2020年シーズンで5年目を迎えたハースF1チームと小松礼雄エンジニリングディレクター。イギリスに戻った後は早々にファクトリーのシャットダウンが決定したが、ハースにとってシャットダウンすべき時期というのはひとつの大きな問題でもある。自己隔離中の小松エンジニアが、イギリスやチームの事情をお届けします。
──────────
前編ではオーストラリアでの状況を振り返りましたが、今回は僕やチームの現状をお伝えしようと思います。
オーストラリアGPが中止になったあと、特にチーム内の混乱というものはありませんでした。ただ新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐためにどんどん国境も封鎖され始め、飛行機の便にも影響が出ていて、いろいろな国で出入国制限がされていたので、とにかく早い段階でイギリスに戻れるように手配してもらいました。
僕はエンジニアリンググループのみんなと日曜日の朝6時の飛行機に乗って、その日の夜にイギリスに戻りました。帰国後、移動していたメンバーは自己隔離をしなければならないので、14日間は在宅勤務です。メカニックは基本的に家で仕事をすることがないのでオフですが、僕やエンジニアリングのスタッフは家で仕事をしています。
今のところ僕には何の症状もありませんが、自己隔離ということで、家にいても子供の学校の送り迎えもできないし、手も繋げません。家の中でも2mの距離を保つようにというガイドラインがあるので、食卓でもひとり離れたところで食べたりしていました。
そして、3月19日からはファクトリーがシャットダウンとなりました。これも当初の予定から日程が変わっているのですが、前倒しになると初めて聞いたのが、オーストラリアからの帰りにドバイで飛行機を乗り換える時でした。ギュンター(シュタイナー/チーム代表)から「3月16日からシャットダウンになるかもしれない」と聞いたのですが、3月15日の日曜日に移動しているのにそれはないでしょう、と思って驚きました。
シャットダウンの期間や時期は規則で決まっているのですが、これを書き変えないといけないので投票を行わなければならず、結局ウチは19日から3週間シャットダウンをすることになりました。このシャットダウンは4月8日までの予定で、もし状況が良くなって働ける状況になれば4月9日から全員会社に戻って働く予定です。でも今の状況が続くと考えられるので、在宅勤務か、最悪の場合はシャットダウンが延長されることもありえます。
そもそもウチはフェラーリと一部施設を共有しているので、シャットダウンの時期をフェラーリと同じにしないと仕事にならないんです。でも今のイタリアは、ウイルス感染の面ではイギリスよりも2週間くらい先を行っているような状況です。イタリアではファクトリーを閉鎖せざるを得ないのですが、イギリスはこの時点(3月18日)でイタリアほど深刻な状況ではありません。
新型コロナウイルスのことだけを考えると、僕らが本当にシャットダウンすべき時というのはあと1週間先(25日辺り)かと思いましたが、イタリアに合わせなければならないのでどうしようもありません。
本当にシャットダウンが4月8日で終わるとも思えないのですが、仮に4月8日にシャットダウンが終わると考えて、次のレースがカナダGPだとすると、8週間の時間があります。これだけの時間があるというのは、実はハースにとって良い面もあります(もちろん興行的にはよくないのですが)。