2021年F1にデビューするミック・シューマッハーとニキータ・マゼピンは、ともにハースF1チームで初めてのシーズンを送る。ふたりはどのように学び、つまずき、成長していくのか。キャラクターの異なるふたりのルーキーのデビューシーズンを、英国人ジャーナリスト、クリス・メッドランド氏が観察していく。
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2021年F1の準備を進めるにあたり、チームの本音としては、経験あるドライバーが少なくともひとりは欲しいと思っていたことだろう。わずか3日間のテストのなかでは、ドライバーの優れたフィードバックが非常に重要だったからだ。
ベテランのセバスチャン・ベッテルは、トラブルで走行時間を失ったことについて「10年前だったら僕も少しパニックになっていたかもしれない。でも今パニックになっても何もいいことはないよね」と語っている。アストンマーティンに移籍して初めてのテストで厳しい状況に直面しても冷静でいられるのは、年齢と経験のおかげであるというわけだ。
今年、3人いるF1ルーキーのうちふたりを抱えるハースは、3日間しかないテストで大きな課題に立ち向かうことになると予測されていた。
マシン自体は昨年型とほとんど変わっておらず、一番大きな違いはフェラーリのパワーユニットだが、これを異なるモードで走らせる必要があった。そのための作業を除けば、ドライバーたちを新しい環境に慣れさせることが、チームにとって焦点を当てるべき重要なテーマだった。
ハースは3日間にわたり、ニキータ・マゼピンとミック・シューマッハーを半日ずつ走らせた。何か大きな問題が起きたとしても、どちらかのドライバーだけが走行時間を大幅に失うことを避けるためだ。
マゼピンが事前シェイクダウンを担当し、テスト初日の午前中にシューマッハーがニューマシンに乗ったところ、トラブルが発生。シューマッハーはこの日、15周しか走行できなかった。午後にステアリングを握ったマゼピンも、砂嵐のために走るのが困難なコンディションで、結局どちらのドライバーにとっても完璧なテスト初日にはならなかった。
2日目にシューマッハーは88周を走行。初日に比べると状況がよくなったとはいえ、この時点でまだ103周しか走れていないわけで、ルーキーとしては、走行不足に悩んだり、心配したりしてもおかしくない。だがシューマッハーは非常にポジティブで、笑顔を見せていた。
「実際に走ってみたところ、予想していたよりもマシンの感触がいい」とシューマッハーは2日目の土曜夜、興奮した面持ちで語った。
「走っていて本当に楽しい。いくら走っても飽きる気がしない。レースが待ち遠しいよ」
「シーズンが始まるのが本当に楽しみだ。毎日走れればいいのに。あと8日走って、そのままレースウイークエンドに入れればいいのにね」
シューマッハーは、F1のタイミングモニターで使用される表記に『MSC』を選んだ。父ミハエルがキャリア後半に使用していたこの略称を使用したいと、ミック自身が希望したのだ。彼にとって「感情的な結びつきのある表記」であり、『MSC』を見たらファンは喜ぶだろうから、というのがその理由だった。