第9戦までで206ポイントを稼いだ琢磨は、ランキング10番手につけている。トップのパロウとは143ポイント差だ。ベストリザルトはデトロイト/レース1での4位と、今季はまだ表彰台がなく、トップ5入りもこの1回だけ。

 トップ10フィニッシュは第2戦セントピーターズバーグ(6位)テキサス/レース1(9位)、ロードアメリカ(8位)と、デトロイトを含めて4回記録して来ているが、はっきり言って苦戦が続いている。

 今年の琢磨は予選で思うようにパフォーマンスを発揮できていない。開幕からの9戦でロードコース、ストリートコースともに3戦が行われたが、琢磨はまだ予選でセグメント1を一度もクリアできていないのだ。

 ストリート&ロードでの予選平均順位は17.7位。ここまで厳しい結果になっているのは、RLLのエンジニアリング・グループが戦闘力の高いマシンを用意できていないためと言わざるを得ない。

 レースウイークエンドの走行時間はどんどん短縮される傾向にあるため、各サーキットへと運び込むマシンに施された“イニシャルセッティング”の重要性が今は非常に高い。

 走り出しのスピードが不足している場合、その週末にマシンを優勝争いのレベルまで向上させるチャンスは少ないだろう。予選はプラクティス終了後に大きなインターバルを開けずに行われるケースが多いため、セッティングをじっくりと検討し直す時間的余裕はない。

 プラクティス、予選と厳しい状況が続けば、レースに向けてはウォームアップでまた新たなトライを行うことになるが、毎セッション異なるセッティングを試している状況では、走り出しから良いマシンにファインチューニングを重ねたライバルたちとの優勝争いには絡んではいきにくいのだ。

開幕戦となったバーバー・モータースポーツパークを走行する佐藤琢磨
開幕戦となったバーバー・モータースポーツパークを走行する佐藤琢磨

 琢磨のチームメイトのグラハム・レイホールは、最上位がテキサス・レース2での3位で、それ以外にも5位フィニッシュが4回、トップ10入りはトータル6回ある。いずれも琢磨より少しずつ良く、ポイントスタンディングでは琢磨のすぐ上の9番手に、22ポイント差でつけている。

 ロード/ストリートの予選でグラハムはセグメント1通過を3回果たしているが、それはグループ分けで琢磨より幸運に恵まれたことにも助けられてのもの。セグメント2を戦っての予選ベストリザルトは9位(3回)。トップレベルのスピードが確保されているとは言い難い。

 RLLというチーム全体のパフォーマンスが不足している。琢磨とグラハムではマシンの好みが異なり、セッティングの二極化が進んでもいるようだ。そして、今シーズンはこれでのところ、グラハムのセッティングの方が僅かに良いものになっているとも見えている。

 琢磨がセッティング向上に手間取っているのは、今年から彼がマット・グリースリーというエンジニアとのコンビで戦っていることも影響している。

 琢磨がRLLに復帰してから昨年までの3シーズンを一緒に戦い、昨年のインディ500を含む4勝を挙げたエディ・ジョーンズは引退。今年の琢磨はRLLに新規加入して来たエンジニアとのコミュニケーションを深めるところからスタートしている。

 しかも、そのグリースリーがテキサスのレース後に母国イギリスに一時帰国すると、パンデミックの影響もあってアメリカに戻れなくなってしまった。

 不幸中の幸いは、インディ500ではチーム全体のサポートをする予定になってたジョーンズがインディアナポリスのロードレースから琢磨担当についたことだった。

レース後にエンジニアのエディ・ジョーンズとレースを振り返る佐藤琢磨
レース後にエンジニアのエディ・ジョーンズとレースを振り返る佐藤琢磨

 グリースリー復帰までジョーンズが代役を務める体制が整えられ、ダメージは最小限に抑えられている。現場を半年離れていたジョーンズを、大西洋の反対側にとどまっているグリースリーがアシストしながら……という戦いがロードアメリカでも続いていた。

 ミド・オハイオの後には1カ月以上のインターバルがあるので、第11戦ナッシュビルからグリースリーは復帰することとなるかもしれない。

■ロードアメリカで掴んだセッティングの手応え

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