Q:レッドブルは開幕前に「5勝する」と宣言するも、最終的には3勝にとどまりました。5勝できなかった原因と課題について個人的な見解を教えてください。
柴田:『5勝はできなかったけど、3勝もできた』と捉えています。フェルスタッペンひとりで3勝ですが、もしチームメイトにダニエル・リカルド(ルノー)がいたら、6勝は挙げていたと思います。同士討ちをしていた可能性もありますが、それがなければメキシコやモナコなどでも優勝し、少なくともふたりで5勝していたのではないでしょうか。
たとえリカルドでなくても、もしカルロス・サインツJr.(マクラーレン)がレッドブル・ホンダにいたら、もう少し結果を出せていたかもしれない。そうじゃなくても、サインツJr.が果たしてフェルスタッペンに対してどれくらい力を発揮できたかというのは、見てみたかったですね。
言い換えれば、2019年のレッドブル・ホンダの一番の弱点は、ふたり目の勝てるドライバーが不在だったことですね。途中から加入したアレクサンダー・アルボンももちろん頑張りましたし、良いドライバーだと思います。結果的には1回も表彰台に乗れませんでしたが、途中からトップチームに加わったのだから、あれだけやれば十分というべきでしょう。
2020年はレギュレーションが大きく変わらないので、2019年のように最初から3位が精一杯ということはないと思います。あとは、アルボンがどれくらい成長しているか。私はあまり心配していませんし、少なくとも予選ではフェルスタッペンと競る速さを見せるのではないでしょうか
Q:2019年はレッドブルとトロロッソの間でドライバー交代があり、ガスリーが古巣トロロッソへ戻り、ルーキーのアレクサンダー・アルボンがレッドブルへ昇格しました。彼らの2019年の評価と2020年の課題を教えてください。
柴田:結果的に、交代は正解だったと思います。もしあのままガスリーを起用していたら、ボロボロになっていたはず。ガスリーに関しては、2019年はメンタル的にあれだけ厳しい1年過ごしたことで、それが2020年に活きると思うんです。だから2020年に関してはあまり心配していません。
アルボンもしかりで、2019年を学習の年と捉えれば、2020年はきちんと結果を出してくれると思います。2019年に関しては十分に合格点だと思いますが、少しナンバー2ドライバー感が漂っていますね……(苦笑)。もう一段階“脱皮”できるかどうかが課題ではないでしょうか。
シーズン中にトップチームがドライバーを変えるというのはものすごく大変なことですし、アルボン自身も『このままだと潰されてしまう』という気持ちもあったようです。よく生き残ったなと思います。ラインアップ継続は妥当な判断でしょう。。
(2)に続く
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柴田久仁夫
静岡県出身。TVディレクターとして数々のテレビ番組を手がけた後、1987年よりF1ライターに転身。現在も各国のグランプリを飛びまわり、『autosport』をはじめ様々な媒体に寄稿している。趣味はトレイルランニングとワイン。