんですけど、それ以上に路面コンディションの変化がすごく大きく感じました」
「当然、2回目にソフトタイヤで出て行った時よりも一番最後にユーズドで走った3ラン目の方が路面コンディションがかなり良くなったように感じたので、もしそこでソフトタイヤの新品を入れることができたら、かなりタイムは上げられたと思うんですけど、それは僕だけではなくて他の選手も新品のタイヤを入れたら上がるわけですけど、そうなった時に自分のタイムがどの位置にいるのかというのは、見てみたかったなとは思います」と山本。
鈴鹿マイスターとして走り慣れた山本でも、F1のピレリタイヤによる路面の変化は予想以上だったようだ。その山本がFP1で乗ったマシンは、そのままFP2ではピエール・ガスリーがドライブし、予選では見事Q3まで進出して9番手を獲得した。
「僕が乗って感じていたこととピエールがFP2で感じたことが一緒で、改善しなければいけない点は明確に分かった。それをアジャストしたセットアップでQFに臨んだというのが分かったので、それがどこまで通用するのかなと思って見ていました」
「終わって見ればQ3にしっかり進んで、当然、ピエールの力はあったんですけど、クルマがだいぶ改善されたようなコメントをしていたので、ピエールの努力と担当エンジニアの努力、もちろん、そこにはチーム全体でクルマをよくしていこうというスタッフがいるので、Q3に進むことができたというのは大きかったと思います」
レース後、山本に練習走行から、予選、決勝の週末を通じて鈴鹿で印象に残ったドライバーは誰かと聞くと、答えはそのガスリーだった。
「トロロッソに加入してトロロッソのことしか見えない部分もあるんですけど、やはりFP2からしか乗れなかったピエールが予選で最後のQ3まできちんと進んだのを見ると、改めて彼はすごいなと思いました」
「ちょうど彼を見ていて記憶が甦ってきたんですけど、2017年のスーパーフォーミュラのシーズン、彼とチームメイトになって、まず衝撃的だったのが彼の努力する姿でした。当然、僕も努力して頑張っていたと思っていたけれど、彼の姿を見たら、やっぱり彼より努力しないわけにはいかないと思ったし、彼に勝つためには彼を上回る努力をしないといけないと思わされた。そのシーズンも僕は努力はしたんですけど、結果的には形にすることができなかったので、すごく苦しかった1年でした」