更新日: 2018.09.03 15:12
インディ3勝目は琢磨とチームの作戦勝ち「抑えるところを抑えれば、イケると思った」
しかし、5番手という予選奇数番手組のグループ2になってしまったことが、ツイていなかった。奇数番手組には速いドライバーが集まってしまい、Q1突破のハードルを上げた。それを裏付けるように、Q1で57秒7349をマークしたチームメイトのグラハム・レイホールは5番手で突破したのに、琢磨は57秒7848で10番手。Q1突破どころか予選グリッド20番手という後方に沈んでしまう。
1周57秒あまりでラップするインディカーの予選がいかにコンペティティブか、わかるだろう。
■2ストップ作戦で勝機を見出す
20番手から如何にして順位を上げるか? 抜きどころの少ないポートランドである。琢磨とレイホールのエンジニアのたちは、レース前に入念にミーティングを重ねた。
「ミーティングで今日は2ストップ(定石通りなら3ストップ)で行くと決めました。20番手からは上がるにはそれしかない。イエローが出れば、計算上大丈夫だったので……」と琢磨は後に明かしてくれた。
レースは琢磨が期待していた通り、スタート直後のターン3の出口で多重クラッシュが起き、すぐさまイエローコーションになった。その時点で15番手だったが、ピットがオープンになるとすぐさまピットに入り、燃料を満たしてコースに戻る。
7周目にレースが再開すると琢磨は16番手からのレースになった。燃料をセーブしつつ、後続との距離を保つベテランらしい走りだ。しかし、攻めるところでは攻め、ヘアピンの進入で前のマシンをパスするなど、琢磨らしいアグレッシブさも失ってはいなかった。
他のマシンが1回目、2回目とピットインしていくと琢磨は次第に順位を上げる。
コースアウトするマシンが増える中で、琢磨のポジションは上がり続け、レースの半分をすぎた頃に3度目のコーションが出た時には琢磨は2番手まで浮上していた。
71周目にはトップに立った琢磨。最後のピットインを75周目に終えると2番手で復帰し、前にいるのはマックス・チルトンのみとなる。しかもチルトンは、タイヤ交換を終えておらず、早かれピットに入るのはわかっていた。
勝負は後ろのライアン・ハンター-レイ、そしてセバスチャン・ブルデー。その2台に集中すれば良かった。
85周目にチルトンがピットに入り、自動的に琢磨はトップに浮上。残り20周の勝負だった。プッシュ・トゥ・パスを使いハンター-レイも勝負を仕掛けてきたが、琢磨もターンインの要所をしっかり抑えて、これを封じ込めた。
「チルトンを無理に追う必要はなかったし、ライアンに1秒のマージンだけは築いておく。最後にライアンが来るのはわかってました。プレッシャー? もう長いことレースやってますからね(笑)。抑えるところを抑えれば、イケると思ってましたよ。後はミスしないようにと思ってました」と琢磨。
■ベテランらしくレースをコントロールした琢磨
今回は2013年のロングビーチ、昨年のインディ500の勝利とは違い、予選後方からの追い上げての勝利で、明らかに琢磨とチームの作戦勝ちだった。
「151戦目ですか?(笑)。今シーズン苦しんでなかなか結果が出せなくて、不運なこともあったりしましたけど、終盤になって優勝できたのは本当にうれしいですね。チームもここまで本当に頑張ってくれたし、今日はクルマも速かった」
「完璧な仕事をしてくれたクルー、いいクルマを作ってくれたエディ(ジョーンズ)を始めエンジニアのみんなにも感謝したいですね。それからいつも応援してくれる日本のファンとスポンサーの皆さんにもありがとうと言いたいですね。今年は残り1戦になりましたけど、最後のソノマでもいいレースをしたいと思います」と3勝目の喜びを語った。