2021年F1第18戦メキシコGP、第19戦ブラジルGP、第20戦カタールGPで各チームが走らせたマシンを、F1i.comの技術分野を担当するニコラス・カルペンティエルが観察、印象に残った点などについて解説する。今回は、この数戦、レッドブルが抱えていたリヤウイングのトラブルについて考察する。
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カタールGPでのリヤウイングトラブルは、レッドブルにとっては実に4戦連続のものだった。アメリカとメキシコではフラップに細かいクラック(ひび)が入り、ブラジルではDRS作動時にフラップが激しく振動した。そしてカタールGPで起きた不具合も、ブラジルとほぼ同じものだった。
なぜ繰り返し同じトラブルに見舞われているのか。この原稿を書いている時点では原因不明だが、いくつかの仮説が考えられる。ひとつはパーツの寿命である。今季は全22戦とレース数が多い上に、3連戦もあり、スケジュールがかなり立て込んでいる。さらに今季からバジェットキャップ(年間予算制限)が導入されたことで、ひとつのパーツを今までより長く使うようになった。その弊害が、シーズン終盤になって出てきたのではないか。
二つ目の仮説は、レッドブル製DRSのコンセプトに根本的な問題があったのではないかというものだ。
レッドブルのDRSは2020年の9月30日にホモロゲを受けている。それ以降の設計変更は決められた数のトークンを使えば可能だが、レッドブルはギヤボックスの改良にトークンを使ってしまった。なのでこのDRSはこのまま、今シーズンいっぱい使い続けなければならない。
カタールの週末、リヤウイングの不具合は2台に発生し、いずれも予選までに修理できなかった。そのためチームは、このコースに最も合っていたはずのミドルダウンフォースのリヤウイングをあきらめ、ハイダウンフォースかつ頑丈な(したがって重量も重い)仕様に交換せざるをえなかった。マックス・フェルスタッペンが予選でルイス・ハミルトンにあれだけの差をつけられた大きな原因の一つは、まさにそれだった。